【楽しい団地】洋光台団地(横浜市磯子区)
集会所が新たなコミュニティー拠点に
1970(昭和45)年に誕生した洋光台団地は、中央・北・西の3エリアに約3200世帯が暮らす大規模団地。
昨年、北エリアの集会所と広場の改修が終わり、地域の交流スペースとなるカフェを中心に、新たな風が吹き始めている。
人と人をつなぐコミュニティーカフェ
横浜駅からJRで約20分、洋光台駅で下車して北へ向かって緩やかな坂を上っていくと、人が集まっている場所があった。昨年改修工事が終わり、瀟洒(しょうしゃ)な建物に生まれ変わった洋光台北団地の集会所一帯だ。階段を囲むように回遊できる。
特ににぎわっているのは、集会所の一角にオープンしたコミュニティーカフェ「よっしーのお芋屋さん」だ。カフェを営むのは、種子島産の「熟成つるし安納芋」との出会いで人生が変わったという、よっしーさん(吉川ゆうじさん)、優貴さん夫妻。“焼き芋から笑顔に”をモットーに、農家から直接仕入れたこだわりの15種類ほどのお芋を、それぞれの特性に合わせて熟成させ、炭火焼きなど、おいしさを引き出す方法で提供している。あわせて、おすすめの天然調味料や有機野菜、ドリンク類も販売している。
以前からさまざまな場所でイベントや企画を手がけ、人々をマッチングさせてきた、よっしーさん。
「僕たちの役割は、みんなが楽しめる場所をつくり、ここをベースに人と人をつなぎ、まちを元気にすることです」と話す。昨年、洋光台に移り住んで感じたのは「風が通り、人の雰囲気がいいこと」。そして「人と人をつなぐ人がいること」だという。コロナ禍で制約はあるものの感染予防に努めながら店内でミニライブなどのイベントも開いている。次々とやって来るお客さんに気を配り、笑顔で会話を交わすよっしーさん夫妻やお客さんの様子から、このカフェがすでにコミュニティーの重要な拠点になっていることが伝わってくる。
集まって住む魅力を!団地の未来プロジェクト
洋光台団地は、団地を核としてまち全体の魅力向上を目指すURの「団地の未来プロジェクト」のモデルエリアでもある。このプロジェクトのひとつとして、建築家の隈 研吾さん、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんのディレクションのもと、これまでに洋光台中央団地の外壁や広場などの改修を行ってきた。いずれも古いものを生かしながら、新たな価値を提案するもので、モダンで開放的になったと地域の人々に喜ばれている。
北エリアの集会所もプロジェクトの一環として、建築アイデアコンペで選ばれた最優秀案(デザインアーキテクト:NAAW)の設計をもとにリノベーション。隣接する広場も改修した。
「住棟と広場、集会所のつながりを意識して、もともと広場にあった柵や壁を外し、土と砂利だった地面を芝生で覆いました。本当に必要なものは何かを考え、不要なものをそぎ落としてシンプルにしました」と佐藤可士和さん。広い空間に置かれているのは、ステージにも遊具にもなるデッキとベンチだけ。目に入る住棟、広場の色彩は、白と木と緑の色で統一している。その結果、広場は見違えるほど明るい空間に変身。夜になるとベンチの下の間接照明が灯り、リゾートのような雰囲気になる。
「主役は住んでいる人や使う人。URの団地ならではのかなり贅沢なこの空間が、これからどんなふうに使われるのか楽しみです」と佐藤さんは期待を寄せる。
改修着工時から関わってきたURの中川 匠は、「可士和さんディレクションによる改修により、団地のもつポテンシャルを再発見しました」と微笑む。そして、「団地の未来プロジェクトの取り組みが、今後、他のUR団地のモデルになれば」と意気込む。
変わっていく団地の様子を喜ぶ地域の人たち。その笑顔を見ていたら、次々と新しいことが始まりそうな気がしてきた。さわやかな風が洋光台に吹いている。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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