【URのまちづくり最前線 第31回】美浜町運動公園(愛知県美浜町)
多様な人々が集い、活気あふれる輝くまちへ
この6月、知多半島の美浜町に新たな運動公園が誕生した。パラスポーツにも対応した本格的な陸上競技場は「スポーツまちづくり」を掲げる町の核となる期待を担っている。
パラ陸上競技もできる陸上競技場がオープン
知多半島の先端近くに位置し、伊勢湾と三河湾の双方に面している美浜町。
6月30日、町の西部地域の拠点でもある名古屋鉄道知多奥田駅前に、美浜町運動公園陸上競技場・交流広場がオープンした。オープニングセレモニーでは、スポーツジャーナリストの増田明美さんらによるトークセッションなどが行われ、町内外の多くの人が新たな施設の誕生を祝った。
「運動公園全体の広さは、約8万3000平方メートル。今回は、そのなかの陸上競技場と交流広場が先行してオープンしました。グランドオープンの2028(令和10)年に向けて、遊具広場やサッカーもできる多目的広場、3×3バスケットボールができるスポーツ広場などが順次整備される予定です」と、美浜町産業建設部都市整備課都市計画係の鈴木太一係長が話す。
この運動公園の最大の特徴は、すべての人が快適で安全に利用できること。入り口から観覧スタンド、フィールド内まで段差がなく、更衣室やシャワーなどもバリアフリー。パラ陸上競技の記録会なども予定されている。
スポーツを核につくる魅力あふれるまち
海や山に恵まれた美浜町は、昭和30年代には海水浴客などでにぎわい、観光に力を注いでいた。その方向性が大きく転換したのが、2017(平成29)年だ。
「町内には、パラスポーツ研究所やスポーツ科学部を擁する日本福祉大学があります。また、海や山に恵まれていることから、以前はトライアスロン大会も開催していました。そこで、日本福祉大学と連携して、新たな運動公園を整備。人の流れを変えて民間の投資を促進し、町を活性化するべく、スポーツを活用したまちづくりを始めました」と、美浜町産業建設部都市整備課の平野和紀課長が説明する。
スポーツまちづくりの軸ともいえるのが、冒頭で紹介した美浜町運動公園だ。最新設備を備えた陸上競技場を含む整備は、人口2万人強の町にとっては初の大事業となる。そこで事業遂行のパートナーに選んだのが、URだ。事業を担当するURの竹内誠は「美浜町とは、約30年前に『美浜町総合公園』を整備させていただいてからのご縁です。今回も、パラ競技に特化したい、などのご要望をお聞きしながら、町の方と調整しつつ事業を進めています。また、この公園は防災公園の役割も担っています。いざというときは観光客なども含めた1万人の方々の一時避難場所にもなるよう、国の補助の対象となる防災対策メニューなども活用しながら、整備をしています」と話す。
工事には、この土地ならではの苦労もあるという。地盤に細かい砂が含まれるため、工事による土砂が海へ流れ込むと特産品である海苔の養殖に影響が出てしまう。そのため、養殖期間中は水質調査を行い、慎重に工事を進めている。
子どもから高齢者まで親しめる公園に
スポーツを核としたまちづくりは、ソフト面でも着々と進んでいる。
22年には、美浜町と日本福祉大学とで『スポーツまちづくり推進室』を設立。「スポーツでつなぐ、美浜の未来」をスローガンに、スポーツを核としたまちづくりを打ち出し、協働して事業を進めている。
「高齢の方へは、運動への興味喚起によりフレイル予防や介護予防を促し、ゆくゆくは医療費の減少へつなげたい。子どもたちには、英語を使った体育の授業や課外活動を行っています。また、県内外の大学などの合宿や大会誘致を進め、地元消費を拡大。将来的には企業誘致や産業振興、若者人口の確保までつなげられればと考えています」と話すのは、美浜町教育委員会教育部生涯学習課運動公園係の前田健二係長だ。
「公園全体の整備は、まだ半分程度。引き続き残り部分の整備に尽力し、将来的には公園の使い方などのソフト支援も行い、町の人々の健康に役立ち、人が集まり、親しめる空間にしたい」と竹内。
美浜町は23年、スポーツ庁から「スポまち!長官表彰」を受けた。全国を先導する優良な「スポーツ・健康まちづくり」に取り組む町として、国の後ろ盾も得た。オリンピック・パラリンピックで大いに盛り上がったスポーツ熱を追い風に、美浜町のまちづくりへのURの伴走は続いていく。
【阿部民子=文、菅野健児=撮影】
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