命と暮らしを守る防災の基本(14)
「非常用浄水器」はフィルターの種類を知って選ぶ
ロシアのウクライナ侵攻以降、問い合わせが増加しているという非常用浄水器。
災害時の断水への備えに用意しておくと安心です。
今回は非常用浄水器の選び方と活用のポイントをご紹介します。
非常用浄水器の性能とろ過膜
今年8月の「南海トラフ地震臨時情報」直後、西日本のスーパーでペットボトルの水が品切れになったことがあります。飲料水の大切さを誰もが実感した出来事ですが、昨今の災害や不安定な世界情勢を受け、非常用浄水器への関心が高まっています。
浄水器の性能は、その大部分が「ろ過膜(フィルター)」の種類で決まります。日頃、水道水をおいしくするために浄水器を使用している家庭も多いと思いますが、この浄水器に使われているろ過膜は「水道水をおいしくする」ためのもの。一方、防災用の「非常用浄水器」に求められるのは「水道水以外の水も安全にする」性能。非常用浄水器は人体に有害となる不純物を取り除いて飲料水を作り出します。この不純物には次のようなものがあります(サイズの大きなものから掲載)。
非常用浄水器に使われるろ過膜(フィルター)には次のような種類があり、取り除きたい不純物の大きさに合わせて、ろ過膜を選択する必要があります。
非常用浄水器の種類と選び方
1.「携帯」できるタイプ
非常用浄水器の中で最も小型で、防災用途だけでなく、アウトドアや海外旅行などでも使われる携帯浄水器です。携帯浄水器には「MF膜」が使われているものが多く、寄生虫や細菌の除去は可能ですが、ウイルス・化学物質・金属イオンなどの除去はできません。
携帯浄水器は、山間部などで「飲めるが寄生虫などには注意が必要」な湧き水など、「飲めるがおなかをこわす恐れのある水」を安全にする用途に向いています。詳細が不明の水を飲むのには向いていません。
2.「据え置き」タイプ
防災用途に向いているのが「据え置きの非常用浄水器」です。写真はタンクに水を入れ、圧力をかけることで蛇口から綺麗な水を取り出せるタイプ。フィルターには「MF膜」を用いており、寄生虫や細菌などをブロックできます。性能としては前述の携帯浄水器と同程度ですが、フィルター寿命が長く、また大量の水を短時間で処理することができます。
基本的には「もともと飲める水」を安全にするために使います。入浴剤の入っていないお風呂の水、降雨直後を除く雨水、水質検査済みの井戸水、飲めるとわかっている山の中の湧水などを、安全に飲むために使うことが適しています。
3.「RO膜」の非常用浄水器
「どのような水でも飲料水に変えたい」ニーズには、RO膜(逆浸透膜)を用いた非常用浄水器を使用します。原理上は地球に存在するあらゆる水から、寄生虫・細菌・ウイルス・化学物質・金属・放射性物質などを取り除き、飲料水にすることができます。とはいえサイズ・価格ともに大きくなるため、気軽に準備できる物ではありません。
非常用浄水器選びについて
飲料水を作ることは大変です。ふだん水道の蛇口をひねればいくらでも飲料水が手に入りますが、これはとてもすごいことなのだと改めて認識し、非常時への備えをお考えください。
なお、水の備蓄の基本は「ペットボトル水」を準備することです。非常用浄水器はあくまでも最後の手段。最初からあてにするのではなく、まずは備蓄水を用意するようにしてください。
プロフィール
たかにともや
備え・防災アドバイザー。地震対策からパンデミックへの備えまで、各種防災情報を講演会やメディアを通じて解説するアドバイザー。防災系YouTuberとしても活躍中。最新刊は『今日から始める 家庭の防災計画』(徳間書店)。
【高荷 智也(ソナエルワークス代表)=文】
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