復興の「今」を見に来て!第12回 Part2

大槌町 節目の日を迎え新たな生活のステージへ
岩手県の沿岸部に位置する大槌町。沖合にはNHKの人形劇『ひょっこりひょうたん島』のモデルとなったといわれる蓬莱島(ほうらいじま)が浮かぶこのまちの復興にも、URは力を注いできた。URが主に担ったのは中心市街地である町方地区再生のための土地区画整理事業と、243戸に及ぶ町内8地区の災害公営住宅の建設だ。まちの主な機能が集中する町方地区では、全体を平均で2・2メートルかさ上げし、旧市街地を山側に集約。面積もほぼ半分に縮小して、安全かつコンパクトで暮らしやすいまちづくりが進められてきた。
2017年の11月30日には、町方地区の市街地整備事業関連工事がすべて完了。12月15日に最後の災害公営住宅の引き渡しも終え、大槌町におけるURの役割はひと区切り。これでURが岩手県沿岸部で手がけた災害公営住宅もすべて引き渡しを終えるという大きな節目を迎えた。
「今は、スケジュール通りに土地をお返しすることができて、とにかくホッとしています」と安堵の表情を見せるのは、市街地整備を担当したURの村上良介だ。「この現場に来て3年になりますが、寝ても覚めても復興の中にいる生活でした。日ごとに事務所から見る景色が変わっていったのが感慨深いですね」と話す。
基盤工事を担当したURの小出裕之も「町や県をはじめ、工事関係者と我々URが息を合わせて事業を推進できた。それが厳しい設定もクリアできた鍵になったように思います」と肩をなでおろす。
「URが市街地整備事業と災害公営住宅の両方を担うことで、道路などのインフラと住宅を同時に完成させ、最短で入居できるメリットは大きかったと思います」と語るのはURの住宅担当の誂子(あつらご)広だ。岩手県出身で、「UR職員としての定年前の決算に」と志望して赴任。「猛烈に忙しかったが、この仕事に携わってよかった」と語る。
こうしたURの働きを、大槌町復興局復興推進課の中野智洋課長は「震災で町の技術系職員をほとんど失ったところからのスタートでした。瓦礫撤去を行いながらの事業で、大規模な土地区画整理事業や公営住宅建設の実績があるURさんの協力を得られ、安心感がありました。信頼関係を築き、町の意思を汲み取っていただいたことも大きかった」とその労をねぎらう。





理想のまちづくりにそれぞれが奮闘

震災前の大槌町で歴史的にも文化的にも中心地だったのが御社地(おしゃち)と呼ばれる湧水池だ。今回の工事では、あえてここだけ盛り土をせずに湧水を残し、隣に町立図書館が入る復興拠点施設が建設される。そのすぐ側に、岩手沿岸部でURが手がけた最後の災害公営住宅が建つ。ともに入社2年目のURの佐藤海斗(かいと)と佐武亜美は、この災害公営住宅を担当した。1階店舗脇の独立壁には、佐武が考えたカモメのモチーフがくりぬかれ、印象的だ。
「待ち合わせスポットとして、住民の方に長く愛されるとうれしいです」と笑顔を見せる。
御社地近くでいち早く店を開いた「ひびき鮮魚店」の佐々木定伸さんは感慨深げに語る。
「仮設に6年いて、昨年9月に店を再開しました。お歳暮に大槌町名物の新巻き鮭を送るから、と6年ぶりに来てくれたお客さんもいるし、ようやく思ったように仕事ができるようになりましたね」
造成が終わった町方地区には、新たな家や店が続々と姿を見せ始めた。新しいまちの暮らしとにぎわいは、少しずつ、そして確実に再生しつつある。
【妹尾和子=文、青木登=撮影】
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