街に、ルネッサンス UR都市機構

復興の「今」を見に来て!第10回 Part1

URPRESS 2017 vol.50 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

復興の「今」を見に来て!第10回 - 地域のニーズにマッチした災害公営住宅が完成 気仙沼市 名取市 宮城県気仙沼駅前という交通利便性、生活利便性の高い地に立つ気仙沼駅前住宅。右の12階建ての2号棟(64戸)は2016年10月に先行して引き渡し、13階建ての1号棟(130戸)が2017年5月30日に引き渡された。

気仙沼市 市内一の高さを誇るランドマークに

宮城県最北端の気仙沼市。まちの玄関口であり公共交通機関の拠点でもある気仙沼駅のすぐ脇に、5月末、市内随一の高さを誇る建物がお目見えした。13階建ての1号棟と12階建ての2号棟からなる災害公営住宅「気仙沼駅前住宅」だ。「この地方でこのような高い建物は見たことがなかったので、驚きました」

と話すのは入居者の高橋清夫さん。仮設住宅での生活ではなかなか将来像が描けず不安を抱くことも多かったが、気仙沼駅前住宅の広々とした部屋への入居が決まり、安堵していると言う。この住宅を希望したのは、病院や買い物へのアクセスの便利さから。高橋さん夫妻は4階に、高齢のご両親が2階にという近居スタイルも安心感があると喜ぶ。

気仙沼市のランドマークともなった、この気仙沼駅前住宅の建設を担当したのはUR都市機構だ。気仙沼市で市街地の災害公営住宅の整備に取り組むUR都市機構は、2015(平成27 )年1月の市営南郷(なんごう)住宅を皮切りに、四反田(したんだ)住宅、幸町(さいわいちょう)住宅、内の脇(ないのわき)住宅、鹿折(ししおり)南住宅の災害公営住宅を市に引き渡してきた。そしていよいよ最後となったのが気仙沼駅前住宅で、これにより請け負った1033戸のすべての引き渡しが完了した。

5月28日に開かれた「気仙沼市災害公営住宅 整備完了・入居式」では、気仙沼市建設部建築・公営住宅課の沼倉敬課長による事業経過報告を受け、UR都市機構副理事長の石渡廣一が、無事にすべての災害公営住宅が完成できたことへの感謝を関係者に伝えた。

間取りは1LDKから4DKまで6種類。
5月28日に気仙沼駅前住宅駐車場棟で開かれた「気仙沼市災害公営住宅 整備完了・入居式」でのテープカット。
左から菅原茂気仙沼市長、入居者の高橋清夫さん、UR都市機構副理事長 石渡廣一。当日は餅まきも行われた。

敷地を最大限生かす設計や工法で

この1年間で市内では約600戸の災害公営住宅の引き渡しがあり、それにかかわる緊張感を伴う業務を担当してきた石渡直樹。最後の引き渡しは、うれしく喜ばしいけれど、ちょっとさみしくもあると語る。

気仙沼市建設部建築・公営住宅課災害公営住宅係技術主幹の千葉巳春さんによれば、気仙沼駅前住宅が高層になったのは、限られた敷地面積に必要数を満たす住宅棟と駐車場を配置する必要があったため。200台以上を収容できる立体駐車場もこの地域では珍しく、駅前という立地をふまえ、1階に60台分の公共用駐車場も完備している。

JR大船渡線に隣接する土地のため、重機の作業に制約があるなど難易度が高い工事でもあったと、UR都市機構気仙沼復興支援事務所住宅計画課課長の石渡 直樹は説明する。工期と働き手の確保が厳しいことから、鉄筋入りのコンクリートを工場で組み立て、 現場で設置する工法を採用し、工期と労務の短縮に努めてきた。

住宅棟の道路に面した部分にはゆとりある歩行者空間を設け、ベンチなどを配置して、駅前通りのにぎわいづくりと地域にお住まいの方々の交流を深める工夫も施した。

完成した住宅を感慨深く見守るのは、計画から携わってきた気仙沼市建設部建築・公営住宅課災害公営住宅係技術主査の三浦克哉さん。「震災直後は何から手をつけていいのか途方に暮れていましたが、始まりがあれば、終わりがあるんだなあと、ほっとしています」
そう語る三浦さんの言葉にうなずくUR都市機構の石渡直樹も、完成した住宅のエントランスで歓談するお住まいの方の姿を目にしたり、洗濯ものが干されたバルコニーや、明かりが灯る部屋など生活の営みを感じられる情景を見るにつけ、まちが再建されていくことにほっとすると話す。

「URさんには1日も遅れないようにとばかり言って大変ご迷惑をおかけしましたが、しっかりと実力を見せていただきました」そう話す気仙沼市の菅原茂市長は、このランドマークを拠点に、新たなコミュニティーとにぎわい創出に力を入れていきたいと考えている。

「東日本大震災ではつらいことがたくさんありましたが、一方で震災を機に、日本中、また世界各地からさまざまな人とのご縁をいただきました。出会った方々の発想力、行動力をお借りしながら、地方ならではの豊かな生活を創出していきたいと思います」

1号棟の47戸はペット共生住宅。ペットを大切にしている方も多く、災害公営住宅でもペットが住めるように配慮した。ペット共生住宅側のエレベーターにはペットと一緒に乗車することを知らせるペットボタンがある。

名取市 蔵王を望む田園に高柳東団地完成

宮城県南部の名取市でも、6月1日に市営住宅高柳東団地が完成し、鍵渡し式が行われた。UR都市機構が名取市で建設を担当した災害公営住宅としては、美田園北(みたぞのきた)団地(集合住宅)に続いて2地区目となる高柳東団地は、田畑が広がる田園地帯のなかにゆったりと建っている。

鍵渡し式では名取市の山田司郎市長が、仮設住宅で長い間不自由をされてきた方々へのおわびと関係者への感謝の言葉とともに、今後も地域の声に耳を傾け、関係者と連携しながら進める、よりよいまちづくりへの抱負を語った。

現在、福島県の沿岸地域では、東日本大震災および原子力災害で失われた産業の新たな基盤構築と、人材育成、交流人口の拡大を目指す「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」が進められている。浪江町にはその一環として、世界最大級の水素製造拠点や、無人航空機(ドローン)用の実証実験施設を含む「福島ロボットテストフィールド」の一部が造られる計画。その舞台となるのが「棚塩産業団地」だ。

またUR都市機構復興支援統括役の新居田滝人(にいだたきと)は、地元の方や関係者へ、この日を迎えられた感謝を伝え、東日本大震災の復興支援のため東北3県にUR都市機構から400人を超える職員を派遣し、約5800戸の災害公営住宅を整備したことなどを説明した。

内部外部ともにバリアフリーの高柳東団地。入口にはベンチを置き、談話スペースを設けている。また一時避難場所としても利用できる広場や炊き出しなどができる「かまどベンチ」「防災トイレ」など防災機能も充実。
高柳東団地の鍵渡し式。UR宮城・福島震災復興支援本部長 佐分英治(右)から山田司郎名取市長(左)へ、そして入居者代表の遠藤一雄さん(中央)へ鍵が渡された。名取市は自然豊かでありながら、鉄道や空港、高速道路などのインフラが整っていて人口が増加中。

「待っててよかった」入居者の笑顔に喜び

「完成見学会に来られた入居予定の方に、“待っててよかった”と言っていただけたのが、うれしかったですね。震災から6年経ちましたが、用地探しから苦労したので、よくぞここまで来られたと思います」

と振り返るのは、名取市震災復興部復興まちづくり課の郷内秀稔(ごうないひでとし)課長だ。UR都市機構は名取市と連携しながら、将来、災害公営住宅が社会ストックとなることを考慮して、多世代、地域の方々ともつながる住まいづくりを目指してきた。敷地内に1周300メートルの散歩道をつくったり、その道沿いに遊具やベンチ、樹木や草花を配置し、植物を観賞しながら触れ合える場を設けたりしたのも、そのための配慮だ。「URが来てくれてよかった、と思ってほしいですからね」

UR都市機構宮城・福島震災復興支援本部住宅整備部住宅計画課主幹 佐藤景洋はそう言って微笑む。東日本大震災の復興支援にかかわって5年目となる佐藤は、災害公営住宅完成時の鍵渡し式ほどうれしい瞬間はないと言う。「鍵を受け取っていただく瞬間は、入居者皆さん一様に笑顔です。裏方として間近でその笑顔を見られ、喜びを感じられるのは幸せです」

UR都市機構による名取市での災害公営住宅の建設は高柳東団地で完了、宮城県内の復興支援も終盤にさしかかっているが、最後までしっかり見届けたいと語る。

鍵渡し式の日には「花いっぱいになーれ」と題した地域交流植栽会も開かれた。企画したのは、佐藤と同じ住宅計画課の白幡玲子だ。 「入居者の方々もですが、地域の外から新たな住民を受け入れる周辺の方々も不安をもっていると思うので、隣近所に住む人の顔がわかるような、交流のきっかけをつくりたいと思いました」

町内会で9月に集会所の落成式を企画していると聞き、「それならば災害公営住宅に入居する方々と一緒に植栽し、育てた草花を株分けして集会所の花壇に植えられたら」と考えたのだ。「農業が盛んな地域なので、地元の人に分けてもらった土で植物を育て、町内会の一員として落成式に参加していただけたらいいなあと思ったのです」

建物というハードだけでなく、コミュニティー形成などソフト支援にも力を注ぐUR都市機構ならではの提案。この日植えられたアルメリアやタイムの草花が育つように、この地で新たな人々の交流の輪が広がっていってほしい。そんな願いが込められている。

UR浪江復興支援事務所のメンバー。左から中山 誠、塩間 学、真田研司、山下哲弘。UR都市機構の佐藤景洋(左端)は、宮城県内のUR関連の式典の裏方・司令塔としても不可欠な存在。
大学時代から東日本大震災のボランティアにかかわってきたUR都市機構の白幡玲子。卒論のテーマは復興まちづくり。そのときの学びと経験が仕事にも生かされている。入社2年目。

【妹尾和子=文、佐藤慎吾、平野光良=撮影、福田正紀=ドローン撮影】

動画

第10回 復興の「今」を見に来て! 宮城県 気仙沼市

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