街に、ルネッサンス UR都市機構

【復興の「今」を見に来て!第17回】岩手県 釜石市

URPRESS 2019 vol.59 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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「うのすまい・トモス」と名付けられた駅前エリア。手前の建物が飲食店とお土産品店が入る「鵜の郷交流館」、左側に震災犠牲者慰霊追悼施設「釜石祈りのパーク」と、震災伝承と防災学習のための施設「いのちをつなぐ未来館」が完成した。右側に鵜住居駅がある。

未来へ向けてタッグを組み動き出すまち

ワールドカップの試合を見に集まった人でにぎわう「うのすまい・トモス」。
高台に移転された釜石市立鵜住居小学校と釜石東中学校。住民の一時避難場所にも指定されている。

2019年9月25日。釜石市鵜住居(うのすまい)地区は国内外から集まった人々であふれかえった。その数、1万4000人。「ラグビーワールドカップ2019日本大会」の釜石での初戦、フィジー対ウルグアイ戦が行われたのだ。東日本大震災の被災者への黙とうのあと、白熱した試合が繰り広げられ、スタジアムはもとより、外のファンゾーンにもこの日を待ち望んでいた多くの市民が集まり、盛り上がった。

悲願のワールドカップついに実現

日本選手権7連覇という偉業を成し遂げた新日鐵釜石ラグビー部を生み、ジャパンラグビートップチャレンジリーグに所属するチーム「釜石シーウェイブスRFC」を有するラグビーのまち、釜石。東日本大震災で多くのものを失ったこのまちにとって、ラグビーワールドカップの試合開催は、悲願であり、逆境から立ち上がるための原動力、復興のシンボルでもあった。

試合会場の「釜石鵜住居復興スタジアム」の最寄り駅は、この春、三陸鉄道リアス線全線開通とともに開業した鵜住居駅。駅前には複合施設「うのすまい・トモス」も開業し、駅周辺は大きく様相を変えた。複合施設のひとつ「いのちをつなぐ未来館」は、震災の出来事や教訓を将来に伝えるとともに、災害から未来の命を守るための防災学習を推進するための施設だ。被害の状況や震災直後に起きたことを紹介するコーナーのほか、企画展のコーナーもあり、多い日には500人ほどが訪れる。

「時が経って忘れられつつあるなか、起きたこと、そこから学んだことを、多くの人、特に子どもたちへ伝えていく施設でありたいと思っています」

と同施設の佐々 学さんは話す。

「言葉だけでは伝わりにくいので、子どもたちにも参加しても らって、絵や写真などわかりやすい展示を心がけています」と語る同館の佐々さん。

市街地整備は今年度中に完了

9月25日に釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた「ラグビーワールドカップ2019日本大会」フィジー対ウルグアイ戦。釜石での第2戦、10月13日のナミビア対カナダ戦は台風19号の影響により中止になった。
釜石の復興支援を担当するURの黒田(左)と吉野内。「うのすまい・トモス」の名称には、復興のあかりを「灯す」と「共」「友」が重ねられている。
3月にオープンした「いのちをつなぐ未来館」。

駅前を含む鵜住居の市街地整備(約50ヘクタール)を担当したのは、URだ。釜石市との協力協定のもと、URは市内の鵜住居、片岸(かたぎし)、花露辺(けろべ)の3地区で復興まちづくりを支援してきた。151戸の災害公営住宅整備事業は、すべて完了して引き渡し済。復興市街地整備事業も花露辺は完了、片岸、鵜住居とも今年度内に完了予定。いずれも工事はほぼ終了し、事業はいよいよ終盤を迎えている。

鵜住居は平均1・7メートル嵩上げし、釜石鵜住居復興スタジアムが完成した地にかつてあった小中学校は、宅地よりもさらに高台に移転した。

「道路が広くなり、建物が建って夜にまちに明かりが灯るようになり、スーパーがオープンして……そんな変化ひとつずつに感動しています」

というのは市街地整備を担当するURの吉野内 謙だ。全体の進行が遅れないように気を配りながらも、早期の自宅再建を希望する人には個別に対応し、進めてきた。基盤工事を担当するURの黒田潤貴にとって印象に残っているのは、米作りの再開を希望する人たちの思いに応えるべく、市街地に田んぼを集約させた一角を造ったこと。

「どのように農業用水を引いて、どこに田んぼを作るのがいいのか、いろいろ考えました」

2人とも、東日本大震災の復興支援の仕事も、プレハブの職員宿舎での生活も初めてだったが、苦労よりも、やりがいを感じることのほうが多かったと振り返る。

2019年、ラグビーワールドカップの開催で、ひとつの節目を迎えた釜石。これからどんなまちになっていくのか。UR職員は、期待を抱きながら、終盤の重要な業務に気を引き締めて励む毎日だ。

熊本地震復興NEWS

熊本県嘉島町で災害公営住宅が完成

完成した浮明団地。
荒木泰臣町長からUR九州支社長の太田 潤へ感謝状が渡された。

URは熊本県上益城郡嘉島町(かみましきぐんかしままち)で、平成28年熊本地震からの復興に向けて、町内で建設される4団地すべての災害公営住宅の整備支援を行っている。蔵園(くらぞの)団地(全10戸)と浮明(うきあけ)団地(全9戸)が完成し、8月26日に「嘉島町災害公営住宅落成式」が嘉島町民会館で行われた。式典終了後には浮明団地の内覧会も開催され、木のぬくもりが感じられる戸建て住宅が披露された。残る荒尾(あらお)団地と門ノ久(かどのきゅう)団地については、年内の完成を予定している。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】

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