【URのまちづくり最前線 第21回】(仮称)八重洲バスターミナル整備事業(東京都中央区)
東京駅・八重洲エリアに建設中
日本最大級のバスターミナル
再開発が進む東京駅・八重洲エリア。
その地下でバスターミナルの建設工事が進んでいることをご存じだろうか。
東京の玄関口となるこのバスターミナルの整備にURが関わっている。
東京と地方、交通手段を結ぶ拠点に
東京駅のすぐ近くにバスターミナルができると最初に聞いたとき、「いったいどこに?」と思った。それが飲食店をはじめ180ものショップが集まる「八重洲地下街」を挟むように広がる3カ所にできるのだと知って、「それは便利! バスに乗る前においしいものが買えるし、雨が降っても東京駅から濡れずにアクセスできる」とうれしくなった。3カ所すべて完成すれば合計で20バース(乗降場)を備え、バスタ新宿(15バース)を超える国内最大級の施設になる「(仮称)八重洲バスターミナル」。空港や観光地、地方都市へと行き来しやすくなり、また東京駅や京橋駅とも地下でつながるのでバスと鉄道の乗り換えがスムーズになることも間違いない。
地下部のバスターミナルの上には、いずれも再開発によって複合高層ビルが建てられる予定だ。八重洲二丁目北地区(北地区)は、地上45階建ての「東京ミッドタウン八重洲」として2022(令和4)年8月に竣工予定で、商業施設をはじめホテルやオフィス、区立小学校などが入る。
さらに2025年には八重洲一丁目東B地区(東地区)、2028年度には八重洲二丁目中地区(中地区)に超高層ビルが竣工予定で、バスターミナルもそれにあわせて順次開業する。
八重洲の民間再開発に際してバスターミナルを整備し、路上等で乗降するバスを移行させる方針が正式に決まったのは2015年のこと。学識経験者、国土交通省、東京都、中央区、警視庁、バス協会等とURによる「東京駅前・八重洲バスターミナル整備推進委員会」が設置され、国際都市東京の玄関口として多様な機能を集積し、空港や地方都市との交通結節機能の強化を図ることが明確に掲げられたのだ。
これにより、東京駅周辺でのバスの路上駐車が引き起こす渋滞、乗降者の歩道での待機・車道横断などの問題や、鉄道とバスの乗り継ぎが不便なことも解消される。新設するバスターミナルへ移行対象となるのは、主に高速乗合バスで(東京駅八重洲南口の駅前広場で発着するバスと一般路線バスを除く)、鍛冶橋駐車場で発着するバスも対象だ。
わかりやすく安心・快適な空間に
このプロジェクトで、URは3地区の再開発事業で段階的に整備されるバスターミナルを一体的に保有してトータルで管理する役目を担っている。それぞれの地区で、再開発組合が権利調整から設計・工事等の事業を行う。3地区で事業者や工期が異なるなかで、一体的なバスターミナルとして整備するのは一筋縄ではいかない。
「3カ所に横串をさすような役割をURが担っています。大規模かつ意義のあるプロジェクトであり、利用する皆さんに喜んでもらえるバスターミナルを、関係者の皆さんと協力しながらつくりたいと思っています」
とプロジェクトを担当して5年になるURの金井絵美は言う。
(仮称)八重洲バスターミナルの運営を担うのは、京王電鉄バスだ。
「私どもは新宿西口での高速バスターミナルの運営からスタートし、バスタ新宿の運営にも携わっています。50年以上にわたり培ってきたノウハウを、新たな地で最大限に発揮したいと思っています。コンセプトは『SMART バスターミナル』。高速バス予約サイトシステム(ハイウェイバス ドットコム)も運営していますので、予約から乗降まで、利用者目線でわかりやすさと安心感をSMARTに(賢く、気が利いた状態で)実現したいとの想いを込めました」
京王電鉄バス東京駅八重洲高速・貸切バスターミナル開業準備チームの中山智課長は説明する。ターミナルの待合空間と車路の壁をガラスにすることで圧迫感を緩和し、排気ガスを遮断するなど、待合スペースの快適性にも配慮する。
「乗降客、バス事業者の双方がストレスなく利用できるように意見を出し合いながら、URさんとはワンチームで3地区の整備に取り組んでいます」と中山課長。
一方、URの金井は「京王電鉄バスの皆さんは経験豊富でとても頼もしくて、一緒の方向を向いて進んでいます」と信頼を寄せている。
旅や仕事に、帰省やレジャーに、新たなバスターミナルを拠点に人々が行き交う様子を夢見ながら、関係者は着々と整備を進めている。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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