【URのまちづくり最前線 第12回】蘇我特定地区 防災公園街区整備事業(千葉市中央区)前編
広域防災拠点の役目を担う多種多彩な「蘇我スポーツ公園」
「蘇我副都心」として新たなまちづくりが進められる蘇我臨海部の一角に、千葉市内はもとより全国から人が集まる蘇我スポーツ公園がある。
ここはURが携わる防災公園の中でも最大規模の公園だ。
JR外房線と内房線の結節点である蘇我駅から海側へ向かって歩くこと約10分、蘇我スポーツ公園の入口に到着。スポーツ公園内を歩き始めて、まずはその広さに驚いた。
46ヘクタールという広大な敷地には、サッカーの「ジェフユナイテッド市原・千葉」のホームスタジアムでもある「フクダ電子アリーナ」をはじめ、サッカーやフットサル、ラグビーなどができる広場やテニスコート、少年軟式野球やソフトボールができるグラウンド、子どもたちが自由に遊べる遊具広場……と多様なスポーツ施設がある。特に週末には、自ら体を動かす近隣の人たちはもとより、スポーツ観戦や全国規模の大会への出場者、イベント参加者など、全国各地から大勢の人がやってくる。5月の連休に音楽イベント「JAPAN JAM 2019」が開催された際には、3日間で11万もの人が訪れた。
大規模な災害発生時には広域防災拠点に
千葉市のスポーツ振興の拠点であり、多様化するレクリエーション需要に応えるこの公園、じつは知る人ぞ知る防災公園でもある。
「ふだんはスポーツに特化した公園ですが、大規模な災害が発生したときには、広域防災拠点となり、救援、復旧、復興のための後方支援型活動拠点としての重要な役割を担っているのです」
と千葉市公園建設課の山口健太郎さんは説明する。そのため物資の備蓄・集積スペースやヘリポートを設け、広域消防隊や自衛隊の利用も想定した、さまざまな機能が整備されている。また、フクダ電子アリーナは津波避難ビルにも指定されているという。
20年近い年月をかけて段階的に整備
もともと製鉄所だった跡地を、千葉都心、幕張新都心に次ぐ蘇我副都心として有効活用するため、千葉市が中心となってまちづくりを進めてきた。URは千葉市からの要請を受けて、2002(平成14)年から防災公園街区整備事業として「土地区画整理」「街路整備」「都市公園」の3つの事業を千葉市とともに推進。用地を取得して「防災公園の整備」と「周辺市街地の整備」を一体的に実施。主にコーディネートする立場として、培ってきたノウハウを活かして提案や関係機関との調整を行い、必要な防災機能の確保と防災性の向上に向けて尽力してきた。「スポーツに特化して、さらに防災拠点の機能ももつ、これだけの規模の公園を造るのは、市としても初めて。URさんと綿密なやりとりをして進めています」と千葉市公園建設課の関和隆二さん。
事業スタートから年月を経ているのは、工事用地が段階的に遊休化するのに合わせて各事業を整備し、また海が近いため高潮対策の大規模な盛土造成工事が必要だったことが大きい。
「盛土造成にあたっては、ICTという情報通信技術を活用して、工期の短縮やコスト削減など効率的な施工に取り組みました。千葉市の方々のこの公園を積極的に活用していきたいという思いに応えるべく頑張っています」
と話すのは、基盤整備を担当するURの大崎貴弘。事業調整を担当するURの光田真貴子は、施設をつくることに加え、適正に利用してもらうための調整にも心を配っている。
「全国各地から大勢の人が集まる大会やイベントが開かれることもあり、この公園は事業中ながらも多種多様な使われ方をしますので、千葉市と安全確保を第一に円滑な調整を心がけています」
現在も整備が続いている蘇我スポーツ公園。今年8月には「フクダ電子スタジアム」がオープンした。20年かけて整備を進めてきた事業も残すところあと2年、2021年度にはすべてが完成する予定だ。若者に人気のスケートが楽しめるスケートパークのオープンへの期待も高まっている。
「千葉はスポーツが盛んな地域でもあり、いろいろな施設も整備されているので、もっともっとたくさんの人に公園を利用してもらいたいですね」と千葉市の関和さん。
URのメンバーは、これからの世代を担う若者たちにも利用してもらえるように、ハードだけでなくソフト面での提案やサポートにも力を注ぐ。利用者、そして千葉市の方々に寄り添いながら、公園づくりが日々進められている。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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