社会課題を、超えていく。 UR都市機構

【特集】信州まちづくりデザインスクールを通し自治体職員に刺激を UDC信州(長野県)

  • URPRESS 2026 vol.84 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

長野県各自治体のまちづくりを支えるUDC信州では、昨年夏に、自治体の人材育成を目指したスクールを開講。
参加者たちは大きな学びを地元に持ち帰った。

長野県内を広域でカバーするUDC信州

信州まちづくりデザインスクールで密度の濃い13日間を過ごした18人の仲間たちと関係者で、閉講式の記念撮影。まちづくりの担当者である建築や土木職員に加え、商工観光課といった部署からの参加もあった。メンバーたちはその後も連絡を取り合い、関係を深めている。

全国各地のまちづくりを支援する公・民・学連携のプラットフォームであるUDC(アーバンデザインセンター)。現在28拠点あるなかで、唯一県全域を対象とした広域型のUDC信州は、2019(令和元)年にスタートした。長野県が17年度に策定した総合5カ年計画「しあわせ信州創造プラン2.0(当時)」の実現に向けたまちづくりを進めるため、長野県内の各自治体から寄せられるさまざまな相談と向き合っている。

長野県と「まちづくり支援に係る包括連携協定」を締結しているURは、東京大学、信州大学、長野県とともに、UDC信州に構成メンバーとして参画。担当するURの鈴木和磨は、「URがこれまで全国で動かしてきた幅広い事業での経験を、UDC信州に生かしている」と話す。

UDC信州の特徴は、複数の市町村にまたがる広域連携で課題解決を探る取り組みを行うところにある。

例えば現在、「しなの鉄道沿線広域プロジェクト」「諏訪湖周辺エリア戦略検討会」「レイクリゾート創造プロジェクト」などが進んでいるが、「広域連携はUDC信州のキーワードです。あくまで中心は市町村ですが、市町村単独では難しいところをUDC信州がつないで広域連携をつくり、サポートしていきます」と長野県庁からUDC信州に派遣されたコーディネーターの土屋貴之さんが説明する。

URでUDC信州にかかわり、演習をプランニングした鈴木。
UDC信州が支援する広域プロジェクトのひとつ、茅野市と立科町が取り組む「レイクリゾート創造プロジェクト」の会議の様子。

夏のスクールで人材育成をサポート

UDC信州では昨年7~8月に、「信州まちづくりデザインスクール」を開講した。その目的を、UDC信州センター長で東京大学教授の出口 敦さんはこう説明する。

「ものすごいスピードで技術革新が進み、政策転換が進行するなか、地方では人口が減少し、財政も厳しい。今の行政の現場では、従来の発想は通用しません。今こそ発想の転換ができる人材の育成が必要です。そこで東京大学のリソースも活用しながら、自治体を引っ張っていける人づくりを目指すスクールを集中開講しました」

参加したのは長野県内16市町の18名。カリキュラムは週2回、15講義と3つの演習で構成され、演習の最後には参加者が地元自治体で行動すべきまちづくりプロジェクトをデザインして発表する。講義を担当する講師は、その道の実務に長けた方ばかりで、「これだけのメンバーに集まっていただいたのは初めてのこと」(出口さん)だった。

参加した上田市都市計画課の柳澤洋平さんは、「地元の人口減少を実感するなか、これまでのまちづくりの方法は参考にならないのではないかと感じ、スクールに志願しました。第一線で活躍されている錚々(そうそう)たる講師による講義はすべて面白く、とても刺激を受けました。中身が濃く、熱量に圧倒された13日間でした」と振り返る。

UDC信州センター長で、東京大学教授の出口さん。
今回のスクールに参加した上田市都市計画課の柳澤さん。
信州まちづくりデザインスクールで行った演習のひとこま。写真は東京都豊島区東池袋に誕生した防災公園「IKE・SUNPARK」。
信州まちづくりデザインスクールは、その道の第一線で活躍する講師を招いて充実した講義が行われた。

まちづくり事業を地元で実践

なかでも参加者に刺激を与えたのが3回にわたる演習だ。演習1は、URがコーディネートして、まちづくり先進地の東京都豊島区、中野区と栃木県鹿沼市を訪ねた。現地を見学しながら担当者の話を聞き、最後に概念図を作成する。

演習2は、スマートシティとして先進的な取り組みを行う長野県塩尻市に協力をあおぎ、この地の課題を抽出して解決する方策をまとめた。

三つめの演習は卒業制作だ。それまでの演習は3人でグループをつくって取り組んだが、こちらは1人。これまで学んだことをふまえ、地元で実際に自分が取り組むべき課題を選び、実現可能でイノベーティブな事業計画を立てる。最終的にはそのプロジェクトを翌年の予算に盛り込むところまでを目指す。講評会を行って、優秀作には賞品も授与された。

URは企画段階からスクールに協力、演習を組み立てるだけでなく、講義も受け持った。URの鈴木は、「まちづくりを実践してきた経験を生かし、特色ある演習をどう組み立てて、そこで何を学び、アウトプットするのかを考えていきました」という。

UDC信州の土屋さんは「スクールは初めての取り組みでしたが、これはUDC信州があったからできたこと。すぐに成果が出るとは思っていませんが、必ず実を結ぶはずです」と期待する。

「地方が疲弊しているなか、知恵と工夫でまちを盛り上げていくキーになる『人』を育てることが求められています。このようなスクールを定期的に開き、そして横展開していけば、新しい構想力をもった人材が地方に育っていくのではないでしょうか」

こう話す出口センター長の言葉に、皆さん力強くうなずいていた。

UDC信州でコーディネーターを務める土屋さん。
URが密集市街地整備事業を行っている中野区弥生町。
栃木県鹿沼市の街並みを歩く。
スマートシティ先進地の長野県塩尻市を視察。

長野県
阿部守一 知事

阿部守一 知事の写真

人口減少により社会構造が大きく変化するなかで、私たちはインフラをいかに維持し、中心市街地の空洞化をどう克服していくのかといった、まちづくりに関する重要な課題に直面しています。

こうした状況のもと、地域の魅力をいかに再発見し、まちをどのように再設計していくかが、これからの県や市町村の発展を左右する鍵となります。まさに、地域の知恵と力が問われるところであると考えています。

そのようななか、今年度UDC信州が開催した「信州まちづくりデザインスクール」を通じて、地域の方々とともに議論し、対話を重ね、地域資源を活かし合いながら、参加される皆さんが「自分たちのまちをどのように発展させていくのか」を主体的に考える中核となっていただくことを期待しています。

県としても、引き続きUR都市機構の皆さんとともに、県内各地の魅力あるまちづくりを力強く推進してまいります。

【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影(人物)】


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