街に、ルネッサンス UR都市機構

URのまちづくり最前線 第2回

URPRESS 2016 vol.47 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

大手町川端緑道 東京都千代田区
オフィスと水辺をつなぐ緑道からまちを”育てる”提案を

日本経済の中心的な役割を担う大手町。今月7月には高級日本旅館「星のや東京」がオープンして、話題を集めている。この大規模エリアの再開発にあたり、UR都市機構は仕組みづくりから参加し、区画整理や再開発などの事業を実施。大手町をより魅力的なまちに育てる活動にも力を注ぐ。
ランチを求める人たちでにぎわう大手町川端緑道は、幅12メートル、長さ800メートル。
歴史が感じられる上品な舗装が施され、高架下を流れる日本橋川に向けてベンチが配置されている。

平日の昼ともなれば、キッチンカーがずらりと並び、ランチを買い求めるオフィスワーカーたちが行列をなす。緑の植え込みとゆったりとしたベンチが随所に設置され、天気の良い日には寝転んで、くつろぎたくなる。そんなオアシスのような空間が、ビジネス街の大手町で生まれつつある。

「人の景色」が見える有機的なまちづくりを

数多くのオフィスビルが集中する大手町エリアでは、老朽化した建物を計画的に順次建て替えていく連鎖型都市再生プロジェクトが進められている。東京都、千代田区、そして多くの民間企業が関わるこのプロジェクトに、UR都市機構は公平・中立な立場で計画の策定から参加。培ってきたノウハウや経験を生かしながら土地区画整理事業などを行っている。

このプロジェクトの一環として、首都高速道路の下を流れる日本橋川に沿って続く千代田区の公道の一部が、歩行者専用道「大手町川端緑道」に整備されたのは、2014年春のことだ。竣工と同時に千代田区に引き渡され、現在は民間のエリアマネジメント団体が維持管理しているが、話はそこで終わらない。大手町フィナンシャルシティエリアの一角に位置するこの川端緑道の活用をめぐり、UR都市機構はソフト支援も行っている。
「少し前まで都市開発やまちづくりの役割は“つくる”が中心でしたが、これからはつくった場所を〝育てる〟ことが重要。まちづくりとは単なる空間整備ではなく、“人の景色”をつくることだと思います。それには、大手町で働いている皆さんに、川端緑道をより魅力的な空間へ育てるための一員になっていただけたらと考えたのです」

こう説明するのは、UR都市機構東日本都市再生本部都心業務部 大手町第1チームの田嶋靖夫だ。プロジェクト名は「大手町川端緑道プレイスメイキング社会実験」。プレイスメイキングとは、「場の創造」という意味だが、いったいどんな実験を行うのだろう。

社会実験の第1弾として、2015年11月、UR都市機構と、世界的都市デザイナーのヤン・ゲール氏が主宰するゲール・アーキテクツ社がコラボレートして、ユニークな社会実験を実施した。ひとつは、ランチタイムにテーブルや椅子を実験的に並べて川端緑道における人の動きがどう変化するかを見るなど、さまざまな観点から、人の流れや行動を観察する環境改善調査。もうひとつは、川端緑道の将来像を多様なイメージ写真の中から選んでもらい、将来どんな空間になってほしいか、来訪者の声を集めて「見える化」するワークショップの開催だ。

2015年のワークショップ開催時の大手町川端緑道。周辺で暮らし、働く大勢の人が集まった。歩行者が思い思いに楽しむという「人のアクティビティ」が加わることで、生きた空間に変貌する様子がうかがえた。
大手町の事業を担当する田嶋靖夫(左)と、UR都市機構による各地の事業を横断的にみている秋山仁雄(左)「川端緑道の有効活用により、将来的に大手町が神田や日本橋とも人の流れで有機的につながるまちになれば」と語る。大手町の事業を担当する田嶋靖夫(左)と、UR都市機構による各地の事業を横断的にみている秋山仁雄(左)
「川端緑道の有効活用により、将来的に大手町が神田や日本橋とも人の流れで有機的につながるまちになれば」と語る。

大手町の新たなくつろぎ空間を目指して

2016年2月に実施された、プロジェクターによる照射実験では、首都高速道路の高架下を野外スクリーンに見立て、プロジェクションアートを映写。夜の川端緑道が幻想空間に変身した。

田嶋と共に取り組む、東日本都市再生本部事業企画部 事業企画統括グループの秋山仁雄は次のように振り返る。
「“こんな場所があったらいいよね”という声が集まり、“大手町は自分にとって大事なまち”という意識が見てとれたのが、一番の収穫です。まちづくりのプロセスを、このエリアで働く人々と共有する重要性も感じました」

その後、川端緑道沿いの大手町フィナンシャルシティのアトリウムを会場に、シンポジウムも主催。都市環境づくりに関わる各界の有識者らが、川端緑道のあるべき将来像を示唆する、貴重なディスカッションを繰り広げた。

また2016年2月には、UR都市機構と、水辺の有効活用を提唱する「ミズベリングプロジェクト事務局」、地元のエリアマネジメント団体の3者がタッグを組み、高架下の暗いイメージを逆転の発想で活用し、首都高速道路の橋桁にプロジェクションアートを映写する実験も行った。
「海外の金融ビジネス街には大抵、人が集まり、くつろげる公共空間が用意されています。そこは新しい出会いや情報交換の場であり、ビジネスチャンスが生まれる場所。日本経済の中心地である大手町の足元にある、川端緑道の空間を活用しないのはもったいない」と、田嶋と秋山が声を揃えて言う。

今はまだ、知る人ぞ知る大手町の新名所だが、UR都市機構では、川端緑道の存在をより多くの人に認知・活用してもらうため、今後も社会実験と調査・分析を継続していく予定。川端緑道を含む大手町エリアの新たな可能性を探求し、魅力的なまちづくりへの提案を続ける。

公共R不動産とのトークイベントも開催


2016年7月29日、公共R不動産とUR都市機構のコラボレーション・トークイベント「パブリックライフと公共空間のこれから」が東京都千代田区の「アーツ千代田3331」で開催された。公共R不動産ディレクターの馬場正尊氏、ヤン・ゲール著『パブリックライフ学入門』の翻訳を手掛けた東京大学准教授の中島直人氏、「官能都市」レポートを発表したHOME'S総研所長の島原万丈氏が、「歩行者」や「人のアクティビティ」を中心に据えた都市の在り方をめぐり、闊達なトークセッションを展開した。

後半では、UR都市機構の秋山も登壇し、大手町川端緑道プレイスメイキング社会実験の概要やURが各地で進めるエリアマネジメント・プレイスメイキングの取り組みについて紹介した。

【武田ちよこ=文、佐藤慎吾=撮影】

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