URのまちづくり最前線 第3回
荒川二・四・七丁目地区 東京都荒川区
区とともに、木造住宅密集地を安全なまちに変える
京成電鉄と東京メトロ千代田線が交差する町屋駅から徒歩約10分。
古い木造住宅が密集する「荒川二・四・七丁目地区」で、荒川区とUR都市機構、東京都が連携して、燃えない・燃え広がらないまちをつくる取り組みが進んでいる。
積み上げたノウハウで荒川区をお手伝い
町屋駅から南に歩き出すと、まもなくビルは姿を消し、木造住宅や小さな工場が肩を寄せ合うように集まるまちに入る。人がやっとすれ違えるほどの細い路地を挟んで住宅が向かい合い、玄関先にはたくさんの植木鉢。ここが「荒川二・四・七丁目地区」。木造住宅密集地域(木密地域)の改善を図るため、東京都が指定した不燃化特区の一つだ。ここは築30年以上の木造の建物が約4割を占めており、荒川区では平成32年度までに地区内の不燃領域率を特区指定時の58・4%から70%に引き上げ、「燃えない・燃え広がらないまち」の実現を目指している。
「私たちがこれまで培ってきた密集市街地整備のノウハウを生かし、いくつもの手法を取り入れて荒川区のお手伝いをしています」とUR都市機構で密集市街地の整備を担当する中山裕子が説明する。
荒川区がUR都市機構と連携して進めるのは、(1)主要生活道路の幅を広くして避難路を確保 (2)従前居住者用賃貸住宅の確保 (3)不燃建築物への建て替え促進 (4)老朽化した住宅の除却の取り組みなどで、東京都もこの一角に、幅25メートルの都市計画道路整備を始めている。
賃貸住宅の建設や不燃化のための土地取得
不燃化特区のコア事業のひとつが、従前居住者用賃貸住宅の建設。これは道路拡張などで移転しなければならない居住者向けの賃貸住宅で、UR都市機構が都営住宅跡地を取得して賃貸住宅「コンフォール町屋」を建設し、管理している。高齢の1人暮らしの方が多いと見込んで、1Kの間取りを増やしている。必要な戸数分を荒川区が借り上げて、移転対象者に提供し、2015(平成27)年4月から入居が始まった。
「コンフォール町屋」の周囲は道路が拡幅され、隣には区立図書館や子ども施設を含む複合施設の建設が進んでいる。まちの人々にとって、不燃化が進み、まちが変わりつつあることを実感できるエリアとなっている。
UR都市機構独自の取り組みに、木密エリア不燃化促進事業がある。これは荒川区の要請を受けてUR都市機構が地区内の土地を取得し、周辺の不燃化建て替えや道路整備の代替地などに活用するのが目的だ。
「土地を買う場合も、中立・公平なURは地権者の立場に立って考え、この土地を必ず不燃化促進のために使うという信用を得られるのが強みかもしれません」と中山はいう。
「ここで生まれた空地は、いずれ住宅を建てたり、道路の一部に使われるのですが、それまでの間、この空地をどうするか。地元の防災まちづくり協議会の皆さんで話し合い、土地利用のルールを決めていったのです。これは自分たちのまちを考える人が増える、よいきっかけになりました」と話すのは、荒川区防災街づくり担当係長の大内武彦さん。
古くからの住民が多く、コミュニティーは濃密だが、これまではどちらかというと役所任せの一面があったという。不燃化推進に伴う変化のなかで、自分たちのまちについて主体的に考えるようになったという。
また、老朽化した建物の除却も大きな問題で、特に空き家となったまま放置され危険な状態の住宅は持ち主を探し出し、除却の助成金や、固定資産税減額といった不燃化特区の特例を説明。UR都市機構は区の担当者とともに除却に向けた働きかけを地道に行っている。
他にも、主要生活道路の幅を6メートルに広げる用地取得の交渉支援や防災まちづくり協議会の活動支援など、荒川区のマンパワーの不足を補いながら、UR都市機構は燃えないまち・燃え広がらないまちづくりに取り組んでいる。
地元の防災まちづくり協議会の会長を務める安部義治さんは、お祭りを核として、地元の人々の結びつきが強いと話す。
「地域で高齢の方の見守りをしていますし、防災訓練も行っています。災害に弱い自分たちのまちをよくしたいという思いを、皆が持っています。ですから今、区とURさんが進めている取り組みに、皆、大いに期待しています」
【武田ちよこ=文、佐藤慎吾=撮影】
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