未来を照らす(47)俳優 中島 歩さん

存在感のある俳優として、注目を集める中島 歩さん。
1月から放映中のドラマ『俺たちバッドバーバーズ』『豊臣兄弟!』にも出演しています。
日々の「瞑想」を通して素直になり、生きやすくなったと語ります。
なかじま・あゆむ1988年、宮城県出身。日本大学藝術学部卒業。2013年『黒蜥蜴』の舞台で俳優としてデビュー。第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞『偶然と想像』、ドラマ『不適切にもほどがある!』をはじめ、数多くの映画、舞台、ドラマに出演。趣味は音楽・映画鑑賞、落語、釣り、写真、ギター。空手初段、中高の国語科の教員免許をもつ。
観てくださる方の気持ちをできるだけ深く救いたい
モデルからのスタートですが、俳優になりたいと思ったのはいつですか。
大学生のときです。国語の教師になるつもりで日本大学藝術学部の文芸学科に入学しました。文章を書く授業もありましたが、明らかに僕には合わなかったし、新しい物語を創作したいとも思いませんでした。
学校にはミュージシャンになりたい人など、いろいろな分野を目指している人がいて、「自分も自由にやっていいんだ」と初めて思い、落語研究会に入りました。
落語はすでにできている話を、自分なりにやるので性に合っていました。そのとき、人前に出て何かしたいと思ったのです。でも落語では人に勝てそうにない。弟子の期間も長い。一人でやらなきゃいけない。僕は一人だとサボっちゃう(笑)。俳優は若くても売れている人がいるから、いい思いができるかもしれないなと思いました。
俳優になろうと思って、なれるのですから…。
すごいですよね(笑)。今まで続けられているし、仕事をいろいろといただいて、信じられません!テレビはすごい人しか出ないものだと思っていた子どもの頃のことを思い出し、「テレビだぜ、マジかー。すごすぎる!」って、自分で言うのもなんですが、びっくりしています(笑)。
去年は『あんぱん』『愛の、がっこう。』などいくつもテレビドラマに出演したので、インタビューが多くて、「取材されてるぞ、僕」って思っていました(笑)。
大事にしているスタンスは何ですか。
人と同じでも違っても、自分の心に響いたものに素直でいようということ。この瞬間を味わおう、今の状況を楽しもう、感じようと意識しています。
俳優は演じるときに「そこにいる」ことが求められます。セットが組まれて作り込まれた中で、衣装を着て、その役の人がそこに座っている、立っている、しゃべっている。演劇は「今を生きる」ことにとても重点を置いていると思います。とくに舞台はライブですから、その瞬間を熱くしていかないと、お客さんが離れていくのではないかと。「Moment to Moment」(その瞬間、その瞬間で)という言葉がありますが、まさにそういう感じです。
音楽のライブも同じです。高校生のとき、ライブに行って、曲が始まった瞬間にあれほど感動したのに、後で詳細はほとんど思い出せなかった。それがとても寂しくて。でも、そのときに最高だったからいいじゃないかと後で思ったのです。
それが演技にも影響していますか。
撮影の現場は、その日の天気やその場所の雰囲気、美術の感じ、相手役の芝居、演出家の意図など、いろいろな立場の人の思いで作られています。その場での思いつきが作品を豊かにするのだと思うので、自分を解放して、その場の感覚や思いつきを逃さないように心がけています。
デイヴィッド・リンチは瞑想を大事にしていました。僕は、彼も彼の作品もすごく好きで。彼が瞑想をするようになって、ずっとイライラしていたのに怒らなくなって、アイデアも豊富になったとYouTubeで話していました。よくわかるなと思いましたが、僕はイライラするし、怒る(笑)。
理容室を舞台に繰り広げられるアクションコメディ、ドラマ25『俺たちバッドバーバーズ』が好評です。どのような作品ですか。
“深夜の、油っこいラーメン”みたいなドラマです(笑)。ぜひ爆音で観てほしい。
立川談志さんが「落語は人間の業の肯定だ」と言っています。僕はこの言葉に救れて、「こんなにダメな自分でもいいんだ」と肯定できたので、芝居をするときはいつも、観てくださる方の気持ちをできるだけ深く救いたいと思っています。
『俺たちバッドバーバーズ』は深夜放送ですから、その日のストレスを解放できると思います。多様性の時代に、わかりやすい悪者が出てきて、わかりやすい言葉で怒鳴りつけたりする勧善懲悪もの。フィクションゆえの気持ちよさを味わっていただけるのではないかと。笑って、爽快になってもらえたらうれしいし、観てくださる人の気持ちを少し救えるかなと思っています。
NHKの大河ドラマ『豊臣兄弟!』では、浅井長政役です。『俺たちバッドバーバーズ』とは対照的です。
全然違います。『俺たちバッドバーバーズ』は台本に書いてないこともバンバン言って、動き回って自由に演技させてもらっています。
『豊臣兄弟!』はしっかり芝居する面白さがあります。難しいですが、きちんと作り込む面白さも知っているから、できるようになりたいと思って撮影に取り組んでいます。
瞑想するようになって生きやすくなりました
作品によって中島さんの印象が違いますが、どの役にも中島さんご自身がいると感じます。
それはうれしいです。僕はそういう俳優が好きだし、そうあるべきだと思っています。自分とまったく別の誰かを演じるのではなくて。リアルな芝居の正体は、「そこにいる」ことだと思っていますので。たとえば自分とは別の“たかし”を演じる芝居は、その役をやろうとして頑張って、“たかし”を説明している人間が映るだけです。そういう芝居は面白くありません。役の台詞なのに自分がそこにいて、相手役としゃべっている芝居をしたいと思っています。
岐路となった作品について教えてください。
濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』は、人とコミュニケーションするとはどういうことかがテーマです。それが観客にも伝わっていると実感できました。俳優にはそれぞれ、それまでの人生がありますから、しっかりしゃべっていれば、その役柄は誰とも違う一人の人間になってくる。だから、なるべく役を通して自分を表現したい。濱口監督のベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した映画『偶然と想像』に出演して、それを体感することができました。
また、深夜ドラマ『ひとりキャンプで食って寝る』に一話だけゲスト出演しました。そこで自分の表現をしていいと思えました。この2つの作品は自分にとって大きかったです。
俳優として、目指しているところはありますか。
2025年はたくさんテレビに出て、自分を知ってもらえるようになり、映画館や舞台を観に劇場に足を運んでいただきました。だから今は僕を知ってもらうことを意識しています。
芸はまだやることがたくさんあります。時代劇の所作や刀の立ち回りなどの訓練もしたい。海外の作品もやりたいから語学もやらなければいけません。いろいろとインプットしたいと思っています。
何をしているときが楽しいですか。また落ち着くのはどんなときですか。
車の運転が好きで、地方ロケには自分で運転していくことが多いです。運転に集中するのは瞑想にも近い感覚でリラックスできますし、その土地の風景に身を置いたり、商店街の人としゃべったりして、そのまちの人々の暮らしを知るのも面白いですね。
5年ほど前から取り組んでいるのは瞑想です。毎日、お風呂上がりに10分ぐらい行います。何かを想像するのではなく、何も考えないようにする。呼吸を通して「今ここにいる」ことに意識を向けます。ニュートラルになる感じがとても気持ちいい。仕事や家事など、やらなければいけないことが多いから、瞑想はそれらから離れられます。「今を生きよう」と思ったのは、瞑想の影響が大きいです。何が不安かを理解するのも瞑想ですから、落ち込まなくなりました。俯瞰できて、生きやすくなったと思います。
撮影のとき、周りがピタッと止まって静かになって、カメラが向いていて、「この手、ダサいかも?」とか自意識過剰になってくるのですが、瞑想のおかげでリラックスできて、身体も自由に使えるようになってきたし、周りも見えるようになりました。相手の芝居を受けられるようになったと思います。
また自分が何をしたいか、何が嫌なのか、何を感じているのか、何を考えているのかを理解できるようになりました。そうしたら力を抜くことが、それまでとは全然違う次元でできるようになったのです。どんどん素直になっていく感じがして、心の声を聞けるようになりました。これは気持ちよく生きていく上では、すごく大事なことだと思っています。僕、今日はめっちゃ素直にしゃべりました(笑)。
「俺たちバッドバーバーズ」
1月からテレ東系で放映中(毎週金曜深夜24時42分〜25時13分)のドラマ25「俺たちバッドバーバーズ」は、理容室を舞台に繰り広げられる新感覚アクションコメディ。中島 歩&草川拓弥がダブル主演。
(C)「俺たちバッドバーバーズ」製作委員会

【小西恵美子=文、菅野健児=撮影】
【メイク=AMANO、スタイリスト=山口香穂】
シューズ/パラブーツ(パラブーツ青山店 TEL:03-5766-6688)
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