URのまちづくり最前線 第6回
二葉の里土地区画整理事業、関連公共施設整備 広島県広島市
生まれ変わった広島駅周辺が新たなにぎわいのまちになる
広島県の陸の玄関口であるJR広島駅周辺が、大きな変貌を遂げている。
駅の南北を貫く広くて明るい自由通路が完成し、新幹線口にはペデストリアンデッキと広場、そして新たなまち「二葉の里」が誕生して、人の流れが変わってきた。そのにぎわいを生む現場にURがいる。
劇的に変化した広島駅新幹線口
「お盆や年末に故郷の広島駅に帰ってきた人たちが、新しくなったペデストリアンデッキから広場を眺めて、『うわぁー、変わったなあ』と驚かれる光景をよく見かけます。達成感を感じる瞬間です」
UR広島都市再生事務所で業務を担当した吉江達也が笑顔でこう話す。
今回紹介するURのまちづくりの舞台は、中四国最大の都市である広島市のJR広島駅周辺だ。かつて駅北側の新幹線口の先には国や国鉄の官舎、鉄道病院や事務所があり、2005(平成17)年にその一部が更地になってからは、およそ県庁所在地の駅前とは思えない寂しさだったという。
中国財務局、広島県、広島市、JR西日本、URは、広島の玄関口にふさわしいまちづくりを目指して計画を策定。URは10年に施行者として新幹線口に隣接した二葉の里土地区画整理事業に着手した。土地区画整理事業とは、土地の形状を整え、道路や下水、公園などを整備して地権者に返す事業。大部分が国有地だったこの事業は、14年に完了した。
広島市道路交通局の技師・黒岩祥太さんは「全国で実績のあるURさんにお願いしてよかったと思っています。広島市だけでは、これだけ短期間で事業を完成させられなかったでしょう」と話す。
現在、この二葉の里には広島テレビをはじめ地元企業の本社ビル、病院や専門学校などが建ち、IKEAも出店を予定。新たな人の流れが生まれ始めた。
北側には約700メートルにわたって「二葉の里歴史の散歩道」が整備された。
「ここから二葉山のふもと一帯には、原爆から生き残った歴史ある寺社が集まっています。地元の方々とワークショップを開き、どのような公園緑地がよいかを話し合い、歴史ある寺社をめぐる散歩道と公園を整備しました。地元の皆さんにも好評です」と吉江。公園では地元主催のイベントも開催されている。
三者が緊密に連携し駅のにぎわいを創出
次にURは広島市からの受託による関連公共施設整備に着手。二葉の里に続く新幹線口広場を整備し、ペデストリアンデッキを設置、そして駅の南北をつなぐ広島駅自由通路を整備する事業だ。これは広島市、JR西日本とURの三者が協力して行った。
ここでURはおもにペデストリアンデッキと新幹線口広場の施工を担当。自由通路はJR西日本に工事委託し、三者が緊密に連携しながら工事は進んだ。
「広島市が設計した図面をもとに、施工計画を立て、広島市、JR西日本と調整を重ねながら工事を進めます。週1回の定例ミーティングはもちろん、事あるごとに三者で打ち合わせを重ね、ジグソーパズルのピースをはめていくように、一つひとつの作業を進めていきました」
幹線道路をまたぐペデストリアンデッキの橋の部分は、道路を長時間通行止めにできないため、一晩で架橋工事を完了しなくてはならない。地元や交通事業者などにも工事の計画を伝え、何カ月も前から準備を整えた。
特に夜間の架橋や舗装工事などのときには、どんな事態にも対応できるよう体制を整えた。
「じつはURが広島で都市再生の仕事をさせてもらうのは初めてのこと。広島市やJR西日本との信頼関係にもとづくパートナーシップがあってこそ、工事を進めることができた」と吉江が言えば、広島市の黒岩さんは、「市は公共事業は得意ですが、URさんにはこれまで手がけた大規模プロジェクトのノウハウがあります。それぞれの得意な分野で連携しながら、スムーズに事業を進めることができました」と振り返る。
工事は順調に進み、昨年10月末に三つの施設は完成した。
「完成記念式典を広島市とJR西日本、それにURの三者でやろうと言っていただいたとき、これまでの努力が報われたと素直にうれしかったです」と吉江。
広島市は古くからの中心地である紙屋町、八丁堀地区と広島駅周辺の2カ所を結ぶ「楕円形の都心づくり」を構想している。二つのエリアが刺激しあって、周辺のまちを巻き込みながら、広島市がますます発展することが目標だ。
その実現に向けて広島駅周辺ににぎわいを生み出すことは、広島市の未来のために意義のある大切なURの仕事なのだ。
【武田ちよこ=文、青木 登=撮影】
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