復興の「今」を見に来て!第8回 Part2

宮城県の気仙沼湾の最奥部に位置する鹿折(ししおり)地区。津波と大規模火災で壊滅的な被害のあったこの地に、2016年5月18日、ファミリーマート気仙沼鹿折店がオープンした。オーナーの成澤誠一さんは「真っ暗だったまちに明かりが灯ったのがうれしいと、お客様に喜んでいただきました」と笑顔を見せる。
気仙沼市と2012年に協力協定を締結したUR都市機構は、この鹿折地区で復興市街地整備事業と災害公営住宅整備事業を展開している。42ヘクタールの敷地では、住宅地で約3メートルを基本に、海に近い商工業地で約1.8メートルを基本としたかさ上げと整備が順調に進捗。ファミリーマートは鹿折地区のまちづくり、商業地再興への先駆けとなる第一号店だ。「鹿折地区では、より早くスムーズに店舗や工場などの契約ができるよう、『事業者等エントリー制度』を活用しています」と語るのは、UR都市機構気仙沼復興支援事務所市街地整備課主査の栗栖(くりす)大輔だ。
事業者等エントリー制度とは、「土地を貸したり売ったりすることを望む地権者」と「区域内で土地を探している事業者や個人」の間にURが入って仲人役を担うもの。契約を迅速に進めるとともに、小規模に点在する土地を集約することで、大型商業施設などを誘致しやすくする利点がある。今後も、同制度を利用して、スーパーや金融機関などが出店予定だ。
栗栖と同様、市街地整備課の春野正成は「店舗ができて人が住み、まちが変わっていくのが楽しみです」と目を輝かせる。


ペットと一緒に住める災害公営住宅


広大なかさ上げ地のなかで、ひときわ目を引くのが、8棟の真新しい災害公営住宅だ。気仙沼のシンボルである安波(あんば)山を背景にすくっと立ち並ぶ姿は、復興の兆しの象徴のように見える。「部屋が明るくて広いので、引っ越してきて、気持ちも明るくなりました」と語るのは、8月に入居したばかりの佐川泰斗(やすと)さん。幅広い年代の人の触れ合いがある鹿折のまちが好きで、この地にどうしても戻って来たかったと言う。
この鹿折南の災害公営住宅を建設したのはUR都市機構。佐川さんの住居は、ペットと一緒に住める「ペット共生棟」だ。気仙沼復興支援事務所住宅計画課課長の石渡直樹は、「震災後、ご家族を亡くされてペットを大切にしておられる方が多いなか、公営住宅でペットと住めないかとの発想でつくりました」と、そのねらいを語る。
同じく住宅計画課の塚本恭将(やすまさ)は「今年の12月には8棟全部の引き渡しが完了します。この事業に携った人たちから、よかったと言われるように最後まで全力投球したい」と言葉を継ぐ。
気仙沼市建設部都市計画課の佐々木守課長は「URの方々は言葉も習慣も違う地で中心になって動いてくださり、ほんとうに助かっています。URさんがいなかったら、どうなっていたことか」と、労をねぎらう。
夜は漆黒の闇だった土地に人が戻って店ができ、にぎわいがよみがえる。復興の第二ステージへ、鹿折地区は新たな一歩を踏み出した。

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佐川さん一家が入居する8号棟はペット共生棟。
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「鹿折は、もともと住・商・工業が混在するまち。災害公営住宅や店舗が呼び水となって、早く多くの企業や人々に戻ってきてほしいですね」と、気仙沼市建設部都市計画課 佐々木守課長。
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陸前高田市と気仙沼市でのUR都市機構の取り組みの詳細が紹介された『週刊新潮』掲載の「変わる 日本の『暮らし』と『まち』」がWEBでご覧いただけます。
気仙沼市の復興事業の動き
【阿部民子=文、佐藤慎吾=撮影、福田正紀=ドローン撮影】
動画
復興の「今」を見に来て! 第8回
宮城県 気仙沼市
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