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【URのまちづくり最前線 第12回】蘇我特定地区 防災公園街区整備事業(千葉市中央区)後編

URPRESS 2019 vol.59 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]


特別対談
使われ方から発想してつくる新しい公園のかたち

20年にわたる「蘇我スポーツ公園」の取り組み。
千葉市の服部卓也副市長と、事業の立ち上げにかかわったURの中川裕二の対談から、「蘇我スポーツ公園」で目指したこと、そしてこれからの公園づくりに求められるものが見えてきた。

千葉市
服部卓也 副市長
【司会】 蘇我スポーツ公園を含む蘇我特定地区防災公園街区整備事業は、URが千葉市より要請を受けて行っています。まずは事業開始当時の様子からお聞かせください。

【中川】 約20年前、1998〜1999(平成10~11)年にかけて川崎製鉄(現JFEスチール)の工場が移転するにあたり、私自身千葉市さんと一緒に臨海部の整備の立ち上げに関わっておりました。当時は山一證券や北海道拓殖銀行の破綻などがあったバブル崩壊後の平成不況で深刻な時期。臨海部の工場も産業構造の転換で未利用の土地が増え、このままでは日本経済が破綻するのではないかと心配されていました。国としては臨海部を市街地、産業港湾空間、海域と一定的かつ戦略的に整備して都市の再構築を進める方針でした。

臨海部の整備エリアは1000ヘクタールを超える広さ。工場が段階的に移転していくことから、土地利用転換や盛土も段階的に進めるため、URも仕事の進め方を従来の「全体を大規模面整備する方法」から、「パッケージ型」へ転換しました。具体的には面整備(土地区画整理事業)はトリガーとなるエリアの最小限(38ヘクタール)にして、骨幹的なインフラ(街路、公園)を整備し、あとは民間企業が整備するという方法です。

【服部】 臨海部の広大な跡地利用ということで、千葉市としては蘇我を副都心の位置づけとし、商業系や事業所の誘致だけでなく、防災ロードも含めて大規模な公園(46ヘクタール)を計画しました。

【中川】 当時、海に近い部分は産業系が独占しているといわれ、それを市民に開放しようという議論もあったと思います。

【服部】 そういう議論がいろいろなところで起こっていましたね。防災公園街区整備事業が新たに導入されたのも大きかったです。

【中川】 防災機能の強化を目的に、工場跡地等を機動的に取得し、防災公園と周辺市街地を一体的に整備する事業制度ですね。地方自治体の負担を減らすため、財政の平準化ができる制度を国に検討していただきました。

【服部】 残りあと2年で完成しますが、これだけの事業をやり切るというのはすごいですよね。この蘇我スポーツ公園が千葉市にとって総合的な運動公園の筆頭になるのは間違いありません。同時にこの公園は非常に重要な防災の拠点であり、今後、さらに価値が上がると思われます。これから整備されるレクリエーション広場やパークゴルフ場などを楽しみに待たれている方も大勢いらっしゃいます。

【司会】 蘇我スポーツ公園はJリーグの試合をはじめ、女子サッカーワールドカップ予選やラグビーなど国際大会でも利用されていますが、ふだんの利用状況や公園整備による効果はいかがでしょうか。

【服部】 野球のグラウンドは休日はほぼ埋まっています。6面とれますから、会場を分散せずに大会を行うこともできます。また、ここを本拠地とするジェフユナイテッド市原・千葉の試合がある日は大勢の観客が集まります。メインのフクダ電子アリーナは、バリアフリー対応になっていますし、駅から近いのも利点です。スポーツだけでなく、JAPAN JAMなどのイベントも行われています。今後、さまざまなイベント開催などにより利用者が増えれば、もっとにぎわいが出てくると思います。

防災に関していえば、ここまで防災機能をもつ本格的な公園は千葉市内では蘇我スポーツ公園だけです。何か起きたときに活用できる、拠点となる場所があるというのは安心感につながります。

今年8月には蘇我スポーツ公園内の「フクダ電子スタジアム」がオープン。記念式では服部副市長もテープカットを行った。
UR 東日本都市再生本部 副本部長
中川裕二

【中川】 これだけの規模の公園を、ふだんはスポーツ、災害のときには防災拠点として使えるようにするため、立ち上げ当初から千葉市さんとはかなりの議論を重ねてきました。災害時の自衛隊や警察の駐屯場所はどこにするか、現地対策本部はどこに置くかなどを細かく検討して施設を配置。特に一時避難先であるフクダ電子アリーナは、詳細な設計を行いました。また、高潮対策のために全体を盛土していますが、そのために関東各地の土を集めたり、千葉市さんの保存樹木の再利用や、JFEさんの産業遺構を配置したり。いかにコストを抑えいいものをつくるか、工夫しながら整備してきました。

【服部】 おかげさまで、いい公園になったと思います。

【中川】 あと2年半でしっかり仕上げたいと思います。市民の方々にしっかりと使っていただけることが大切ですね。

【服部】 はい、観賞するための公園をつくっているわけではなく、利用してもらえる公園にしたいので、集客の努力もいろいろ考えていきたいです。

【司会】 URは蘇我スポーツ公園以外にも、多くの都市公園を手掛けています。最近の都市公園づくりはいかがでしょうか。

【中川】 URでは38都府県、全国各地で288の公園事業を行っています。千葉県内では、人気の「ふなばしアンデルセン公園」や柏市の防災公園を受託。また熊本で公園事業として災害復旧のお手伝いをするなど、かなり幅広く公園事業に関わっています。

従来、公園はつくることに主眼が置かれていて、都市計画が決まって、つくって、使ってくださいという流れでした。けれども今は逆の発想で、人がどういう行動をとるかを想定した上での計画立案を検討しています。使われ方を考えての公園づくりにアプローチが変わってきたのです。

【服部】 そのとおりだと思います。公園づくりというのは、相当先取りの世界ですが、使い方を考えたら、あまりつくり込まないほうがいいこともあるかもしれません。

【中川】 蘇我スポーツ公園も同様ですが、整備するのはURですが、住民や民間事業者の意見も聞きながら、使う人と一緒に一体的に整備を行う流れに変わってきています。街なかで公園の利用者が少ないために、にぎわいが遮断されるということもあり、にぎわいを誘発するようなつくり方を勉強中で、地方都市再生にも利用すべく模索中です。

【服部】 蘇我スポーツ公園の周辺は、お洒落な飲食店が増え、すっかり雰囲気がよくなりました。これからはURが蓄積してきたノウハウを、今後の自治体のまちづくりにどう活用するかを真剣に考えるときだと思います。

【中川】 我々も新たにつくるだけでなく、既存の公園や駅前の使われていない広場等の改修を含め、いかにまちづくりのお役に立てるかを考え続けています。まずはご相談いただければと思います。

司会
UR 東日本都市再生本部 基盤整備計画部 担当部長
折原夏志

【妹尾和子=構成、菅野健児=撮影】

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