街に、ルネッサンス UR都市機構

復興の「今」を見に来て!第23回

URPRESS 2022 vol.70 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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ここから始まる!「KUMA・PRE」が地域の活動拠点に

かつて大熊町の中心街としてにぎわっていたJR常磐線・大野駅周辺。2022(令和4)年6月末に帰還困難区域指定が解除となり、大野駅西口エリアでは2024年度中にまちびらきが計画されている。産業交流施設や商業施設、芝生広場などが整備される予定だ。それに先行して、駅から徒歩5分ほどのまちの玄関口に、この春「KUMA・PRE(クマプレ)」がオープンした。

KUMA・PREは、大熊町の復興まちづくりを2014年から支援しているURの「下野上(しものがみ)地区一団地事業」の監督員事務所に併設されたスペース。URと大熊町、おおくままちづくり公社に加え、連携パートナーとして認定された民間企業と連携しながら、まちのにぎわい再生や人づくり、情報発信などに取り組んでいくための場でもある。キャッチコピーは「集い、試し、輪を広げる」。開館中はUR職員を含むスタッフが常駐し、利用者は立ち寄って休憩をしたり、スタッフと町の様子を話したり、テレワークや会議、イベントなどにも利用できる。

KUMA・PREの名称にはOkuma×UR×PLAYER(担い手、関係人口)、PLACE(活動の場)、PreOPEN(ステージゼロ)、PR(情報発信)の意味が込められている。
KUMA・PREの広々としたデッキスペースは、休憩やおしゃべり、また仕事やイベントのスペースとしても大活躍。
KUMA・PREの外灯のポール。東日本大震災後、大熊町の人々が集団避難でお世話になった会津若松市の名が記されている。

大熊町の未来に期待が高まる座談会

5月20日にはコロナ禍で延期されていたお披露目を兼ねた「KUMA・PRE座談会」が開催され、連携パートナーを中心に関係者50人ほどが集まった。はじめにURの栗城英雄から、これまでの経緯とKUMA・PREが目指すビジョンを説明した。

続くトークセッションでは、各界で活躍中の3名が大熊町の可能性について話をした。庭園デザイナーの石原和幸さんは大熊町の価値ある自然を磨き、地域の人の手で絶景をつくる提案を。余白探究集団代表の大野佳祐さんは島根県海士(あま)町での活動を踏まえ、町内外の人が連携して「情報発信と人材育成」に取り組む醍醐味を語った。またFuture代表の井原慶子さんは、住民や来訪者の移動手段として各地で実用化し始めているマイクロモビリティを紹介。いずれも大熊町での展開に期待が高まる内容で、参加者は熱心に聞き入っていた。

座談会終了後、大熊町企画調整課地域振興係の村井一隆係長は集まった人たちの姿を見ながら「ずっと人が集まれる場所がなかったので、KUMA・PREのような施設ができたことはありがたい」と喜び、「ここでいろいろな人が集まって生み出したものを、大野駅西エリアのまちづくりにうまくつなげていきたいと思います」と語った。

KUMA・PREは一見シンプルながら、細部にこだわった魅力的な空間だ。内装や施工を担当したクラフト トレード サービス代表の橋本芳也さんは、通常は内部に隠す資材などをあえて見せるデザインにし、デッキはワークショップで大勢で制作することを提案。

「アンフィニッシュ(終わりなし)とグッドネイバーズ(良き隣人)がKUMA・PREの隠れたテーマです。いろいろな人に関わり愛着をもってもらい、アップデートしていけるといい」と橋本さん。

6月末時点で、大熊町の連携パートナーは24企業・団体に及ぶ。そのひとつOriaiは、農業インターンシップなど地域と若者をつなげる事業を展開する会社。代表の松井大介さんは、大熊町の人々の印象を、新しいことに取り組もうという積極性があると語る。

「できない理由から入るのではなく、どうしたらできるかを一緒に考えてくれる懐の深さがあります」

座談会にはオンラインでの参加者もいた。
常磐自動車道大熊ICより車で3分。まちの玄関口、大野病院の駐車場の一角にオープンしたKUMA・PRE。
看板のKUMA・PREの文字は木ねじで表現。
みんなで打ち込み完成させた。

秘密基地に集い試し、輪を広める

KUMA・PREを企画したURの栗城は、東日本大震災の復興支援に携わって10年。

「人が住めなくなって11年経つ地域でのまちづくりは課題が山積みです。そのなかで大事なのは、関係者がいかに同じ思いで、まちづくりを進められるかだと思います。まちびらきに向けて関わる人の思いをひとつにつないでいくキッカケにKUMA・PREがなれば」と話す。

この日、集った人々を、〝いい意味での変人〟と表現した人がいたが、変人たちが秘密基地であるKUMA・PREに集い、企画・挑戦するパワーは計り知れない。大熊町でおもしろそうなことが起きそう! そんな予感のするイベントだった。

大熊町の村井係長。前職は新聞記者で、東日本大震災後に大熊町の取材を続けるなかで、自分もこの町の復興に携わりたいと転職した。
若者が実践を通して成長し、かつ若者によって地域が元気になることが理想と話すOriaiの松井さん。大熊町では若者によるいちごの収穫作業をサポートしている。
「これだけたくさんの人の脳みそが集まるとすごいことが起きそうで楽しみ。いつか地元のお年寄りに教わる味噌づくりや漬物ワークショップなども開けたらと思っています」と橋本さん。
先例が当てはまらず、迷うことの多いまちづくりでは、〝自分ごと〟として考え判断し、挑戦することを心がけているというURの栗城。後輩たちにもぜひ挑戦してほしいと話す。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】

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