街に、ルネッサンス UR都市機構

復興の「今」を見に来て!第1回

URPRESS 2014 vol.38 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

復興の「今」を見に来て!

東日本大震災で7割以上の住宅が全半壊し、基幹産業の農林水産業も甚大な被害を受けた東松島市。
復興工事が進むなか、地元産品を扱うアンテナショップが中心となり、地元の魅力再発見と新たな情報発信活動に取り組み活気づいている。

イチゴのような甘みのあるミニトマトに、みずみずしいレタスやカリフラワー、皇室献上品でもある海苔に地元産の米粉を使ったスイーツの数々……。東松島市大曲(おおまがり)地区にある「ふれ愛いちば まちんど」は、東松島の多彩な特産品に出会えるショップだ。豊かな海と大地に育まれた「地場産品の販売」と「情報発信」の拠点であり、人々の重要な交流の場にもなっている。

「ここは津波で壊滅的な被害を受けた地域です。ふるさとを失い、避難先で暮らしている人たちがいつでも戻って来られる場でありたいですし、東松島の特産品を多くの人に知ってもらい、生産者を応援したい」
と語るのは、「まちんど」の伊藤せい子店長。震災を経て、以前は当たり前にあった地元の食の魅力、豊かさに気付かされたという。海苔を見ているお客さんがいれば、「作り手によって味が違うので、ぜひ食べ比べてみてください」と声をかける。

東松島ふれ愛いちばまちんどみんなが笑顔になれる店を目指して地元の魅力を発信中の「まちんど」スタッフ。左から千葉ゆきさん、伊藤せい子店長、立花由貴さん。松島基地所属の航空自衛隊ブルーインパルスのグッズも販売している。

東松島ふれ愛いちば
まちんど

東松島市大曲字寺沼194
TEL:0225-25-6676

東松島ふれ愛いちばまちんど 女性の視点で商品開発に取り組む「のり工房 矢本」のメンバー。左から平塚和子さん、雫石まきさん、津田清美代表、本田千佳子さん。

人気の海苔ドレッシングや味付け海苔などを生産しているのは「のり工房矢本」だ。津波で機械も備品もすべて流され、失意の中にありながら、いち早く業務を再開した。
「なんとか頑張っていますが、ときに迷い、不安になることもあります。そんなとき、お客さんの感想や“この海苔を一度食べたら、他には戻れません”といった声を聞くと、励まされ、また頑張らなきゃと意欲が湧いてくるんです」
同社の津田清美代表の言葉からも、消費者との距離が近く、リアルな反応が得られる「まちんど」が、生産者の応援の場になっているのがよくわかる。

また、景観美を誇る嵯峨渓(さがけい)の遊覧船運航が再開するなど観光サービスも復興しつつあり、東松島では明るい話題が増えている。
「観光もできるようになったので、遊びに来てください。おいしいものを揃えて待ってますので!」
伊藤店長の言葉に、まちんどのスタッフたちが強くうなずいた。

「まちんど」で販売 震災を経てパワーアップ!奥松島のカキは格別です 奥松島水産 阿部晃也さん

奥松島水産 阿部晃也さん

松島のカキは大粒で濃厚、甘みがあるのが特徴です。これは豊かな漁場に加え、先祖からの教えを守りながら、手をかけて育ててこそのものです。
震災後、栽培を手伝ってくれたボランティアさんに「こんなに苦労して、おいしいカキをつくってくれていたんですね」と言われたとき、こんなふうに褒められたことはなかったなあと思いました。震災前、奥松島でカキがとれるのは当たり前だったので。
目指しているのは、カキを中心に東松島の交流人口を増やすことです。震災を変革のチャンスと積極的にとらえ、カキの殻むき体験場を造るなど、夢を実現しながら頑張っています。おかげさまで「まちんど」からご紹介いただいて、県外からのお客さんも増えています。
大事に育てたカキをおいしいと言って食べてくれる人がいる喜び。それこそが原動力です。10月から収穫し始める奥松島の自慢のカキ、ぜひてんぷらで食べてみてください。

ハード・ソフトの両面で協力したい

UR都市機構が、東松島市と復興整備事業の協力協定を締結したのは2012年2月。以来、野蒜(のびる)北部丘陵地区と東矢本(ひがしやもと)駅北地区の復興まちづくりを担当し、津波で被害の大きかった危険区域から移るため、内陸の安全な場所に住宅地を新設する工事を進めている。現地のUR職員が心がけているのは、地元の人の思いを大切にしながら、安全最優先での一日も早い復興の実現だ。

奥松島を抱える野蒜地区では、造成地と海の間に緑地を残し、海からは造成地が隠れるようにするなど自然景観に配慮。膨大な土砂の搬出には、総延長距離1・2kmのベルトコンベヤーを導入し、搬出期間の短縮を図っている。

計画・工事をスムーズに進めるため、UR都市機構・東松島復興支援事務所は、関係機関との調整に日々尽力。常に心にあるのは、ハード面だけでない、東松島の魅力を広く伝え、この地を盛り上げるための協力だ。
「新しいまちづくりで重要になるのは、人やモノのつながりです。そのときに生かせる接点を少しでも増やす協力をしたい。地元産品の紹介もそのひとつです」
と清水良祐同所長は語る。

野蒜地区の宅地の完成予定は2016年度。それに先立って運行再開予定のJR仙石線の移設・再開に向けた造成工事もURが担い、6月末にJRへの土地引き渡しが完了。現場では懸命な作業が続き、復興への歩みを進めている。

左から東松島復興支援事務所の小原正夫総括役、清水良祐所長、大成JVの大塚正行副所長。左から東松島復興支援事務所の小原正夫総括役、清水良祐所長、
大成JVの大塚正行副所長。
92haの広大な宅地開発が進む野蒜北部丘陵の造成地から、ベルトコンベヤーを使って1.2Km先に土砂を搬出。
土砂は海岸の護岸堤防工事や農地の整備に利用される。92haの広大な宅地開発が進む野蒜北部丘陵の造成地から、
ベルトコンベヤーを使って1.2Km先に土砂を搬出。
1日に搬出される土砂は10トントラック1,650台分で、
現場では早朝から日暮れまで途切れることなく作業が続けられている。
土砂は海岸の護岸堤防工事や農地の整備に利用される。
東矢本駅北地区の現場では、災害公営住宅の建設が進行中。
第1期として47世帯が今年11月に入居予定だ。

東松島へ

仙台市から北東に約30kmの距離にある東松島市は、奥松島を抱える風光明媚なまち。仙台から東松島まで車で約1時間。JR仙石線は震災の影響で一部区間で運転を見合わせており、仙石線の松島海岸駅から臨時代行バスが運行している。

東松島市観光物産協会©奥松島公社
遊覧船の問合せは
TEL:0225-86-1511

東松島の観光・物産の問合せ

東松島市観光物産協会
TEL:0225-87-2322

嵯峨渓の遊覧船観光では、風光明媚な奥松島の景観を楽しめる。

東松島市

動画

「みんなが笑顔になれる店にしたい」地元の魅力を発信中

東松島ふれ愛いちば「まちんど」店長 伊藤せい子さん

震災を経てパワーアップ!「奥松島のカキは格別です」

奥松島水産 阿部晃也さん

一日も早い完成を目指して!

宮城県東松島市の復興まちづくり

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