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【URのまちづくり最前線 第13回】流山都市計画事業 新市街地地区一体型特定土地区画整理事業 (千葉県流山市)

URPRESS 2020 vol.60 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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鉄道と宅地を一体的に開発・整備。
子育て世代の共感を得るまちに

つくばエクスプレスの着工に合わせて始まった、新しいまちづくり。
豊かな自然と都市生活の便利さを享受できて、安心・安全なまちは特に子育て世代からの支持を得て、人口が急増している。

秋葉原駅から、つくばエクスプレスで25分。昨年10月5日の土曜日、東武野田線(東武アーバンパークライン)も乗り入れる「流山おおたかの森駅」に降り立つと、駅周辺は人々でにぎわっていた。老舗百貨店やシネマコンプレックスなどが入る大型ショッピングセンターと、ホテルが駅に直結し、周辺には多目的ホールや公園などが集まっている。周囲には見上げるようなマンション群が建ち並び、一大都市空間を形成している。

この日、駅から歩いて10分ほどの「おおたかの森センター」で駅周辺の土地区画整理事業完了を祝う記念式典が開かれた。事業を施行したのはURだ。

「これは未来に向けての新たなスタート。これからさまざまな活動が生まれ、魅力あふれるまちとして発展することを確信しています」と、URの宅地業務担当本部長の後藤 浩があいさつ。未来を担う子どもたちのために「過去と現在」「人と自然」などをテーマにした、まちの案内板6枚がURから流山市に贈呈された。

「住んでみたい」「住み続けたい」まちに

今や流山市の新拠点に変貌した流山おおたかの森地区。しかし、かつては道路や下水道が未整備のまま、それぞれの地域でミニ開発が進み、生活排水が流れ込む河川が氾濫を起こすなど、都市問題が重層化していた。そこで持ち上がったのが、鉄道整備と宅地開発を一体的かつスピーディに進める、宅鉄法(*1)に基づいたプロジェクトだ。1991(平成3)年に流山市からURへ事業要請があり、2000(平成12)年に国土交通省による事業計画認可を経て土地区画整理事業がスタート。計画的かつ一体的な事業推進で、わずか5年というスピードで、つくばエクスプレスは開業した。
*1 正式名称は「大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法」

しかし、鉄道敷地や駅周辺整備、駅前商業施設の誘致、広域幹線道路の整備や地域に生息する動植物生育環境の整備など、多岐にわたる課題に加え、地区面積約275ヘクタール、地権者約3500人、800戸以上の既存家屋がある地での事業は、容易ではなかった。流山の事業を担当したURの丸山浩史は「地権者一人ひとりの生活環境や土地に対する思いに寄り添いながら、話し合いを通じて理解を得ることが、施行者として最も重要で気を遣う部分でした」と話す。そうした苦労が実り、2019(令和元)年5月、約19年の歳月をかけた事業が完了した。

新しいまちのテーマとなったのは「環境との共生」「安心・安全」「子育て支援」だ。駅名の由来となっているオオタカが生息する市野谷の森は、近隣公園として公共用地に。さらに、国が絶滅危惧種に指定するセイタカシギなどの水鳥が生育する市野谷調整池を、NPOさとやま、江戸川大学、流山市とURらが協力して、ミティゲーションと呼ばれる手法で生物を移動させながら保全。豊かな自然を残しながらのまちづくりを行った。

また、市民グループ、大学、地権者や事業者を主体に、流山市、URが協力して「安心・安全まちづくり協議会」を設立。防犯パトロールの実施や駅前交番の設置を要請した。そのほか、子どもを預けると送迎バスで保育園まで送迎してくれる駅前保育ステーションを設置するなど、子育て環境も充実させた。

流山市都市整備部まちづくり推進課の梶 隆之課長は、その成果を「2000年の事業開始時に2400人だった人口は、2万7千人(*2)を超えました。6年連続で千葉県内での人口増加率が1位になるなど、特に子育て世代を中心に全世代の方々から選ばれるまちとして注目を集めています」と話す。
*2 2019年10月1日時点の人口

交通ネットワークの要となる、流山おおたかの森駅の西口駅前広場。
流山おおたかの森駅南口に隣接して、髙島屋をキーテナントとする大規模商業施設「流山おおたかの森S・C」が誕生した。
流山市の梶 隆之課長。「URさんのノウハウを活かし、さまざまな視点や考え方でスピード感をもって事業を進めていただきました。本市からの派遣職員へのさまざまな知識の伝授や技術指導など人材育成にも寄与していただき、感謝しています」
「安心・安全まちづくり協議会」の要望で駅前に設置された、流山おおたかの森駅前交番。
おおたかの森小中学校の校舎と並んで、式典が開かれた「おおたかの森センター」がある。
事業の成功を祝い、功の字を記した「竣功記念式典」では、URから子どもたちへ「まちの案内板」が贈呈された。
地区内6カ所に設置された「まちの案内板」にはQRコードがあり、その場所で行われてきた環境保全などの取り組みの詳細を知ることができる。子どもたちがまちの将来を考えるきっかけにとの思いが込められている。

60年の歴史を踏まえて次のステージに挑む

流山おおたかの森は、60年に及ぶURのニュータウン事業最後の地区ともなった。高度成長期の住宅不足解消のために生まれたニュータウン事業は、全国で281地区、面積にすると横浜市全域とほぼ同じ4万1500ヘクタールに及んだ。

「期限内に終えるという緊迫した局面で、組織力を挙げてひとつの目的を達成する、非常に緊張感とやりがいのある現場でした。ニュータウン事業は完了しますが、今後のURの業務において、ひとつの目的に向かって挑戦した経験は、組織として大きな糧になるはずです」と、大詰めの2年間を担当した丸山は話す。

令和に入り、新たなステージに立つ、まちづくり。自然と共生しながら、安心で便利な都市生活を満喫できる流山おおたかの森のまちの在り方は、これからのひとつの理想形ともいえそうだ。

「公共団体が事業に大変寄り添ってくださり、難題解決の場面で流山市さんが一緒に汗を流してくれたことが、結果として総合的なまちづくりを成功に導いたと思います」と振り返るURの丸山。

【阿部民子=文、竹居鉄也=撮影】

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