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未来を照らす(46)俳優 松田るかさん

  • URPRESS 2025 vol.83 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]
未来を照らす46 Special Interview Ruka Matsuda「知的好奇心が枯れるまで 役者の仕事に挑みます」

昨年の大河ドラマ『光る君へ』の出演や今年公開の映画『かなさんどー』の主演で注目を集める松田るかさん。
役者を目指すようになった思いから、出身地である沖縄の魅力まで、お話をお聞きしました。

まつだ・るか
1995年生まれ、沖縄県出身。沖縄でスカウトされて芸能界へ。現役女子高生として地元テレビ局でMCを務めて話題に。2013年に上京し、その後『仮面ライダーエグゼイド』をはじめ『賭ケグルイ』『ちむどんどん』『光る君へ』などのドラマに出演。映画では『億男』『かなさんどー』、舞台では『W3 ワンダースリー』『ハネムーン・イン・ベガス』などに出演している。趣味はダンス、旅行、ネットサーフィン、語学の勉強。

おばあちゃんになるまで突き詰められる仕事です

芸能界に入るきっかけは何でしたか。

小学5年生のときに沖縄でスカウトされました。習い事も何もしていなかったので、母から「暇なんだったらやってみなさい」と言われたのがきっかけです。

プロダクションに所属するだけだと思っていたら、週末に歌とダンスのレッスンが始まりました。当時は、休みの日に、なぜレッスンをしなければならないのかと思ったけれど、ミュージカルをやるようになった今は、ダンスや歌のレッスンが役に立っています。

現役女子高生としてバラエティー番組のMCを務めたり、地元のCMに出たりしていました。女優になりたかったわけではないので、沖縄の大学に行って地元で就職してと考えていたところ、知り合いのプロデューサーに、「せっかくだから1回、東京に行ってみれば?」と言われて、気持ちが変わりました。

東京で5年頑張ってみようと。うまくいかず沖縄に戻っても、まだ23歳だからやり直せると思って上京を決めました。
自分の意思で芸能をやりたいと思ったのは、18歳で東京に出てきてからです。

タレントではなく、俳優を志した理由は何でしたか。

上京したときに、私には何ができるのかと考えました。モデルには身長が少し足りない、歌はすごく上手なわけではない、タレントをやれるほど頭の回転は早くない、と思いました。俳優はおばあちゃんになるまで突き詰められて、一番息が長いと思って目指しました。

初めて演技をしたときは、台本に書かれていないことをどのように盛り込めるか考えなさいと言われても理解できず。台詞(せりふ)をどのように言うのがいいか、言葉に注力していました。演じていくうちに相手の表現にどう応えるか、その場のセッションが大事なことに気づき、ひとりよがりで文字を読む危うさを知りました。

たとえば、台詞を言うときに、一呼吸おくだけで、「考えている」と表現できます。一気にしゃべったら、言うことを準備してきたとか、言わずにはいられないということです。最初は台本の「……」は黙っていることだと思っていましたが、何か言いたくても言えなかったり、言葉にならない感情があったり、そこには含みがあったのです。呼吸だけで、喜んでいることも、落ち込んでいることも表現できると知ったときに、台詞以外で表現する喜びを感じました。

日常生活では、意識せずにしゃべっているし、呼吸しています。しかし台本に書かれたことをやってくださいと言われると、自然に演じるのは難しく、うまくいきません。この難しさが探求しがいがあるところで、演じる面白さです。

自分が出演した作品を映画館の一番後ろの席に座って観て、お客さまの反応を見ることもあります。鼻をすする音が聞こえると頑張ってよかったと思うし、笑ってほしいシーンで笑いが起きるとうれしいです。

演じることの転機となった事柄はありますか

松田るかさんの写真

舞台です。ドラマや映画は時間に追われて撮影することが多く、台本が配られた翌日に撮る場合もあります。監督や脚本家、プロデューサーとディスカッションする時間は限られています。

一方、舞台は一カ月の稽古期間中に、登場人物がどういう人かをみんなでディスカッションして役を深めていきます。舞台は生ものですから、役者もお客さまも毎回違います。そこも面白いところです。

映像のいい点は、見返して演技のフィードバックがもらえることです。舞台は客席の場所によって役者の表情まではわかりませんが、映像はここを見てくださいとカット割りがされるので、細かい表現は映像のほうが伝わります。舞台は誰を見るか、どこを見るかはお客さまに委ねられています。

照屋年之(ガレッジセール・ゴリ)さん監督の映画『かなさんどー』で主人公の美花を演じられています。撮影はいかがでしたか。

タイトルの『かなさんどー』は沖縄の方言で「愛おしい」という意味。死生観と家族の愛と許しを、笑いを交えて描いた、沖縄の伊江島が舞台の物語です。

一つひとつのシーンの前に監督と話をして役を深めて撮影に入りました。対話を大事にする現場で、少数精鋭だったので、俳優もスタッフも一丸となって作ったという達成感がありました。

映画には沖縄独特の鳥や虫の声が入っていて、土地の空気感が漂っています。夜にヤモリが鳴くのは沖縄では誰もが知っています。本州の方にヤモリの鳴き声がピンとこないと言われて驚きました。

沖縄はガジュマルのような樹木がたくさん生えていて、海も空も気候も、東京とは違います。私は本州の海では、まだ気分が上がったことがありません。やっぱり海は沖縄です。

映画では、ゆったりした時間軸があり、その沖縄らしさにも気づかされました。

離れたからこそ感じられた沖縄のよさ、人とのつながり

沖縄は地域のつながりが強い印象がありますが、いかがですか。

地元沖縄に帰ったときは、海へ行ったり、沖縄そばを食べたりしてリフレッシュするのが楽しみ。

沖縄には助け合う「ゆいまーる精神」があります。また、一度会ったらみな兄弟という意味の「いちゃりばちょーでー」という言葉もあり、人と人とのつながりや助け合いを大事にしています。

私は上京するまで、沖縄は近所の人との距離が近くて、一挙手一投足、見られているようで窮屈に感じていました。でも今は、そういうつながりが大事だと思うようになりました。沖縄に帰ると、「あんた、ウチナーンチュ(沖縄の人)なんだってね。応援してるからね」と声をかけていただけたりして、うれしいです。

そういう温かさに接すると、いい環境に身を置いていたとわかります。沖縄を離れたからこそ、沖縄のよさを感じられるようになりました。人と人とのつながりはお金で買えない大事なものです。

東京では、隣に住んでいる方の顔はわかっても、名前は知りません。誰も私に興味がないと思うと心地よくて、「私、何者にもなれる!」と希望を持ちました。東京も沖縄もいいところがあって大好きです。

これからどんな役をやりたいですか。

まだ経験が少ないですから、映像も舞台もミュージカルも、現代もの、時代ものといろいろやりたいと思っています。具体的に言うと、ダメなところといいところがあって人間味のあるチャーミングな役を演じたいです。

知らないものを知ることに喜びを感じますから、私の知的好奇心が枯れるまで探求心を持って挑戦したいと思います。

20代半ばの頃、私はあれもできないし、これもできない、何をやっても無理と自分ばかりかわいそうな気になっていました。それが「自分が特別な人だと思ってるの?」と自分に問えたときから変わりました。やっと大人になった気がします。

私は役を演じるとは誰かになりきることだという感覚を持っていましたが、自分のフィルターを通して解釈してからしか、アウトプットできません。だから演技は私が経験したことの延長線上にあります。松田るかが出ているから観ようと思っていただけるようになりたいです。

松田るかさんの写真

休みの日や家ではどのように過ごしていますか。またリフレッシュやリラックスの方法は何ですか。

よく散歩をします。同じ道を歩いても、季節は変わるし、日々感じることは違います。近郊のラーメン屋さんに行って、駅の周りを散歩したり、東京を少し離れてリフレッシュします。

昔は自然を見ても、「木が生えているだけだから、それよりアニメを観たい」と思っていたけど、今は自然が好きで家で植物を育てるまでになりました。

今までを振り返って、自分をどのように見ていますか。

どの年齢も懸命に生きてきました。ちゃんと反抗期がきて、斜に構える時期があって、世間知らずゆえに一人で東京に出る大きな決断をして。「自分はやれる!」と調子に乗っている時期もあれば、ダメだと思うこともありました。いつもまっすぐぶつかってきました。

一人で飲みに行くことが楽しいと思っていた時期もあったけど、今は家族と過ごす時間がとても楽しいと感じる自分もいます。まだこれからの人生、何があるかわかりませんが、今は、年齢に合った成長をしてきているな、「人間してるな」と思っています(笑)。

【小西恵美子=文、青木 登=撮影】
【ヘアメイク=櫻りさ、スタイリスト=山本真里江】
ワンピース/IMMEZ -イムズ-(インピゲル株式会社)
ピアス/accessoryshopmary
リング/yuu
靴/銀座かねまつ(銀座かねまつ6丁目本店)

動画

俳優 松田るかさん

知的好奇心が枯れるまで 役者の仕事に挑みます

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