復興の「今」を見に来て!第11回 Part1

石巻市 中学生の希望をかなえた公園が誕生
花壇を鮮やかに彩る黄色いヒマワリやオレンジのマリーゴールド。夏空に響き渡る勇壮な太鼓の音。そして集う人の明るい笑顔。夏休みも半ばを過ぎた8月19日、新門脇(かどのわき)地区「かどのわき西公園」で、新しい公園と緑道のお披露目会が開かれた。当日は工事関係者や地域の人が顔を揃え、アットホームな雰囲気のなか、公園の完成を祝った。
新門脇地区は、石巻市の南側に位置し、江戸時代は仙台藩の米を江戸に運ぶ千石船でにぎわった、歴史あるまちだ。東日本大震災からの復興に際しては、URが石巻市から事業を受託。復興土地区画整理事業と、復興公営住宅を一体的に整備してきた。今年3月には、宅地や道路、復興公営住宅がほぼ完成したのを祝して「かどのわき復興まちびらき」のイベントを開催、着々と復興への歩みを進めている。今回お披露目された公園は、昨年末に完成した門脇西復興住宅と共に、URが計画、整備を行ってきた。「かどのわき西公園」という愛称は、まちびらきイベント来場者の投票で決定したものだ。「この公園は、計画の段階から、地元の門脇中学校の生徒さんたちにアイデアを提案していただき、三つの思いをもって整備をしてきました。一つ目は、地域の方々と門脇西復興住宅の方々が交流できる場になるように。二つ目は子どもから高齢者の方までみんなが楽しめる公園に。そして三つ目は門脇の前に広がる海をイメージした公園をつくりたいという思いです。今日は、地域の方々に『やっと寛げる場所ができた』と喜んでいただいて、ホッとしました」とUR石巻復興支援事務所長の松原弘明は、晴れやかな笑顔を見せた。

コミュニティーを再生する拠点に
かどのわき西公園を含む新門脇地区の三つの公園はいずれも、門脇中学校生徒の意見が取り入れられているのが特徴。その活動を支援してきたのは、山形大学地域教育文化学部の佐藤慎也教授だ。公益財団法人日本ユニセフ協会と大学時代の友人と共に「子どもと築く復興まちづくり」プロジェクトを推進している佐藤教授。門脇中の現3年生を対象に2015年から6回のワークショップを開き、子どもたちのアイデアをくみ上げてきた。
「この公園づくりは、工事を進めるURさんと竹中工務店さんに『未来を担う子どもたちと一緒に公園づくりを考えられないか』とご相談して、実現しました。具体的には、海をイメージした公園というテーマをはじめ、船をモチーフに屋根をマストに見立てたベンチや、高齢者が楽しめる健康遊具の設置などに生かされています。子どもたちにとって、自分たちが公園づくりに関わった記憶が将来にわたって熟成され、10年後20年後に、ここでまたみんなで集まれるといいですね」と佐藤教授は語る。
生徒の活動を見守ってきた門脇中学校3年生担任の木村美恵先生は「子どもたちはこの活動を通して、地域の歴史や地形なども学び、自分の暮らすまちにさらに愛着をもったようです。花壇の花もタネから育てて自分たちで植え付けましたし、微力ながらもまちづくりに関わっていることにすごく誇りをもっています」と目を細める。
公園に隣接する門脇西復興住宅で団地会の会長を務める富和一郎さんも、公園の完成を待ち望んでいた一人だ。「この住宅にはいろんな仮設住宅から来た人が住んでいるので、一つになるにはどうしたらいいかが大きな課題でした。それだけに、この公園ができたことで皆さんが部屋から出てこられて、コミュニケーションをとれるのが、すごくありがたいですね。今後は中学生と一緒になって花壇の管理をしたり、老若男女が仲良くお話できる場所にしたいです」
新たに公園に植えられた木々や花々が大地に根付くように、この公園もコミュニティー再生の場として人々の暮らしに深く根付いていくことだろう。






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