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命を守る防災新常識(1)

  • URPRESS 2025 vol.82 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

浸水避難時に長靴はNG?

大雨による浸水時に避難する際、「長靴を履いてはいけない」というアドバイスを聞いたことはないでしょうか。長靴の中に水が入ると動きづらくなり、脱げる恐れがあるから、というのが理由です。しかし、浸水避難で長靴を履くことは、必ずしもNGにはなりません。
状況により靴を選択することが重要です。

長靴はすぐに脱げるのか?

写真左から紐で縛れるぴったり長靴、靴紐スニーカー、脱ぎ履きしやすいゆるい長靴の写真

浸水避難時に長靴を履くと、本当にすぐ脱げてしまうのでしょうか。実験してみました。比較したのは写真の3足。左から「ひもで縛れるピッタリ長靴」「靴ひもスニーカー」「脱ぎ履きしやすい、ゆるい長靴」です。

まず、浸水深が数センチ、くるぶし程度の深さの場所を移動する場合、スニーカーは浸水してグシャグシャになりますが、長靴はいずれも快適に歩くことができます。ちょっとした浸水であれば、長靴がおすすめです。

続いて浸水深が数十センチ、ひざ程度の深さの場所を移動する場合、長靴には水が入ります。ただ、水深の深い場所をゆっくり歩き続ける場合は、長靴に浸水しても脱げることはなく、そのまま歩行できました。一方、水深の深い場所と水のない場所を出入りするような状況では、ゆるい長靴は靴の中に入った水の重みで脱げそうになりますが、ひもで縛れるピッタリ長靴が脱げそうになることはありませんでした。

浸水避難時の大原則

膝上まで水に浸かっている写真

台風・大雨時の避難の大原則は「沈む前に逃げる」ことです。大地震による津波は突発的に生じますので、走って逃げる準備などが必要になりますが、洪水などによる避難は事前に避難情報が発表されますので、浸水が始まる前に避難を完了させることができます。

乳幼児や高齢者、体の不自由な家族がいるなど、避難に時間がかかる場合は、自治体から「警戒レベル3・高齢者等避難」が発表された段階で避難開始。その他の場合も「警戒レベル4・避難指示」が発表されたら避難します。浸水前の避難であれば、靴はなんでも大丈夫です。もちろん、マンションの高層階など、洪水が発生しても沈まない高さの部屋に住んでいる場合は、避難する必要はありません。

なお、避難が遅れ、すでに浸水が生じているなかで屋外避難を行う場合は、写真のように杖や棒などを持ち、足下にフタの外れた側溝やマンホール、用水路などがないかを確認しながら移動してください。こうならないよう、早めの避難を心がけることが大切です。

浸水状況に合わせた靴選び

状況に合わせた靴選びのYes/Noチャート図

ひもで縛れるピッタリ長靴は、どのような状況でも脱げることはほとんどないのでおすすめします。脱ぎ履きしやすいゆるい長靴は、避難場所までの道中に深く沈んでいる場所がなければ、履いてもよいでしょう。しかし、長靴が水没するような場所があるときや、道中の状況がよくわからない場合は、ゆるい長靴を履いていると水の重みで脱げてしまう恐れがあります。この場合は、靴ひもスニーカーをおすすめします。

また、浸水が生じると、ガレキや危険物が流れてきたり、下水道が氾濫して、街中に汚水があふれたりすることがあります。このとき肌を露出していると、ケガや破傷風などの感染症の恐れがあります。どうせ濡れるからと、短パン・スニーカーでの避難は絶対にNG。長靴があれば、足を守るために長靴がベストですし、スニーカーで逃げる場合も、タオルと着替えを防災リュックに入れた上で、長ズボンなどをはくようにしてください。

プロフィール

たかにともや

備え・防災アドバイザー。地震対策からパンデミックへの備えまで、各種防災情報を講演会やメディアを通じて解説するアドバイザー。防災系YouTuberとしても活躍中。最新刊は『防災リュック はじめてBOOK』(徳間書店)。

たかにともやさんの写真

【高荷 智也(ソナエルワークス代表)=文】

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