街に、ルネッサンス UR都市機構

URのまちづくり最前線 第7回

 URPRESS 2018 vol.53 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

青陵の街・六本松(九州大学六本松キャンパス跡地)福岡市中央区
キャンパス跡地に完成した地域と共に育ち、未来へ続くまち

福岡で今、話題のスポットといえば「青陵(せいりょう)の街・六本松」。
福岡市の中心地、天神から西へ約2・5キロメートル、地下鉄六本松駅近くに昨年誕生したまちだ。
URはこのまちづくりにスタート当初から関わってきた。
ここでURは持続可能な多世代交流型のまちづくりに挑戦している。
上空から見た「青陵の街・六本松」のまち。写真では手前が北側になる。写真提供:福岡市(撮影:福岡市消防局)

幅広い年代に人気の新たなまちが誕生

注目のスポット「青陵の街・六本松」は地下鉄七隈線の六本松駅の目の前に広がる。駅と国道に近い北側には、スーパーや飲食店、福岡市科学館などが入る複合商業施設「六本松421」のほか、有料老人ホームや分譲マンションなどが建つ。南側には裁判所、検察庁、弁護士会館の建設が進められている。

話題の飲食店や瀟洒なショップが集まる「六本松421」は地元のテレビ番組や情報誌でたびたび紹介され、行列が絶えない人気店も。平日は出勤前にコーヒーを飲むサラリーマンやランチを目当てに訪れる女性たち、公園や科学館で過ごす親子連れなどの姿があちこちに。週末は六本松駅の改札から列をなすほどの人出で、プラネタリウムのある福岡市科学館は年間目標であった入場者数50万人を、昨年10月に開館して以来わずか4カ月で達成した。

もともと六本松地区は交通の要衝として栄えてきた地。福岡城跡を取り囲む舞鶴公園や大濠公園にも近く、自然豊かでありながら、市内中心地へのアクセスも便利。植物園や美術館、能楽堂などの文化施設も多いとあって人気のまちだ。
なかでも文教地区・六本松のシンボルだったのが九州大学の六本松キャンパス。1921(大正10)年に旧制福岡高等学校として創立されて以来、まちの人たちに親しまれてきた。

正面に見えるのが2017年秋にオープンした「六本松421」。外観デザインは水戸岡鋭治氏が担当。商業施設をはじめ福岡市科学館、九州大学法科大学院、有料老人ホーム、医療機関などが集まっている。

そのキャンパスが2009年に市内の伊都地区へ移転。跡地に誕生したのが「青陵の街・六本松」である。URは2010年に6・5ヘクタールに及ぶこの跡地を一括購入して再開発を担当。福岡市や地元の方々、関係機関と連携しながらコンセプトやガイドラインを決定。建物の解体から整地、道路や区画整理、落札者への譲渡、公園の整備などを行ってきた。
「福岡の市街地でこの広さの土地が出ることは珍しく、跡地の活用には福岡市はもちろん市民や九州大学の卒業生を含む多くの関係者が注目していました」

とUR九州支社の岩田 樹(たつき)は説明する。なかでも強い思いをもっていたのが、地元である六本松草ヶ江地区の方々だ。
「大学関係者が5000名ほどいましたから、下宿や飲食店などは死活問題ですし、まちの中心である跡地がどうなるのか非常に不安でした」

そう話すのは、地元で薬局を営み、草ヶ江校区まちづくり協議会会長を務める小松至誠(しせい)さん。そもそも協議会自体、キャンパス移転の話が出たのを機に1995年に立ち上げられたのだという。

勉強しながらまちづくりを進めてきたという草ヶ江校区まちづくり協議会の小松至誠会長。「新旧のまちが刺激し合いながら発展していきたいですね」
関係者の調整に尽力するURの岩田 樹。「最近は地元の方が博多弁で話してくれるようになりました」と喜ぶ。
URの仕事は目に見えにくいが、まちの方々の提案で、遊歩道のタイルにロゴが刻まれた。
キャンパスにあった樹木やモニュメントを残すことにもこだわった。青陵という言葉には「希望にあふれた若者を育てる緑豊かな丘」という意味があり、旧制福岡高等学校時代に使われていたその言葉をまちの名に。

交流の場となる恒久的、総合的なまちを

草ヶ江校区まちづくり協議会が強く要望したのは、一括売却しての恒久的、総合的なまちづくり。「乱開発はまちにとって致命的」と分割売却を恐れたのだ。
「URさんが一括購入予定と聞いたときはホッとしました。そして何年にもわたる会合にURさんが毎回参加してくれたのはありがたかったし、公共空間を30%確保しましょうと思い切った提案をしてくれたときは、うれしかったですね」
と小松会長は振り返る。まちづくりのコンセプト作成にあたっては、URが中心となって委員会を設置し、福岡市や関係機関はもとより、さまざまな分野の専門家や地域の方々に意見を聞きながら話し合いを重ね、方針を決定。最終的に「人がいきいきと交流し理性を育む、四季を感じる、賑わいと良心がふれあう街」というコンセプトに固まった。

駅や国道に面した北側は一括してJR九州が落札し、前述の複合商業施設や分譲マンションなどを開発。南側には司法関連施設を集約する。住む人、来る人、働く人など、地区内外から利用しやすいように、シンボル的な並木道や公園を敷地内に設けるなど、URが培ってきたノウハウを注入。関係機関の協力を得て、開放感、統一感のあるまちが完成した。「まちはつくって終わりではなく、これからのまちづくりが重要だと思っています」と語る小松会長。その言葉にうなずくURの岩田は、現在も何か問題などがあればすぐに現場に赴き、関係各所との情報共有を心がけている。URはオブザーバー的な存在として、「青陵の街・六本松」のまちづくりに今も関わり続けている。

【妹尾 和子=文、青木 登=撮影】

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