【復興の「今」を見に来て!第18回】福島県双葉町
JR常磐線前線再開とともに新しいまちづくりが加速
双葉町で初めての「住む拠点」整備
東日本大震災とその後に起こった東京電力福島第一原子力発電所事故により、全町避難が続く福島県双葉町。しかし昨年10月に訪れたときに見たのは、ダンプや乗用車が走り、各地で工事が進んでいるまち。復興への歩みを進める力強い姿だった。
なかでも目を引いたのは、今年3月に全線再開となるJR常磐線双葉駅の工事現場だ。工事の仮囲い越しに見える駅舎は、従来の地上駅から、線路をまたぐ橋上駅へと改修。もともとの町の中心地であった駅東側と、新たな中心市街地となる西側をつなぐ東西自由通路が設けられる、新しい双葉町のシンボルともいえる存在だ。
工事現場をのぞむ会場で行われたのが、双葉町で初となる「住む拠点」整備着工の起工式だ。昨年10月1日に行われた起工式では、田中和德復興大臣をはじめとする多くの来賓が臨席するなか、双葉町の伊澤史朗町長が「帰還住民をはじめ、避難先との二地域居住希望者、就労者の皆様が近接して居住し、共生できる、規模は小さくとも豊かに暮らすことができるまちにしたい」と挨拶。
続いて、事業を受託したUR理事長の中島正弘が「福島の復興に関わる事業を受託したことは、長年まちづくりに携わってきた組織として、とても名誉なこと。URのプライドをかけて施工したい」と工事着手の抱負を語った。
常磐線再開に向け東口広場を整備
今回着手したのは、帰還困難区域を再び住めるようにする特定復興再生拠点区域(23・9ヘクタール)のうち、JR双葉駅西側を中心とした第一地区(12・3ヘクタール)の基盤整備だ。まずは造成工事を行い、2022(令和4)年の居住開始に向けて、公営住宅88戸や分譲地、商業施設や医療などの生活関連サービスの整備が予定されている。
URは福島原子力災害被災地域の大熊町、浪江町に続き、18年1月には双葉町の避難指示解除準備区域である中野地区で、新たな産業雇用の場となる「働く拠点」整備を開始。そして、今回のJR双葉駅西側地区での復興拠点整備を支援している。
URの森脇恵司は、「基盤整備をはじめ宅地や道路、下水道などのインフラ、さらには双葉駅前東口広場など、町民の方々の生活や生業の下支えとなる部分の施工を担います。帰還した方々の生活再建や経済活動がうまくレールに乗るにはどうしたらいいか、頭の中で知恵出ししながら進めるのが難しいですね」と話す。
新しいまちづくりについて、双葉町復興推進課の田中聖也さんは、「単に町を元に戻すのでなく、世界に先駆けた地方創生のモデルシティをつくり、町に関心を持つ人も増やしていきたい。例えば地区全体で再生可能エネルギーの自家発電や自家消費を行うエネルギーの地産地消であったり、防災に強いまちのための電柱の地中化、高齢者も自由に移動できる自動運転のフィールドづくりなども視野に入れています」と話す。
「まずは、3月に控えるJR常磐線の全線再開に向けて、双葉駅東口駅前広場の整備に力を注ぎます。従来の駅舎をうまく利活用しながら、新しい東口の景観を再構築したい」と森脇も言葉を継ぐ。
起工式で、「常磐線の車窓から新しい双葉町を見た方が、住んでみたいと思えるようなまちにしたい」と語った伊澤町長。多くの人の復興への願いを乗せて、この春、新しい双葉町に待望の電車が通る。
【阿部民子=文、菅野健児=撮影】
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