【URのまちづくり最前線 第29回】三宮クロススクエア東地区(兵庫県神戸市)
人中心のまちへ 新しい三宮が動き始めた!
阪神・淡路大震災から来年で30年となる神戸市では、 まちづくりの新たなフェーズが幕を開けようとしている。三宮周辺地区の動きを取材した。
三宮の課題を洗い出しその解決に動く
1995(平成7)年に発生した阪神・淡路大震災からの復旧復興を進めてきた神戸市。復興に一区切りがついた2015年、神戸市は将来ビジョン「神戸の都市の未来の姿」と「三宮周辺地区の『再整備基本構想』」をまとめ、未来に向けた都市の再整備を進める計画が動き出した。
そのなかで注目されるのが、神戸市の中心である三宮周辺地区だ。ここはJR、阪急、阪神、地下鉄、ポートライナーが乗り入れる神戸市のハブ。ところが、これら6つの駅の乗り換えが複雑でわかりにくく、駅周辺に人のための公共空間が少ないので、駅からまちの中に人を誘導するつながりが弱いという課題を抱えていた。
神戸市都市局都心再整備本部の飯塚教雄(みちお)さんは、「そこで、これらの駅をひとつの駅と感じられるようにつなぎ、まちへ誘う空間を整備することで、まちの中にたくさんの人が回遊する、人中心のまちに変えていこうという計画を、JR西日本さん、URさんの協力のもとで進めています」と説明する。
新駅ビルを中心に人が回遊するまちへ
その中心となるJR三ノ宮新駅ビルの準備工事が昨年度から始まっている。神戸の新しい玄関口となるこの駅ビルは、地上約155メートルの建物に商業施設、オフィス、ホテルの3つの機能を持たせる。特に注目されるのが地下1階~地上3階部分で、駅前に誕生する三宮クロススクエアという空間と一体となるよう、まちに開放した造りになるという。
JR西日本でこの事業を担当する地域まちづくり本部の網田将志(おうだまさゆき)さんは、「駅ビルの稼ぎどころである低層部を、三宮クロススクエアに向かう動線とすることは、ビジネスの点で見れば誤りかもしれません。ですがJRとしては、神戸市さんとともにこの三宮の魅力を磨き、その結果、たくさんの人に選んでもらえる、来てもらえるまちになることが最も大切だと考えました」と話す。
三宮クロススクエアは駅前の三宮交差点につくる人中心の空間。これまでの10車線を6車線に減らし、工事中はこの4車線のスペースを工事のために利用し、将来的にここを歩行者のための空間にする計画だ。
「私たちは震災から復興するなかで、人と人のつながりの重要性を深く認識しました。三宮のまちの活力を高め、将来にわたって都市の魅力を高めていくためには、人との出会いやふれあいがあり、新しい体験や発見ができる場所づくりが必要です。三宮クロススクエアが将来、そういう空間になるよう官民一体となってつくりあげていきます」と神戸市の飯塚さんは期待する。
URの経験をまちづくりに生かす
URがこの事業で担当する役割は3つある。第一に、新駅ビル事業に共同事業者として参画すること。次に、基盤整備の調整役を担い、限られた場所の中で行われるビル建設や歩行者デッキの新設、車線の変更といった輻輳(ふくそう)する工事を総合調整する役目。そして、これらが完成した暁には、三宮クロススクエアをいかに活用するか、エリアマネジメントで協力していく。
神戸市の飯塚さんは、「市とJRさんだけですと、利害が相反して調整が難しいことがあります。そこに第三者としてURさんが公平な立場で参画してくださり、よりよい提案をいただけるので大変助かっています」と言う。
URでこの事業を担当する西日本支社の留目(とどめ)峰夫は、「エリアマネジメントへの期待が大きいと感じています。駅ビルと三宮クロススクエアを使って、これからのまちをどうつくっていくか。そこにこれまで日本各地で培ってきたURの経験と知見を生かしていきます」と抱負を述べる。
「神戸市さんやJRさんと協議しながら、エリアを2つの階層でとらえては、という提案をしているところです。URとしてもこの事業は難易度が高く、大きなプロジェクト。やりがいがあります」
三宮周辺では25年にウォーターフロント地区にアリーナ、27年に新しいバスターミナル、28年には市役所の新庁舎2号館が完成予定で、29年度にこのJRの新駅ビル完成と続く。
震災を乗り越え、本格的に動き出した新しい神戸。その未来の姿に膨らむ市民の期待を、URはしっかりと支えていく。
【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
- ポスト(別ウィンドウで開きます)ポスト
- LINEで送る(別ウィンドウで開きます)
URのまちづくり最前線 バックナンバー
UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]
UR都市機構の情報誌[ユーアールプレス]の定期購読は無料です。
冊子は、URの営業センター、賃貸ショップ、本社、支社の窓口などで配布しています。