街に、ルネッサンス UR都市機構

URのまちづくり最前線 第4回

URPRESS 2017 vol.49 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

飯塚本町東土地区画整理事業 福岡県飯塚市
火災で失われた中心市街地が20年後もにぎわうために

炭鉱のまちとして栄えた飯塚市の中心街が、大規模な火災に見舞われたのは9年前。
ここに新たなにぎわいのあるまちをつくり出そうとUR都市機構は飯塚市とともに土地区画整理事業に取り組んだ。
施行後
平成28年10月に撮影した施行後の本町東地区。赤い線の内側が、土地区画整理事業エリア。

店舗密集地を火災が襲った

福岡県のほぼ中央に位置する飯塚市は、かつて筑豊炭田の中心都市として栄えたまち。しかし、昭和30年代以降、炭鉱の閉山によって人口は減少。市内を流れる遠賀(おんが)川の西側に広がる古くからの中心市街地は、郊外型大規模小売店に客をとられ、空き店舗が目立つようになっていた。さらに平成15年には洪水被害、平成20年には小さな飲食店が密集していた飯塚本町で約4000m2を焼失する大火災が起こり、まちの風景は一変した。

平成18年3月の1市4町の合併を機に、コンパクトなまちづくりへの転換を掲げていた飯塚市では、中心市街地活性化事業を進めるなかで、焼失した一帯と周辺ににぎわいを取り戻す「飯塚本町東土地区画整理事業」に取り組むことを決定。

「しかし、飯塚市には土地区画整理事業の経験がなく、専門の部署もなければ、マンパワーもありません。そこで福岡県とお付き合いのあったUR都市機構に支援をお願いしました」と、この事業を担当した飯塚市企画調整部の中村洋一課長は振り返る。

UR都市機構九州支社で、平成24年の本事業の立ち上げから担当したのは、飯塚都市再生事務所の岩井 創(はじめ)だ。
「飯塚市とは、10年後、20年後もにぎわいが続くまちをつくろうということで合意し、平成25年からは同じフロアに事務所を構え、市とともにこの事業を推進してきました」

施行前
平成25年9月に撮影した施行前の本町東地区。
連日親子連れでにぎわっている「子育てひろば」の前に立つ、右から飯塚市場商業協同組合理事長の野中憲一さん、飯塚市の中村洋一課長、UR都市機構の岩井。

中立的立場でアドバイス

UR都市機構と飯塚市は、権利者たちと勉強会を立ち上げるとともに、被災した権利者の意向調査を始めた。約110名いる権利者のもとを市の担当者とともに1軒ずつ訪ね、それぞれの事情と意向を丁寧に聞き取っていくのだ。

土地を売りたい人、事業を継続したい人など、各人の意向がわかってきたところで、UR都市機構は、分譲マンション、子育てひろば、商業ゾーンで構成するフレーム提案を行った。
「私の仕事は、市の担当者がスムーズに仕事を進められるよう準備をし、市の仕事をバックアップすること。権利者には高齢者も多く、自分たちがこれからどうなるのか、不安に思う方も多くいらっしゃいました。

そのような方に補償費や移転先のことなどをかみくだいて説明し、率先して情報を提供するよう、市と調整していきました」と岩井が言う。

それからも市の担当者と、文字通り二人三脚で権利者のもとに何度も足を運んだ。権利者一人ひとりの意見を聞き、それをどう反映させるかということに心を砕きながら、各人の希望に沿うかたちで土地を整理。ついに昨年7月、当初の予定通り事業は完了した。10月には分譲マンションも完成し、新たに数十世帯がこのまちに住み始めた。子育てひろばは当初の計画を上回る、毎日110人ほどの利用者でにぎわっている。

A施行前
A施行後 分譲マンションを建設。
B施行前
B施行後 道幅が広くなり、安全なまちになった。

事業終了が本当のスタート

スタートからこの事業を担当した中村課長が一番誇りに思うのは、予定通りに事業を終了させることができたことだという。
「URさんに協力してもらって、本当によかったと思っています。URは中立的な立場で物事を進めていけるのが強み。権利者に対しても、その中立的な立場から専門的にアドバイスされるので、相手の方も安心してスムーズに話を進めることができました」

この一角で「飯塚公設市場」を経営していた野中憲一さんは、「火災が起こる前から、自分たちの店舗だけでなく、このまち全体が変わる必要があると危機感を抱いていた」と話す。

そこに火災が起こり、市とUR都市機構から再開発の話がきたときには、前向きに協力したという。だが、野中さんはどのような形で商売を再建するか、まだ決めかねている。
「これからのこの地域に合った商店とは、どういう形なのか。地域の人に求められるものをつくろうと、模索しているところです」と野中さん。

このまちの本当の活性化は、今がスタート地点。ハードは整った。中村課長は、高齢者だけでなく、市内に3校ある大学との連携や、新たな住民、子育て世代の人々も巻き込んで、コミュニティーの場として商店街が楽しいゾーンになるよう、これからもまちづくりを応援するつもりだという。

焼失後の様子。
新しくなった本町東地区。

【武田ちよこ=文、写真提供=飯塚市、佐藤慎吾=人物撮影】

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