復興の「今」を見に来て!第12回 Part1
女川町 「オール女川」パワーで親睦を深め、復興に励む!
牡鹿半島の付け根に位置し、女川湾を抱くように広がる女川町。東日本大震災で約7割の住宅が全壊したこのまちは、もともと平地が1割にも満たないため、山を切り崩しながら造成・建設工事を続けてきた。
今も復興工事の音が響き続けるなか、昨年11月25日に災害公営住宅の桜ケ丘東住宅が完成し、入居式が行われた。高台に建つ桜ケ丘東住宅のエントランスホールで開かれた入居式で、女川町の須田善明町長は「ここからはまちを一望できるので、完成していく様子、まちのこれからを一緒に見守っていただきたい」と入居者の方々へ語りかけた。
入居者代表として鍵を受け取った阿部金一・みつ子さんご夫妻は、仮設住宅での生活を経ての入居。待ちこがれた新生活を前に「自分から積極的に声をかけて皆さんと仲良く暮らしていきたいと思っています」と声を弾ませた。
同じく仮設住宅からの岡利恵さんは家族5人で入居。震災の年に生まれた娘のあさひちゃんは、新居のゆったりとしたクローゼットを見て、「ここ、私の部屋!」と言って喜んでいるそうだ。
桜ケ丘東住宅は、URが女川町で建設を担当した災害公営住宅としては5カ所目。
バルコニーが広く、玄関には見守りと採光の役目を果たす明かり取り窓が設置されている。
また、屋外広場やエントランス、各階エレベーター前など数カ所に、ベンチを置いたコミュニティースペースが設けられているのもURが担当した災害公営住宅の特徴だ。これらの配慮は、「建てて終わりではなく、住民の方々のコミュニティー形成に少しでも貢献したい」というUR側の思いのもとで実現したものだ。
「最初にコミュニティースペースの計画を聞いたときは、災害公営住宅にはぜいたくなように思ったのですが、完成したスペースに入居者が集う様子を見て、つくってよかったと感じています」と話すのは女川町町民生活課の三浦浩技術補佐。経験豊富なURのノウハウやアドバイスなしでは女川町の復興はなしえなかったと語る。
事前の入居説明会で入居予定の方に共同制作してもらったスペインタイルの壁画をエントランス部に掲示したのも、親睦を深めてもらいたいというUR側の提案から実現した。
豊かな景観を取り戻したい
桜ケ丘東住宅の入居式と同じ日の午後、女川住宅では桜の植樹会が行われた。こちらもURが建設を担当した災害公営住宅で、ひと足早く昨年7月末に入居式を終えている。今回は「女川桜守りの会」から寄贈された11本の桜を敷地内に植樹するのが目的。須田善明町長のあいさつのあと、女川桜守りの会の加納純一郎副会長とUR宮城・福島震災復興支援本部長の佐分英治も参加して植樹した。女川町では東日本大震災で色がなくなったまちに、みんなの手で豊かな景観を取り戻そう、次の世代につなぐ美しいまちをつくろうと、10万本を目標にサクラの植樹活動を続けているのだ。
植樹会の後には「女川北区交流会」が開かれ、住民有志による豚汁や焼きそばの提供のほか、住民の方々の親睦を深めるためのビンゴゲームや出し物も。 そこには式典を終えてひと息ついた女川町の職員の方々とUR職員が談笑する姿もあった。
「女川の人はあたたかく、町役場の人との距離も近い。すぐに顔見知りになるし、“ありがとう”“お疲れさま”といった言葉をよくかけてもらえます」と佐藤嘉晃をはじめ女川町の住宅計画担当のUR職員は口を揃える。その背景には、日頃から電話やメールで済ませず、役場に出向いて顔を合わせて話すなど、コミュニケーションを円滑にするための努力を双方で続けてきたからこその信頼関係があるのだろう。
「オール女川」で頑張ってきたし、これからも頑張りたいと話す、町の職員とURメンバー。その結束の強さを感じた1日だった。
【妹尾和子=文、青木登=撮影】
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