社会課題を、超えていく。 UR都市機構

【特集】「リミックス」をキーワードに歴史ある商店街に活気再び 北ぶらくり丁(和歌山県和歌山市)

  • URPRESS 2026 vol.84 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

かつて和歌山一のにぎわいを誇った歴史ある商店街「北ぶらくり丁」。
客足が落ち込み、シャッターばかりになった通りに新たな魅力が生まれ、再び活気が戻りつつある。

繁栄からどん底へそこからはい上がる

MUJI HOUSEインフラゼロハウスの開所式。左から、和歌山市副市長の犬塚康司さん、UR西日本支社長の高原功、北ぶらくり丁商店街振興組合理事長の桑島英樹さん、和歌山県県土整備部長の小浪尊宏さん、MUJI HOUSE取締役の川内浩司さん。

和歌山市の「ぶらくり丁」は、江戸時代に和歌山城下に誕生し、昭和の時代まで和歌山一のにぎわいを誇った繁華街だ。全盛期には映画館が6館、百貨店も複数あり、人が多すぎてまっすぐ歩けないといわれるほどだったという。

だが時代は変わる。大型商業施設が郊外に進出し、インターネットでの買い物が浸透。域内にあった病院や大学も移転して、商店街はみるみるうちに衰退していった。

「2000年頃が底でしたね。シャッターを下ろした店が並び、昼間でも歩く人はまばら。若い人は、ぶらくり丁という名前も知りません。でも、そこから新たな歩みが始まり、20年以上かけて今に続いているんです」

こう説明してくれたのは、ぶらくり丁のひとつ、北ぶらくり丁商店街振興組合副理事長の平松博さん。昨年10月12日、ここで行われた「北ぶらリミックスプロジェクト」のオープニングイベントでお話を聞いた。

商店街が建てたアパート北ぶらくり丁会館の前に立つ、北ぶらくり丁商店街振興組合副理事長の平松さん。現在、ここには小さな映画館、隠れ家的なバー、オーストラリア人が経営するカフェなどが入り、知る人ぞ知る人気スポットになっている。

なんでも挑戦できる面白い商店街に

北ぶらリミックスプロジェクトは、URが主催、MUJI HOUSEと和歌山市、商店街振興組合が協力して、12月28日まで開かれた。北ぶらくり丁(以下、北ぶら)商店街の空地に、MUJI HOUSEが展開するインフラゼロハウスを設置してまちなかでの実証実験を行い、商店街ではさまざまなワークショップや防災イベントなどを行った。

インフラゼロハウスとは、電気、水道など既存のライフラインに依存せずに暮らすことができるモバイルユニット。トラクターなどで牽引して移動させることができ、今回初めてまちなかに置かれた。

「URさんがMUJI HOUSEさんと連携して実現しました。これがあるだけで、まちの印象が変わります。若い人たちに、ここで何かやってみようと思ってもらえます」

と期待を込めるのは、北ぶらのまちおこしイベントなどを手掛ける(株)サスカッチの小川貴央さん。サスカッチは和歌山市指定都市再生推進法人で、北ぶら商店街の皆さんとともに、月1回のマルシェ「リメンバーマーケット」の開催など、ここに人を呼ぶためのさまざまな取り組みを行ってきた。

「サーカスもDJイベントもやりましたよ。ここは何でもできる面白い商店街だ、というイメージが浸透したと思います」と小川さん。

こういった地道な取り組みに加え、「昭和レトロ」ブームもあり、昔のままの看板や装飾が残る商店街の建物が注目されはじめた。こだわりの作品を上映する小さな映画館や、オーストラリア人が開くカフェができ、行列ができるうどん店や、コワーキングスペースも誕生。この4年間で新しい店が18軒も開店した。こうして今、商店街に足を運ぶ若い人やインバウンド客が、徐々に増えてきている。

サスカッチの小川さんは、「ここで映画を見て、コーヒーを飲んで、おしゃべりする。若い人がデートできるまちになるといいな」と話してくれた。

アーケードを撤去してウォーカブルなまちへ

URは15(平成27)年に和歌山市からの要請を受け、まちづくり支援を開始。21年には連携協力協定を締結して、にぎわいの創出、ウォーカブルなまちづくりを地元とともに進めてきた。

URで担当する濱口奈那は、「商店街、和歌山市とサスカッチさん、URで定期的にミーティングを行っていますが、みんなで一緒に考えようという雰囲気があり、アイデアがどんどん出ています」と話す。

和歌山市都市建設局の西本千智さんは「URさんには全国的な情報の蓄積があります。行政ではできない部分を補い、民間と行政をつなぎ、牽引してもらっています」と言葉をつなぐ。

北ぶら商店街はアーケードの撤去を決めた。商店街の道は市道だ。西本さんは、「アーケードが撤去された後の北ぶらが、緑豊かで居心地のいい空間になり、和歌山市が目指す『歩いて楽しいウォーカブルなまち』になるよう、これから皆さんと考えていきたい」と展望を語る。

「インフラゼロハウスでポップアップショップをやってみたいという人もいます。どんな道路をつくっていくか、インフラゼロハウスで話し合うのもいいですね」とURの山口 舜。

昔のよいところを生かしつつ、新たな発想を取り入れるリミックスが、北ぶらの魅力。地域の皆さんが取り組むまちづくりに、URはこれからも寄り添っていく。

北ぶらを盛り上げようと意気込むメンバー。左からURの山口、和歌山市の西本さん、URの濵口。
北ぶらくり丁は、写真の本町通りと築地通りの間、約200mの通り。江戸時代、ここでは店先に商品をぶら下げて陳列した。「ぶら下げる」から「ぶらくり」になったとか。
商店街のあちこちに残る、昭和レトロな店の看板や装飾が、いま注目されている。写真を撮りに来る人も多いそうだ。
この日は月1回開かれる「リメンバーマーケット」の日。古道具屋さんやスイーツの店などさまざまなお店が通りをにぎわせていた。
「北ぶらリミックスプロジェクト」のオープニングイベントでは、当地恒例の「もちまき」が行われ、子どもたちもたくさん集まった。
イベントの日は、北ぶらくり丁にほど近い本町公園で「てとこと市」も開催され、相互に人が行き来していた。

【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】


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