UR都市機構

復興の「今」を見に来て!第15回

URPRESS 2019 vol.56 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]


復興の「今」を見に来て!第15回 山田町 岩手県 高台を結ぶ悲願の町道が完成「町道 細浦・柳沢線 開通式」には地元でおなじみの八幡大神楽も登場。子どもたちも参加して盛り上げた。

高台を結ぶ
悲願の町道が完成

「一瞬にして陸の孤島と化したんです」

東日本大震災当日のことを、そう振り返るのは山田町の佐藤信しん逸いつ町長だ。あの日、地震発生の約30分後に山田町に到達した津波は、防潮堤や河川堤防を破壊し、多くの建物を呑み込んだ。そして膨大な瓦礫は沿岸部の国道45号を寸断し、通行不能にした。

国道45号以外に迂回路のなかった山田町は各地区が孤立し、救助・救援活動や物資の輸送活動に支障をきたす状況に。同時に町外とのアクセスも絶たれ、状況を伝えたくても伝えられない窮地に追い込まれた。

完成したばかりの桜山トンネル入口でテープカット。トンネル部の地質は硬い岩盤が多く、苦労して施工した。

40年の時を経て道路計画が実現

悲嘆にくれたその経験から、山田町では復興計画に「高台住宅地への集団移転」とあわせて、「アクセスネットワークの整備」を掲げた。実は地区間を結び、高台を通って町外ともつながる道路の建設は40年前から計画されていて、さまざまな尽力を経て、ついに今回実現。2018(平成30)年12月23日に開通式が行われた。

この日、桜山トンネルを含む区間が開通したことで、すでに開通している区間とあわせ約3キロメートルの「町道 細浦・柳沢線」が全線開通した。

桜山トンネルの入口で行われた「町道 細浦・柳沢線 開通式」は佐藤町長のあいさつに始まり、来賓祝辞、地元の八幡大神楽の演舞にテープカットと続き、喜びにあふれる時間となった。

この町道が重要なのは、(1)病院、消防署、交番などの公共防災エリアや住宅地を整備した高台地区、(2)駅や商店が集まる山田中心地区、(3)町内外へアクセスできる「三陸縦貫自動車道」山田インターチェンジの3拠点をつなぐ役割をもつこと。この道路が整備されたことで、国道45号が通行不能になった場合でも防災拠点から町内全地区への救助・救援活動が可能となり、低地部から高台へ避難するルート、さらには町内外への物資輸送や災害支援も可能となった。

年内の完成は、町・UR・施工者が三位一体となって取り組み実現した。左からUR岩手震災復興支援本部長の栗原徹、佐藤信逸町長、UR山田復興支援事務所長の才田浩、山田町震災復興事業共同企業体の西彰一所長。
町道の完成を機に、交流人口を増やしていきたいと語る阿部幸榮商工会長。
まちの中心地に立つ陸中山田駅。3月23日に三陸鉄道リアス線として運行再開する。

一日でも早く迅速かつ効率的に

この町民悲願の町道の整備を担当したのはURだ。山田町から「復興市街地整備事業」「災害公営住宅整備事業」に加え、防災機能強化に重要な「関連道路事業」もあわせて受託したUR。事業を同時並行的に進めることで、迅速かつ効率的に復興事業を進めてきた。

UR山田復興支援事務所長の才田浩は、「復興事業は時間との闘いだ」と語る。被災された方々の厳しい生活を考えると一日でも早くとの思いが募るが、事業を進めるなかでは想定しない問題が次々に起こる。

「仕事の岐路に立ったときは『住民の皆さんのためにいかに早く復興ができるかを最優先で判断すれば自ずと道は見えてくる』とメンバーに伝えてきました」

タイムロスをなくすことを自身にも仲間にも命じ、数々の困難を乗り越えてきた才田。開通式当日には佐藤町長から「目に見える変化を年末年始に帰省する人たちにもぜひ見てもらいたかったので、URさんには無理をお願いして年内完成を実現していただき感謝申し上げます」と言葉をかけられた。

親族や友人を亡くしてつらい思いをしている町の方たちから「工事の騒音やほこりは我慢するから、早く安全なまちをつくって」と声をかけられ、これまでに経験した中でもとりわけ大きなURへの期待を山田町で感じ続けてきた才田。「安全なまちをつくってくれてありがとう」と感謝されるたびにやりがいを感じるという。

町道開通で近隣の宮古市や釜石市へアクセスしやすくなったため、町外へ人が流れるのではという危機感を抱く商店もあるが、山田町商工会の阿部幸榮会長からは「自助努力でお互いがレベルアップしていけたらと思っています」と頼もしいお言葉。

利便性を高めるだけでなく、新たな世界とつながり、まちに息を吹き込む扉となる道が通ったのだ。

妹尾 和子=文、青木 登=撮影

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