【URのまちづくり最前線 第25回】中野三丁目・中野四丁目新北口駅前地区土地区画整理事業(東京都中野区)
人も車も安全・安心、快適に。中野駅周辺で進む大規模なまちづくり
新宿駅からJR中央線で中野駅まで5分。
庶民的な商店が多く、サブカルチャーの発信地としても知られる中野駅の周辺で、大規模なまちづくりが展開されている。
中野駅周辺の混雑、課題を解決する
中野駅の北口改札を出てデッキに上がると、右手(北側)に中野サンプラザの特徴的な建物が目に飛び込んでくる。左手(南側)のホームの奥には建設中の高層ビルが、そして正面(西側)にはクレーン車や工事車両がいくつも見える。
「中野区としては過去にない大規模なまちづくりが中野駅周辺で進んでいます」
中野区中野駅周辺まちづくり課担当係長の分藤 憲(ぶんどう さとし)さんが、概要を説明してくれた。
まず、駅については、通勤時や中野サンプラザでのイベント時に大変な混雑となることやバリアフリー未対応などの課題をふまえ、鉄道事業者とともに西側に南北通路・橋上駅舎を整備して、西口改札を増設する工事が進行中。あわせて西口改札ができる2階レベルに南北通路からつながる歩行者デッキを整備。地上レベルは交通広場を整備し、点在しているバスやタクシーの乗り場を交通広場に集約することで、利便性を高める。これまで駅直近で南北をつなぐ動線は、ガード下をくぐる中野通りと駅の改札内の通路しかなかったが、これらの取り組みにより慢性的に混雑していた駅周辺の課題を解決するという。
また、施設の更新の時期を迎えている中野四丁目の中野サンプラザは解体、中野区役所は移転し跡地を整備する。すでに進んでいる駅南側の二丁目、三丁目に加え、将来的には五丁目にも広がる予定のまちづくり。概略を聞いただけでも大変な規模であることが伝わってくる。
先行して中野四丁目の警察大学校の跡地に整備された「中野四季の都市(まち)」には、公園やオフィスビル、レジデンスのほか、明治大学や早稲田大学などが集まり、若い世代を中心に中野駅の利用者も増加している。
地元のDNAをつなぎ機能的なまちに
URは、中野駅周辺のまちづくりで、中野三丁目地区と中野四丁目新北口駅前地区の土地区画整理事業を担当している。中野三丁目地区では、土地区画整理事業とあわせて土地有効利用事業として桃丘小学校跡地を取得。西口広場用地やにぎわいの拠点となる施設用地を創出し、商業機能の誘致などに利用される予定だ。
一方、中野四丁目新北口駅前地区では、区画整理により中野サンプラザや中野区役所などの土地を集約し、駅前広場や新たな拠点施設をつくるための基盤整備を担っている。
「URさんには土地区画整理事業の施行者として関わっていただいていますが、そのずっと前から中野駅周辺のまちづくりの総合コーディネートを支援していただき、一緒に検討を進めてきた経緯があります。100年に一度といわれる大規模なまちづくりを区の職員だけで動かすにはノウハウもマンパワーも足りないので」と分藤さん。
中野駅周辺では十数の事業が同時に進行している。URの齊藤貴晶は、その規模と関係者の多さに緊張を覚えながら、「URの事業を着実に進めていくことに加え、再開発事業をはじめ同時に進行している周辺の事業にも目を配りながら、中野区が進めるまちづくりが円滑に進むように関係者との調整に力を尽くしています」と語る。
南北通路や歩行者デッキの完成は2026年度の予定。歩行者デッキは道路を渡らずに移動できる安全・安心の確保はもとより、災害時には広域避難場所に指定されている中野四季の都市(まち)へ、線路の南側からアクセスする動線ともなる。
中野サンプラザは、隣接する中野区役所が新庁舎に移転後に取り壊され、「NAKANOサンプラザシティ」として生まれ変わる。大ホールやホテル、エリアマネジメント施設やオフィス、レジデンス、商業施設などが入る予定だ。
「中野サンプラザの跡地にできる新しい拠点施設は民間事業者が整備しますが、それができるのは、きちんとした基盤整備があってこそ。その要をURさんに担っていただけているのは心強いです」
分藤さんのその言葉を受けて、齊藤は「中野区の顔となるエリアですから、100年に一度といわれるまちづくりが実現するようしっかりと下支えしていきたいです」と応じた。2人がともに望むのは、中野らしい文化や親しみやすさを残しながら、安全・安心で機能的な、魅力あふれるまちに生まれ変わることだ。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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