街に、ルネッサンス UR都市機構

復興の「今」を見に来て!第6回 Part2

URPRESS 2016 vol.44 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

第6回 復興の「今」を見に来て! - 防潮堤に頼らない安心安全のまちの基盤が完成! - 宮古市 岩手県 Part2UR都市機構宮古復興支援事務所の石川直樹。
背後の三王団地では完成前から造成地の見学会を開いたり、先行工事でモデル街区を造ったりして、地元の人が新たな生活に夢をもてるように進捗状況を伝える努力をしてきた。

UR都市機構は、岩手県宮古市と2012(平成24)年に復興整備事業にかかわる協力協定を締結し、
市内で最も被害の大きかった田老、鍬ヶ崎(くわがさき)・光岸地(こうがんじ)2地区3事業の復興支援事業を担当。
行政と連携し、防潮堤だけに頼らないまちづくりを進めている。
田老地区の2事業は今春完了、いよいよ引き渡しの時を迎えた。

「本当にこのスケジュールでやるの? やれるの?」
UR都市機構宮古復興支援事務所市街地整備課課長 石川直樹は、宮古の復興現場に赴任した当初、山積みの業務を前に、計画のスピード感に驚いたという。けれども震災から月日がたつなかでの地元の方々の気持ちを考えれば、少しでも早くという思いは強く、スケジュールが遅れることがないよう調整と迅速な対応を心がけてきた。

高台に誕生した「三王(さんのう)団地」

宮古市田老地区でUR都市機構が担当したのは「防災集団移転促進事業による高台移転」と「低地部の土地区画整理事業による市街地のかさ上げ」だ。

高台移転に際しては東日本大震災での田老における津波最大遡上高を超える海抜40~60メートルの地に住宅用地を配置すべく、山を切り拓いて造成。誕生した「三王団地」には住宅用地のほか、津波で流された公共公益施設や災害公営住宅用地も整備されている。

「完成した造成地を見たときは、広くて立派だなあと思いましたよ」とは大棒(だいぼう)賢作さん。ウニやアワビ漁にも出る大棒さんが三王団地の一角に自宅の再建を決めたのは、「海の近くにいたいし、顔なじみの人たちの近くで暮らしたいから」。田老の人は連帯感の強さが魅力だと語る。

UR都市機構の石川直樹が仕事を進めながら幾度も感じたのは、地元の人たちの復興への思いの強さ、そして事業全体に配慮する度量の大きさだ。三王団地の区画を決める抽選会で希望区画の抽選にもれても、誰ひとり文句を口にする人がいなかったという。当初計画より8ヵ月前倒しで整備完了した三王団地では、今年2月の本契約に先立ち、昨年10月から住宅建築が始まっている。

「土地が決まるとホッとするものですね」遠くに海を望む新居建築予定地に立つ大棒さん。
春から始まる新築工事を楽しみにしている。25.5haの三王団地に造られた戸建て宅地数は約160。

団結力を失わず語り継いでいく

「田老の人は昔から防災意識が高いのです」海に近い低地部に自宅があった田老地区土地区画整理審議会会長の田畑さん。別の地に新居を構えているが、先祖から受け継いできた元の土地は手放さずに残した。

一方、低地部である市街地の土地区画整理事業では約19ヘクタールの土地に道路や公園、住宅・産業用地を整備。国道をはさんで山側にかさ上げした住宅用地を配置し、災害危険区域に指定された海側は、万一の津波越流時には遊水地として被害を最小限にとどめる機能を担う。整備はほぼ完了し、今年3月には引き渡し予定。UR都市機構が岩手県で担当する土地区画整理事業では最初の事業完了地区となる。

いずれの事業も、行政や地元の方々と対話を重ねながら推進してきたUR都市機構の職員。住民側の代表の一人として話し合いが円滑に進むように尽力された田老地区土地区画整理審議会会長の田畑満三由(まさよし)さんは、UR都市機構職員の働きを「大変な仕事、使命感がなければ務まらないなあと思いました」と振り返る。田畑さんは、これからの田老は「防災教育の観光拠点」を目指すべきだと考えている。

また、交渉への同行など、地元地権者との顔つなぎやコミュニケーションの補助・仲介役として活躍された宮古市田老総合事務所地域振興担当の齊藤清志さんは、震災直後に自分のまわりで起きたことについて記録を残している。

そして折に触れ、地元の小中学生に復興の進捗状況を映像などを見せながら説明してきた。齊藤さんが子どもたちに伝えているのは、「震災後に受けた支援への感謝を忘れないこと」、そして「田老を離れたとしても、被災した経験と教訓をきちんと伝えること」だ。

今回話をうかがった田老の方が共通して語っていたのは、この先も田老の団結力を失わず、震災を語り継いでいくことの大切さ。矜持(きょうじ)をもってまちの復活に挑む大人たちの背中を見て育つ田老の子どもたちは幸せだ。田老の未来への期待が高まる。

宮古市田老総合事務所地域振興担当の齊藤清志さん。田老で好きな場所は、まちのシンボルでもある三王岩(下)。高さ50mの男岩を中心に、3つの巨石からなる。「あの津波でも倒れず、自然が造ったものの力を見せつけられました」宮古市田老総合事務所地域振興担当の齊藤清志さん。
田老で好きな場所は、まちのシンボルでもある三王岩(下)。高さ50mの男岩を中心に、3つの巨石からなる。「あの津波でも倒れず、自然が造ったものの力を見せつけられました」

宮古市の復興事業の動き

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