復興の「今」を見に来て!第13回
浪江町 まちの核となる注目の産業団地の整備、始まる!
「7年間の臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の日々を経て起工式ができますことを衷心より感謝申し上げます」
4月15日、浪江町で開かれた棚塩(たなしお)産業団地の起工式は、司会者の厳粛なあいさつから始まった。
現在、福島県の沿岸地域では、東日本大震災および原子力災害で失われた産業の新たな基盤構築と、人材育成、交流人口の拡大を目指す「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」が進められている。浪江町にはその一環として、世界最大級の水素製造拠点や、無人航空機(ドローン)用の実証実験施設を含む「福島ロボットテストフィールド」の一部が造られる計画。その舞台となるのが「棚塩産業団地」だ。
長く町内全域に避難指示が出されていた浪江町で、避難指示が解除された(帰還困難区域を除く)のが昨年3月31日。それから約1年後の今回の棚塩産業団地の整備スタートは、まさに「苦労を重ねながらチャンスの到来を待つ——臥薪嘗胆の日々」を経ての節目であり、関係者の期待は大きい。
吉野正芳復興大臣をはじめ多くの来賓が出席した起工式で、浪江町の馬場 有(たもつ)町長は、この1年の取り組みと変化を振り返り、まちに少しずつ人々の営みが確認できるようになったことを説明。雇用促進の場ともなる復興のシンボル、棚塩産業団地について「この拠点を核としたまちづくりを推し進め、必ずや浪江の復興をなしとげたい」と静かに強く語った。
浪江町から棚塩産業団地整備事業を受託したUR理事長の中島正弘は、「期待の集まる施設の早期稼働に向けて、URが培ってきたノウハウや能力をすべて発揮して基盤整備に取り組んでいく」と表明した。
時間と闘いながら全力で
起工式を終え、UR浪江復興支援事務所所長の塩間 学は「期待の高さと使命の大きさをひしひしと感じました」と話す。
事業の計画立案の段階から関わってきたURは、多くの関係者の思いや要望を受けとめ、計画を進めてきた。スピードが求められるこのプロジェクトでは、何を優先するのか、どこまで整備するのかといった調整が重要で、そこにURが持つ半世紀を超えるまちづくりのノウハウが注ぎ込まれている。インフラの整備は2019年度末に完成予定。2020年東京オリンピック・パラリンピックで、この地でつくられる水素エネルギーの活用を目指しているため、時間の余裕はない。
「施設の建設計画を最優先して、土の運搬や道路工事などの細かい展開計画を作成し、基盤整備を進めています」とURの中山 誠は説明する。最先端の注目施設が完成した暁には、研究者を含め国内外から多くの人がこの地を訪れることになるだろうと塩間は期待を寄せる。
「国の協力のもと、浪江町、福島県、施設整備事業者、URが一丸となって取り組んでいます。大変ですが、やる気のある人間ばかりが集まっているので、動きも早いです」
まちの方たちに感謝していただける環境で働ける喜びを感じつつ、浪江町の復興支援に携われることへの誇りを胸に、塩間をはじめUR職員は奔走する日々だ。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】肩書は取材当時のものです。
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