街に、ルネッサンス UR都市機構

未来を照らす(7)俳優 鈴木亮平さん

URPRESS 2014 vol.44 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]


未来を照らす(7)「世界を知ることで自分を知り夢は大きく広がっていく」

映画やドラマ、舞台で活躍中の俳優・鈴木亮平さん。
子どものころのアメリカ旅行が、世界に目を向けるきっかけになったと語ります。
俳優として大きく羽ばたく鈴木さんに、子ども時代のことから大好きな世界遺産、そしてこれからの夢を伺いました。

俳優 鈴木亮平さん

すずき・りょうへい
1983年、兵庫県出身。
モデルを経て、2006年に俳優としてデビューし、14年NHK連続テレビ小説『花子とアン』で大ブレイク。
特技は英会話(英検1級取得)、テーブルマジック。世界遺産検定1級も取得。
2016年公開の出演映画に『の・ようなもの のようなもの』『海賊とよばれた男』などがある。

小学生時代のアメリカ旅行が世界に目を向けるきっかけ

生まれ育ったのは、兵庫県です。兄と妹がいる3人兄弟ですが、父親は当時としては珍しく男女平等の考えを持った人でした。両親が共働きだったこともあり、食事の支度から掃除、風呂の世話まで、家事もきっちり半分こなしていました。

覚えているのは、よくプリンを作ってくれたこと。鬆(す)が入ったりしないようにこだわって、おいしかったですよ。いまでもカスタード系のお菓子が好きなのは、父のプリンの影響があるかもしれません。

家族のルールもきちんとしていて、晩ごはんは家族そろって家で食べる、というのが決まりでした。でも、当時は家族がそろうありがたみがわからないから、思春期にはちょっと窮屈に感じたこともありましたね。食事のときは家族でコミュニケーションをとるというより、親父が怖くて(笑)。子煩悩なんですけど、厳しかったですね。もちろんいま考えれば、仕事をしながら3人の子どもの世話までするのは、本当に大変だったと思います。いまはその苦労がわかり、とても感謝しています。

親父は、スポーツにせよ勉強にせよ、好きなことを自分の責任でやれ、という自由主義。「勉強しろ」とは、ひとことも言われたことはありません。一番感謝しているのは、海外に目を向けさせてくれたことです。初めて海外に行ったのは、小学校2年生のとき。家族全員で、アメリカのロサンゼルスに旅行しました。ふだんは堅実な家庭でしたが、そういうところにはお金を惜しまなかったですね。

高校時代の留学で日本人であることを意識

「留学したい」と言ったときも、「お金はなんとしても出してやる」と言って、高校1年のときに交換留学でアメリカのオクラホマ州に1年間行かせてくれました。

ホームステイしたのは、牛を60頭も飼っている牧場で、家から道路に出るまで歩いて10分、一番近いガソリンスタンド兼コンビニまで車を飛ばして20分という田舎町。車がないと隣の家にも行けないので、放課後は部活をやって、友達に車で送り迎えしてもらう毎日。日曜日は教会に行っていろんな人たちと話したり、想像していたアメリカの高校生活と違って、すごく地味な暮らしでした(笑)。

自然が好きになったのも、ここでの体験が出発点かもしれません。なにしろ周りは野生動物がいっぱいいる“野生の王国”みたいな場所。川にはビーバーがいるし、コヨーテやアルマジロ、フクロウにタランチュラにスカンクまで(笑)。

留学してあまりにも自分と違う価値観に触れて、視野がすごく広がりました。痛切に感じたのは、自分が知っている世界なんてすごくちっぽけで、世界は広いんだっていうこと。クラスメートは日本がどこにあるかも知らないし、知っている日本人はジャッキー・チェンって言うくらいですからね(笑)。将来、日本人の存在感を高めていくことができたらいいな、と漠然と思い始めたのも、そのころです。

人類の偉大さを物語る世界遺産が大好き

世界に目を向けるという意味では、世界遺産が大好きです。世界遺産の一番の魅力は、やっぱり自分の小ささを知ることができるということ。世界にはこんなにすごい所があって、こんなにすごい建物がある。人類ってすごい、歴史ってすごいなと純粋に感動し、謙虚な気持ちになれるんです。世界遺産を前にすると、自分の悩みなんかちっぽけだと思えるようになる。想像力が無限に広がるところにも惹かれます。

よく、どの世界遺産が一番好きですかと聞かれるのですが、「一番」は決められないです。というのも、どの世界遺産も平等に愛したいから(笑)。ただ、どこがいいか、おすすめはできますよ。

例えば高齢の方なら、遠くに行くのは難しいでしょうから、やっぱり京都かな。かつては日本の都であり、昔から変わらない観光地なので、観光地としてのクオリティーや受け入れ態勢が素晴らしいです。観光客が多くて活気づいているし、古いものを大切にしながら、古い建物をバーやレストランにリノベーションもしている。世界的に見ても素晴らしい観光地だと思います。

小さなお子さんがいらっしゃるご家族なら、ハワイでしょうか。海はあるし、買い物もできるという観光地としての良さを楽しめるだけでなく、ハワイ島には世界遺産のハワイ火山国立公園があります。ここにはマグマが海に直接流れ込んでいる場所があり、ジュワーッと水蒸気が立ち昇っているんです。地球の内側にあるマグマが外に流れ出てきたのを間近に見れば、地球全体に思いを馳せることができるし、子どもを連れていったら、一生忘れられない体験になると思います。

日本の団地が世界遺産になる日が来る?

ヨーロッパには20世紀に建てられた集合住宅が世界遺産になっている例もあります。UR都市機構の団地は昨年、誕生から60年を迎えたそうですが、もしも保存状態が良好なかたちで残っていたら、世界遺産になった可能性もなきにしもあらずだと思います。

世界遺産になるためには、時代背景や独自性、保存状態などいろいろな条件があります。UR都市機構の団地は、日本の戦後復興のなかで住宅不足の解消を目的に建てられ、ダイニングキッチンのような西洋的なライフスタイルを初めて取り入れたり、そこから建築の流れが変わるような革新的なものが織り込まれているので、その意義はとても大きいと思います。団地だけでなく、居住者の方が働いていた工場や子どもが通っていた学校、医療施設などもそろっていると、産業遺産として認められる可能性があったかもしれません。

団地には独特の生活感がありますね。映像に団地のシーンが出てきただけで、自分のまちのような親近感が生まれます。最近は大学とコラボしたリノベーション住戸などもあるんですか? 父が建築士だったせいか、建築にはすごく興味があるんですが、もし自分が団地のリノベーションをするなら、防音をきちんとして、ホームシアターを作りたいですね。映画を観るのは一番のリフレッシュ法なのですが、自宅で映画に浸れたら、一歩も家から出ないかもしれないな(笑)。

自分を通して日本を語れる役者になるのが目標

大学時代に初めて舞台に立ったとき、あまりの難しさに「これを一生の仕事にしたい」と思ったんです。難しいからこそ飽きないし、悔しいから続けられる。いまだに「俺、うまいな」と思ったことは一度もありませんし、毎回へこみます。

俳優は本番にできることは限られているし、僕はそこで爆発的に何かを出せる天才タイプではないと思っています。だからこそ、本番で結果を残そうとか、信頼を得ようと思ったら、できる限りの準備をして臨むようにしています。

ドラマ『天皇の料理番』や映画『俺物語!!』で体重を増減させる役作りをしたことも決して特殊なことではなく、僕にとっては当然なこと。世界では役に合わせて肉体改造をするのはすでに普通のことですし、世界で勝負していくためには、彼ら以上の努力をしないと勝負できないと思っています。

これからの目標は、まずいろいろなものを「背負える」俳優になりたいと思っています。主演をするなら、役を演じるだけでなく、その背景や、作家が作品に込めた思いまでをきちんと背負い、かつヒットさせるという興行面まで責任を持って背負える俳優になりたいです。

そして将来的には、日本をベースとしながら海外の作品にも関わり、ひいては僕という俳優を通して、日本という国を知ってもらいたい。道のりはまだまだ長いですが、これからが勝負だと思っています。

Information

鈴木亮平さん主演の舞台「ライ王のテラス」
鈴木亮平さん主演の舞台 「ライ王のテラス」

3月4日(金)〜 17日(木) 赤坂ACTシアター

三島由紀夫がカンボジアのアンコール・トムに着想を得て、史実にフィクションを加えて書き上げた最後の戯曲『ライ王のテラス』。この春、宮本亜門の新たな演出で舞台の幕が開きます。主役のジャヤ・ヴァルマン七世王を演じる鈴木亮平さんに注目です。

【阿部民子 = 構成、佐藤慎吾 = 撮影】

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