【楽しい団地】千葉幸町団地(千葉県千葉市)
多文化交流の一歩を、この団地から
日本に住む外国人が年々増加するなか、千葉市の千葉幸町団地では、地元警察と千葉市との共催で、多文化交流をテーマにした内容盛りだくさんのイベントが開催された。
警察とともに開く異色のイベント

梅雨とは思えない真夏の日差しが照りつけた6月の土曜日。千葉幸町団地の「ふくふく広場」で開催された「多文化ふれあいフェスタ」には、子ども連れのファミリーや若者グループ、高齢者のお仲間だけでなく、アオザイを着たベトナム人など外国の方も集まって、楽しい時間が流れていた。じつはこのイベント、主催はURだが、共催は千葉市と千葉西警察署、運営協力に千葉県警察や千葉市内の警察署、自衛隊など、他のイベントではお目にかからない名前が連なっている。
実際に当日のメインステージは、千葉県警音楽隊の華麗な演奏から始まり、ネパール舞踊、和太鼓演奏と続き、サブステージでは災害訓練の展示や、交通安全教室に警察犬も登場。広場には白バイに乗って写真が撮れるコーナーや、レスキュー車両、自衛隊高機動車も展示され、さらに千葉市国際交流協会のブースでは外国の方向けのよろず相談会も行われた。
じつに盛りだくさんのイベントだが、そもそも団地のイベントになぜ警察が?
担当する千葉県警察本部国際捜査課外国人総合対策室長の本田 潔さんと、千葉西警察署刑事官の石山良江さんに質問すると、意外な答えが返ってきた。
「いま、警察では年々増加する在留外国人の安全確保に向けた総合対策に力を入れているのです」
警察では、在留外国人の犯罪被害を防止し、外国人コミュニティーが日本の社会から孤立・分断するのを未然に防ぐため、専門の部署をつくって対応にあたっている。今回のイベントは、そのひとつの試みだというのだ。
「URさんからイベントの相談を受け、ぜひ一緒にと企画が進みました。これほどの規模のイベントは初めてだったのですが、たくさんの方に来ていただいて、ホッとしています」と石山さん。
イベント会場で交通安全教室や防災の展示などを行ったのは、日本の方へのアピールももちろんだが、外国の方に日本の交通ルールや、防災知識を少しでも知ってほしいから。本田さんは、「何か困ったことがあったら、警察を頼ってほしい。日本の警察を信頼してほしい。そのことを皆さんに伝えたかったのです」といい、「いま日本は、外国の方をよき隣人として迎え入れるための過渡期だと思います。URの団地には外国の方も多く住まわれていて、まさに現代日本の縮図。そこで今回のような多文化共生イベントを開催したことは、とても意義があると思います」と話してくれた。




右/警察車両と綱引きだ!

お互いを知るための大切な一歩
共催した千葉市でこのイベントを担当したのは、国際交流課の寺井 隆さん。
「外国人とのトラブルが生じる前に、お互いのことを知ることが大切です。そのために何かできないか、と考えていたときに、このイベントのお話をいただき、すぐに参加を決めました」と説明する。
千葉市が行ったアンケートでは、ここ数年で「外国人と日本人の理解が進んでいない」と回答する人の割合が増加しているそうで、寺井さんは、「それは相手を知らない、言葉がわからない、日本のルールを知らないといった、すれ違いの状況が根幹にあると思うんです。今回のイベントが、理解を深めるきっかけになり、これを足掛かりにして日常のなかに交流の機会が増えることを期待しています」と言う。
会場となった「ふくふく広場」は、かつて保育園があった場所で、団地自治会の要望を踏まえて交流拠点として整備した。URでは今年の3月に広場が完成してから、月1回のペースで交流イベント「持ち寄りピクニックDAY」などを開催。ベトナム人ファミリーや日本の親子が参加して、子ども同士が一緒に遊んだりと、ゆるやかなつながりが生まれ始めていた。
担当するURの駒形直也はこう話す。
「良好な居住環境を維持するためには、お互いを知り、理解し合うことが必要だと考えています。このようなイベントを通じて外国の方と顔を合わせ、他国の文化を知ることにより、親しみがわき、災害やトラブルが発生したときにも声を掛け合えるようになる。今日のようなイベントを積み重ねることで、双方の垣根が少しずつ取り払われて、国籍や年齢を問わずさまざまな方が交流する団地になっていくと思います」
地元の警察と行政との合同イベントというUR初の試みは、お互いの強みを生かしながら、多文化共生社会に向けて確実な一歩を踏み出した。




【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
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