復興の「今」を見に来て!第11回 Part3

東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故から約6年7カ月となる2017年9月30日。福島県大熊町の大川原地区で、復興再生拠点市街地形成施設事業の起工式が行われた。
常磐自動車道の西側に位置する大川原地区で整備が予定されているのは、新たな役場庁舎をはじめ、交流施設、復興住宅など。全町が避難指示区域となっている大熊町にとって、「町民がまず最初に戻れる場所」の整備工事のスタートであり、大きな節目となる起工式には吉野正芳復興大臣をはじめ、町内外から多くの関係者が集結。主催者と来賓のあいさつや鍬入れが行われた。
大熊町の渡辺利綱町長は、復興再生の第一歩となるこの日、6年7カ月の歳月を思うとじつに感慨深いとあいさつ。「“ローマは一日 にしてならず”という言葉があるように、大熊再生という大事業には長い年月がかかります。しかし、必ず復興を成し遂げ、町土を取り戻すとの覚悟のもと、職員・関係者が一丸となって取り組んでまいります」
改めて決意を表明すると共に、渡辺町長は事業を担当するURに対して、豊富な経験に基づくサポートへの期待を語り、協力を求めた。
その熱い思いを受けて、UR理事長の中島正弘は、「自らも被災者でありながら粘り強く復興に取り組まれている町長をはじめ役場職員の皆さんと連携しながら、URの経験とノウハウを投入し、組織を挙げて取り組んでいきたい」と応えた。URでは現在、現地400人体制で東日本大震災からの復興を支援している。



前向きなまちの人々と一体となって
整備が始まった大川原地区の事業規模は約18ヘクタール。まずは役場の新庁舎用地の造成からスタートする。
大川原地区の事業計画などを担当しているURの竹内豪は、福島復興の仕事は難しい面がいろいろあるものの、やりがいも大きいと話す。竹内にとって心強いのが、大熊町の若手職員有志二十数名による町の政策会議の存在だ。町は避難している町民の利便性から、会津若松、郡山、いわきの3カ所に役場機能を分散しているが、それぞれから会議のメンバーが集まり、まちのビジョンや整備の方向性などについて話し合いを重ねている。
会議の議論は町内に提言され、今回の新庁舎の設計にも一部反映されている。竹内はこの会議の事務局として協力している。「難しい環境の中でも前向きに、真剣に考えている大熊町の若い方たちから学ぶことが多く、勇気をもらっています。自分たちで新たなまちをつくっていく気概を感じます」と竹内は話す。
ふるさとへ思いを馳せる人たちの希望となる復興拠点の完成を願って、いよいよ工事がスタートした。



【妹尾和子=文、青木登=撮影】
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