街に、ルネッサンス UR都市機構

【URのまちづくり最前線 第14回】まちリプ@福山 (広島県福山市)

URPRESS 2020 vol.60 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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リノベーションを通してまちを活性化するプロジェクトが進行中

瀬戸内や備後圏域の玄関口として、新幹線のぞみの停車駅でもある福山。
悠久の歴史と海や山の自然、そしてものづくりも豊かなこのまちで、今新たな再生の動きが活発化している。
古いものを活かして賑わいを生む、新しい手法が注目を集めている。

古いビルをリノベしたゲストハウスが誕生

クリスマス気分が盛り上がりを見せ始めた昨年12月12日。JR福山駅から徒歩2分のレトロな雑居ビルに、新しいゲストハウスが誕生した。「AREA INN FUSHIMICHO 2-8」の控え目な看板がかかる入口から2階に上がると、印象が一変する。ブルーとシルバーを基調としたスタイリッシュなインテリア。個室が6つ並び、シャワールームや洗面所、調理器具などが置かれたリビングルームも設けられ、コンパクトながら使い勝手がよさそうな造りだ。

「このゲストハウスは男性専用で、1年前に女性専用をつくり、ここが2軒目です。コンセプトは、まち全体をひとつの『宿』に見立てた『まちやど』。ここを拠点として、駅前の伏見町でくつろぎ、鞆の浦などの観光地やその先の瀬戸内の島々へ足を延ばしてもらいたい」と語るのは、ゲストハウスを運営するフューレックの藤本勇次専務だ。

このゲストハウスがユニークなのは、その造りだけではない。駅前の再生のために、URと地元のまちづくり会社築切家守舎が連携。ビルが建つ土地はURが取得し、その土地の有効利用事業の一環として、上に建つビルを築切家守舎と連携する地元企業フューレックが買い取ってリノベーションおよび運営する、全国で初めての方式になっているのだ。

ゲストハウス「AREA INN FUSHIMICHO FUKUYAMA CASTLE SIDE」のレセプションの入口
フロント、カフェスペース
1階に居酒屋が入る雑居ビル2階にあるゲストハウス「AREA INN FUSHIMICHO 2-8」。一人での宿泊をはじめ、ワンフロア貸し切りで合宿や企業のセミナーなどの使用も可能。
2019年10月5日、6日に行われた「福山市伏見町実証実験&リノベーションスクール エリアパーティ」。URは福山市、まちづくり会社ルークなどと連携して、道路空間の広場利用や賑わい創出イベントの実証実験を実施。
福山駅前の飲食店やゲストハウスのオーナーであり、クリエーター集団のまちづくり会社leuk(ルーク)代表取締役も務める古賀大輔さん。市内公園のパークPFIの実証実験や駅前再生のキーパーソンの一人。
スポンジ化が進んでいた福山駅周辺の伏見町一帯。

遊休不動産を活用して福山駅前を活性化

多くの地方都市でも見られるように、近年、福山駅前は大型商業施設の撤退や郊外型店舗の進出により、空き店舗や駐車場などが増加、エリア全体のスポンジ化が進んでいた。大きな変化が起こったのが、2016(平成28)年、枝広直幹現福山市長の就任だ。

16年には、市役所内に福山駅前再生推進室を開設。18年3月、「福山駅前は、備後圏域や福山市の玄関口として重要な交通結節点であり、県東部の経済的・文化的な拠点として重要な役割を担っていかなければいけない場所」と位置付けた「福山駅前再生ビジョン」を策定。それと並行して、地域の活性化を志す若者らに実際の遊休不動産を活用した事業の実現に取り組んでもらうリノベーションスクールを、これまでに3回開催。1回目の受講者が、築切家守舎が借り受けてフルリノベーションした築53年のビルへ、1年前に飲食店を出店したことを契機に、空き店舗が続々とリノベーション。すでに10店以上が新規出店をして、新たなにぎわいを生むなど、確かな形となって現れ始めている。

福山市福山駅前再生推進室の園田昌弘室長は「市長が『やる』と宣言して駅前の再生を常に発信し続けたことと、リノベーションまちづくりで地元の方を巻き込み両輪で動き始めていることが、これだけのスピードにつながったのでは」と分析する。

URは、2017年に福山市から駅周辺のまちづくりに対する協力要請を受け、再生ビジョン策定や伏見町活性化の実証実験など、多様な場面で支援。冒頭の土地の取得も、事業の一環だ。

「劇的にさまざまなことが変わっていくのを目の当たりにできて、しかもそこにプレイヤーとして関わらせていただけるのは稀有な体験です。組織としてもできる限り協力させていただきたい」とURの中山哲也は話す。

加速度的に再生が進む福山駅周辺から、これからも目が離せない。

「URさんのような専門家と一緒にやれるのはすごく心強い」と話す福山市福山駅前再生推進室の園田昌弘室長(中央)。URの中山哲也(右)と賀満田 将悟(左)は、「従来の都市再生のようなスクラップアンドビルドでなく、小さい部分から今あるものを再利用して広げていく、今までにないアプローチ。URでも前例のない事業で、やりがいを感じています」と話す。
フューレック代表取締役専務の藤本勇次さん。「夜6時以降はほとんど人が歩いていなかった伏見町ににぎわいが戻ってきた。確実に動き出している実感があります」

【阿部民子=文、菅野健児=撮影】

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