復興の「今」を見に来て!第4回 Part1
仙台と石巻を結ぶJR仙石(せんせき)線が、東日本大震災から4年2カ月ぶりに全線復旧した。
被害が甚大で運休していた高城町(たかぎまち)駅と陸前小野(りくぜんおの)駅間の運転が再開されたのだ。
5月30日には、UR都市機構が復興まちづくりを支援する石巻市、東松島市の石巻駅と野蒜(のびる)駅で記念式典が開催され、沿線地域は喜びに包まれた。
石巻駅ホームでの「仙石線全線運転再開および仙石東北ライン開業記念式典」は、地元小学生の鼓笛隊演奏でなごやかに始まった。石巻市長や宮城県知事、JR東日本関係者、国会議員など出席者のあいさつや祝辞から、全線再開への期待の大きさが伝わってくる。そして大勢の人々に見守られながら出発した仙石線の車窓には、大漁旗やのぼりを振る地元の方々の笑顔。全線再開にあたって、安全を最優先して山側の高台に新設された野蒜駅のホームからは、遠くに海が見えた。
仙石線は当初予定より4カ月半早く再開した。その要因を東松島市の阿部秀保市長は、JR東日本、UR都市機構をはじめとする工事関係者、市民、行政の連携協力があってこそ実現したものだと記念式典で感謝の意を伝えた。
東松島市と協力協定を結んでいるUR都市機構は、災害公営住宅の建設と防災集団移転による新たなまちづくりを支援している。まちづくりでは、仙石線の鉄軌道敷の造成を優先し、大型ダンプやベルトコンベヤーなどの活用、JRとの綿密な連携により、造成工事を、ひいては仙石線の復旧を加速させたのだ。UR東松島復興支援事務所の清水良祐所長は「やっとひとつのステップを達成できた思いです。新たな仙石線からの景色はいいですよ。野蒜から東名(とうな)駅側を抜けていくと松島湾が広がって」と感慨深く語った。
石巻のまちづくりは新たなステージへ
仙石線全線再開とともに、この日、東北本線を経由して石巻と仙台をより短時間で結ぶ仙石東北ラインも開業した。この快速の走行により、石巻と仙台は最短52分で移動できるようになり、市民の交通の利便性向上だけでなく、沿線一帯の経済や産業、観光の発展に期待が高まっている。
石巻市とも協力協定を結んでいるUR都市機構は、石巻の復興まちづくりを支援。高度な技術が求められる9地区435戸の災害公営住宅の整備と、復興市街地整備事業を担っている。
「災害公営住宅はまさに今が正念場。年内に6地区を引き渡し予定なので最後まで気が抜けません」
と語るのは、UR石巻復興支援事務所住宅計画課の片山滋郎課長。住居の間取りは石巻市の標準プランに沿いつつ、集会所の造りの変更や商店街との連携で1階をギャラリー仕様にするなど、可能な限り地元の人の要望を取り入れてきた。
また、復興市街地整備事業を進める新門脇(しんかどのわき)地区では宅地250戸、災害公営住宅150戸を整備中。宅地はこの秋から順次引き渡し予定だ。通常は一定エリアの道路や上下水道などの整備後に地権者に引き渡すが、昨年末には例外的に一部先行引き渡しも行った。
「90代の女性をはじめ、早期帰還を強く望む地権者の思いを受けて悩みましたが、全体工事を進める上で大きな影響が出ないように調整し、行政と協力して進めました」
と振り返るのは、住民の心に寄り添うことを日頃から心がけているUR石巻復興支援事務所市街地整備課の松原弘明課長。
引き渡した土地にはすでに家が建っている。津波で流され、整備が進められている大地に建つ新築の家。その存在は、周囲の土地を持つ人たちの希望となっている。
石巻へ、東松島へ
宮城県東部に位置する石巻市は、宮城県内第2位の人口を擁する都市。金華山沖は黒潮と親潮がぶつかる貴重な漁場で、全国有数の水産地でもある。
石巻市の南に隣接する東松島市は野蒜海岸や奥松島を抱える風光明媚なまち。
JR仙石東北ラインの開通により、仙台から石巻までの所要時間は約1時間、仙台から東松島の野蒜駅までは約40分に。
石巻市、東松島市の観光・物産などの問合せ
石巻観光協会
TEL:0225-93-6448
東松島市観光物産協会
TEL:0225-87-2322
【妹尾和子=文、青木登=撮影】
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