復興の「今」を見に来て!第10回 Part2

着々と復興への歩みを進める、岩手県大船渡市。昨年3月には、先行して整備を進めていた大船渡駅周辺地区の基盤整備が完了、「第1期まちびらき」 がにぎにぎしく開催された。続いて今年の4月29日には、「キャッセン・フードビレッジ」「キャッセン・モール&パティオ」「キャッセン・ドリームプラザ(おおふなと夢商店街)」の商業施設がオープン。既に開店している大型スーパーなどを含めた商業エリアの完成に合わせて行われた「第2期まちびらき」は、この日を待ち望んだ多くの人でにぎわった。「キャッセンとは、この地方の言葉で『いらっしゃい』という意味です。
7棟に分かれた建物には、震災前からこの地域で営業していた商店や飲食店に加え、新たに若い人向けの雑貨店なども出店しています。『雰囲気がよくていいまちになった』と声をかけていただけて、うれしいですね」
と大船渡市のまちづくり会社、キャッセン大船渡取締役の臂徹(ひじとおる)さんは顔をほころばせる。キャッセン大船渡は、5月6、7日に白木の巣箱にペイントやデコレーションをする「バードハウス大作戦」 を開催。まちびらき関連イベントのなかでもひときわ人気を集めた。


左/須崎川の親水公園をはさんで、鮮魚店や雑貨店、飲食店などが立ち並ぶキャッセン大船渡。歩道も広く、まち歩きも楽しめる。
右/「魅力的なまちを維持存続していくのがこれからの課題」と語るキャッセン大船渡取締役の臂徹さん。大船渡のまちづくりにかかわって2年半になるという。
安全と交流の拠点、新たな施設を建設中
その横では大船渡市とUR都市機構が、来年の春、大船渡駅前にオープン予定の施設の大型模型を展示し、施設の利用者となる市民向けのワークショップを行っていた。家具や人型などを動かして施設の利用方法を考えられる趣向で、子どもたちが「こっちに椅子を置こうよ」「ここに座ってお菓子を食べたい」などと楽しく遊ぶ姿も見られた。
「この施設は、普段は市民の方々の交流の場として使っていただき、 津波が発生したときには逃げ遅れた人が一時避難できる建物として建設するものです。今回のワークショップは、市民の皆さんに施設のことを知っていただき、どんな使い方をしたいかを一緒に考えてもらいたいとURと協力して開きました」
大船渡市災害復興局大船渡駅周辺整備室主幹の藤原秀樹さんはそう語る。このワークショップを大船渡市に提案したのはUR都市機構だ。大船渡市内の土地区画整理事業と津波復興拠点整備事業、災害公営住宅の整備を担当しているUR都市機構は、建設中の当施設でもさまざまな提案を行っている。
ワークショップでは、施設の使い方をイメージしやすいようにさまざまな写真を用意。訪れた人からのアイディアを付箋に書き出し、ボードに貼り付けていった。「壁を使ってのボルダリング」「岩手県沿岸でも開催されるラグビーワールドカップのパブリックビューイング」「お茶っこ」など、多彩なアイデアが続出した。「ワークショップの意見で面白かったのは、外の広い階段に灯籠を並べて飾る『夢灯り』。地元の風習をふまえた、こうしたアイデアを最終の仕上げなどに生かしていきたいです」
と設計を担当したUR都市機構岩手震災復興支援本部住宅整備部住宅整備課主査の梅本大輔は語る。
新たな施設では、目的や集まる人数によって自由に空間が変えられるよう、多くの壁が可動式。通常は4〜7つの部屋に区切ることができ、全部取り払えば、200人が集える大ホールにもなる。各部屋はガラス張りで中での活動が見えるため、外と中が自然に交流できる配慮もする。
「災害への備えとしては、構造の強度を通常より1.25倍以上強くしています。1階は波が来ても 逃せるように壁のないピロティにし、2階以上は東日本大震災と同規模の津波でも浸水しない高さに。大勢が同時に避難できるように建物外部に大階段を設け、500人が72時間生命維持できる発電機と飲料水や簡易トイレなどを収納可能な備蓄倉庫も備えています」
UR都市機構岩手震災復興支援本部住宅整備部住宅整備課主幹の杉田典夫は話す。「市とタッグを組んで以降、将来的にも維持管理できる規模、防災機能のあり方、さまざまな運営を可能とする可変性などについて徹底した議論を重ね、今の計画になりました。 このような市民が参加できるイベントをきっかけに、施設のオープンが待ち望まれるような雰囲気をつくっていきたいですね」
イベントで子どもたちが仕上げた巣箱は、建設中の施設の仮囲いに展示。純白の壁をカラフルに明るく彩る様子は、新しい施設を心待ちにする人々の心のうちを物語っているかのようだ。




左/施設の大型模型で遊ぶ子どもたち。
右/広々としたコミュニティスペースは、巣箱に色を塗ったり、流木などでデコレーションする親子連れで大にぎわい!
【阿部民子=文、竹居鉄也=撮影】
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