社会課題を、超えていく。 UR都市機構

未来を照らす(48)俳優 田中 麗奈さん

  • URPRESS 2026 vol.85 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]
未来を照らす48 Special Interview Rena Tanaka「演じることは私の生きがい。お芝居で皆さんに元気を届けたい」

役ごとに違う顔を見せ、常に挑戦を続ける田中麗奈さん。
映画『黄金泥棒』では、平凡な主婦が金(きん)に魅了されて泥棒として輝く姿を熱演。
子どもの頃から変わらぬ演技への揺るぎない情熱をうかがいました。

たなか・れな
1980年生まれ、福岡県久留米市出身。98年『がんばっていきまっしょい』で映画初主演を務め、第22回日本アカデミー賞新人俳優賞など多数受賞。その後、2000年に『はつ恋』で第24回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞、17年の映画『幼な子われらに生まれ』でも多数の女優賞を受賞。今後の出演作として、4月28日放送開始のNHKドラマ10『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』があるなど、実力派俳優として、映画、ドラマ、舞台などに幅広く出演。

気を張らずに観てクスッと笑ってもらいたい

映画『黄金泥棒』が公開されて好評ですが、どのような役ですか。

私が演じた藤根美香子は、平凡であることがコンプレックスの40代の主婦。これといってやりたいこともなく、自分の殻に閉じこもっているため、世界が狭く寂しげな女性です。

日常生活に退屈していた美香子は、偶然行ったデパートの黄金展で数百万円の「金(きん)のおりん」に魅了され、魔が差して盗んでしまいます。そこから彼女の運命が展開し、百億円の秀吉の金茶碗(きんちゃわん)を盗もうと計画を立てるのです。

「一度きりの人生、私にしかできないことをする」という幼い頃の夢を実現していきます。実際に起きた事件から着想を得ていますが、盗みの計画の素人さがコミカルです。

演じていて難しかったシーンや、印象に残っているところを教えてください。

この映画はコメディですが、スピード感があって、テンションが高いというよりはシュールです。台詞や会話の間合いにはとても神経を使いました。間がほんの1秒、2秒と変わっても、おかしさの伝わり方が違ってきますから。

美香子は金茶碗を盗むという目的を見つけると、どんどん生き生きとしていきます。私は撮影に入るときに少し体重を増やしました。後半からは美香子がはつらつとして魅力的になっていく感じを出したくて、体を絞っていきました。そうすることで肌の質感も変わります。萱野孝幸監督と相談しながら、前半から後半への変化を、段階を踏んで変わっていくように話し合いました。

浮気をした夫(阿諏訪泰義)や、金の会社の社員で美香子と駆け引きをする金城光輝(森崎ウィン)にも、美香子はギャフンと言わせたい。だから、彼女の中でどのような感情がうごめいているのか、いろいろと考えました。監督の描き方には心理状態の伏線もあるので、細かいところを観ていただけたらうれしいです。

美香子の最初の状態を演じるシーンでは、私の経験が役に立ちました。子どもが生まれてからしばらくは、子育てに集中していたので、仕事に対して不安で閉塞感を抱いていました。このままどうなっていくのだろうか、これでいいのかと悶々としていたのです。それが反映されていると思います。

最初の家のソファでのシーンは、だらしなくて無防備な日常の姿が、一瞬でわかるようにしたいと思いました。それで着圧ソックスを履くことを監督に提案しました。監督は、「いいですね! ぜひやりましょう」と面白がってくださいました。

どのような方に観てもらいたいですか。

日常が平凡で退屈と感じている方や、やりたいことをやれなかった方に、美香子の行動を見てスカッとして元気になってもらいたいです。誰でもワクワクドキドキしたい願望がありますが、平凡な毎日だと苦しいこともあるでしょう。泥棒はしてはいけないけれど、美香子の気持ちはわかるって、共感してもらえるとうれしいです。

撮影ではおりんをはじめ、総額数百億円の本物の金の工芸品の数々を使っています。カメラも照明も、どの角度ならスタッフの姿が映らないかと苦労しました。美香子がバーナーであぶったおりんは、2000万円ぐらいする本物の金製品です。これも実話から着想しています。

でも、コメディなので、気を張らずに観て、クスッと笑っていただきたいです。

仕事を再開して、子育てとの両立はどうされていますか。

両親は福岡県の久留米に住んでいますから、最初は誰にどのように助けてもらえばいいかもわからず大変でした。徐々に環境が整い、周りの手助けがあったりするなかで、赤ちゃんから幼児に、そして子どもへと成長して、今は前ほど手がかからなくなってきました。

子どもとの生活や、母親と子どもの関係、何歳で何ができて、何ができないのか、といったことがわかりました。ただ、子育てばかりしていると、これからの仕事に対して危機感を抱くこともありました。仕事を再開してからは、子どもが寝たから2時間は台本を分析しようとか、隙間の時間を見つけて、なんとかやっています。

たくさんの出演作品がありますが、印象に残っているものは?

田中麗奈さんの写真

選ぶのは難しいですが、デビュー作『がんばっていきまっしょい』も『葛城事件』も反響がありました。それが『幼な子われらに生まれ』の出演につながりました。連続テレビ小説『ブギウギ』の娼婦役は意外だという声をいただいて。どの作品も常に挑戦してきました。

ドラマ『いちばんすきな花』は、観る方の年齢によって印象が違うようです。同一人物なのに違う人にしか見えない役で、私のいろいろな面を肯定してもらえた気がして、演じていて面白かったです。

田中麗奈は、役によって印象が違うと思っていただけたらありがたいです。

研究心や探求心を忘れないでいたいです

田中麗奈さんにとって女優とはどういうものですか?

女優という仕事には、言葉にできないぐらいの情熱を持っています。DNAに組み込まれた感じです。

私は5歳ぐらいから女優になると言っていました(笑)。ままごとが大好きで、誰かになりきって演じて遊んでいたのです。小学生のときはお遊戯会にはまって、自分でビデオを回してドラマを撮影したり、テレビドラマの台詞を書き写したりして、私なりに演じていました。

子どもの頃は、東京に行かないと女優になるチャンスがないと思っていたので、私はなぜ東京に生まれなかったのだろう、原宿を歩けたらどんなにいいだろうと思ったものです。

そして久留米出身の松田聖子さんや、チェッカーズさんが、テレビに出演しているときに、「久留米のみんなー!」って話しかけたことに、すごくびっくりしました。久留米にいる私でも、キラキラ輝く場所に行けると励まされたし、女優になってテレビに出る側に行きたい気持ちが強く湧いてきました。

母は私のそんな様子を見て、中学生になったら家出して東京に行くかもしれない、危ないと心配したそうです。それで、「九州のモデル事務所に面接に行くことから始めたら?」と一度、落ち着くように言われました。だから、私にとって女優という仕事は生きがいです。演じていないと息ができないぐらい苦しくなります。そう言うと周りに「女優は天職だね」と言われます(笑)。

歳を重ねるにしたがって、演技の技術も上げていきたいし、心も成長しないといけません。先輩からも後輩からも、ときには子どもからも教えられます。知識も手助けになるので、研究心や探求心も忘れないでいたいです。演じることで多くの方に楽しんでいただき、何かを感じてもらいたいという情熱は、5歳のときからずっと変わりません。

これから演じたい役はありますか。

刺激的な役です。例えば、個性的な母親とか、殺し屋の主婦とか(笑)。アクションにも挑戦したいし、髪を染めていたり、カラフルなカツラをつけていたり、私と見た目が全然違う役をやってみたいです。人造人間も面白いと思っています。「こんな役をやったの⁉」って、皆さんをびっくりさせたいし、私もワクワクしたいですね。

リフレッシュの方法は何ですか。

田中麗奈さんの写真

走ります。体を軽く保って、健康を維持したいですし、適度なランニングは脳にもいいと思うので走っています。

映画館に行くことや、予定を決めずに子どもと気ままに過ごす休日もリフレッシュになります。午前中は子どもも私も好きなことをして、ランチは相談して作って食べて、公園に出かける。ときには自転車でちょっと遠くの公園に行って、雲を見たり、互いの影を踏み合ったりして遊んでいると、穏やかで幸せだなと思います。

田中さんにとって、居心地のいい住まいや環境はどのようなものですか。

都会に住んでいても自然には触れたくなります。公園で葉っぱが風に揺れている音を聞いたり、庭の植物や花を切って花瓶に生けたりします。毎日、朝起きると窓を開けて空を見て、風を感じて、部屋に外の空気を入れます。庭に鳥が飛んできて、さえずりが聞こえる。今朝は花壇の草むしりをしてきました(笑)。何気ないことだけど、こういうことで気持ちのバランスをとっていると思います。

久留米に住んでいたときは女優になりたくて仕方なかったから、田んぼや竹やぶ、山などに恨みを持っていました(笑)。ホタルが飛んできれいだけど、静かな夜が腹立たしかったのです。

東京に住んでみると、久留米のよさがわかります。今は田んぼが愛しい。帰省すると子どもと自然の中を冒険します。

映画『黄金泥棒』

“金”に魅せられた平凡な主婦が泥棒に!? 実在の事件から着想を得て映画化された、一攫千金クライム・コメディ。人生最高の瞬間を追い求める、クスッと笑える等身大の痛快エンターテインメントが誕生。
監督・脚本:萱野孝幸
出演:田中麗奈、森崎ウィン、阿諏訪泰義、石川恋、岩谷健司、中村祐美子、勝野洋、宮崎美子

田中麗奈さんの写真

【小西恵美子=文、青木登=撮影】
【スタイリスト=岩田麻希、ヘアメイク=山下景子】

動画

俳優 田中 麗奈さん

演じることは私の生きがい お芝居で皆さんに元気を届けたい

  • LINEで送る(別ウィンドウで開きます)

インタビューバックナンバー

UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

UR都市機構の情報誌[ユーアールプレス]の定期購読は無料です。
冊子は、URの営業センター、賃貸ショップ、本社、支社の窓口などで配布しています。

CONTENTS

メニューを閉じる

メニューを閉じる

ページの先頭へ