【団地最前線2】千里ニュータウン(大阪府吹田市・豊中市)
環境を守り、居住性をアップ
「千里グリーンヒルズ」が誕生
大阪の千里ニュータウンは誕生から60年近い年月が経ち、団地再生事業が進められている。
URの新たな団地の名称は「千里グリーンヒルズ」。より快適な居住性能を確保しつつ、従来の環境のよさを生かした、これからの千里ニュータウンの姿がここにある。
緑と丘をイメージするグリーンヒルズに統一
東の多摩、西の千里と言われる日本のニュータウンの先駆け、千里ニュータウン。まちびらきは1962(昭和37)年。丘陵を生かした1160ヘクタールものエリアに計画的に団地が配置され、1975年にはニュータウン全体で人口が12万8000人を超えた。まちの約21パーセントが公園や緑地であるのも特徴で、豊かな自然の中に続く落ち着いた街並みは、60年の時を経て、ますます魅力を増している。
この千里ニュータウンで建て替えが進んでいる。URでは、まず新千里東町団地と千里竹見台団地の団地再生事業が始まり、昨年10月に新しい住棟が完成、入居が始まった。
この団地再生事業を機に、新しい団地は「千里グリーンヒルズ」という名称に統一されることになった。計画担当・小野田和晃が説明する。
「『千里グリーンヒルズ』には、千里ニュータウンとUR賃貸住宅の魅力のひとつでもある緑と屋外空間、そして暮らしの中で感じる豊かさや心地よさを育む舞台にしていきたいという想いを込めています」
小野田は千里ニュータウンのブランディング検討を行うURのワーキンググループのメンバーだ。このグループはUR西日本支社の若手社員が中心で、計画から設計、管理、営業までを網羅したメンバー15名で構成されている。
千里中央駅にほど近い位置にある新千里東町団地の計画担当・夫馬千尋(ふま ちひろ)は「建設から50年が経過。多様な世帯が暮らせる住戸プランを用意しました」と話す。
完成した千里グリーンヒルズ東町は、高さの異なる3棟の建物が、中庭をゆるやかに囲むように建つ。
設計担当の寺澤裕実子は「東町の既存住棟は、『囲み型配置』がゆるやかにつながっており、それを踏襲しながら、千里グリーンヒルズ東町を設計しました。中庭を確保しつつ、庭を完全にふさがず、適度な抜け感をつくるよう工夫しました」と説明する。歩いてみると、住棟から中庭へと自然に足を運びたくなるような、ゆったりした雰囲気がある。
千里のシンボル
スターハウスも新しく
150種以上もの樹木が植えられた「千里みどりのさんぽみち」に沿って広がるのが千里竹見台団地。こちらも南側と北側エリアでそれぞれ1棟ずつ建て替えが完了。新しい「千里グリーンヒルズ竹見台」には、団地のシンボルであった高層スターハウスが生まれ変わった。
スターハウスというのは、建物を上空から見たときに形状がY字形で星のように見えることから名付けられた愛称。
「駅からも見える竹見台の高層スターハウスは、まちの景観として人々に愛されてきました。そこで建て替えに際しても、居住性をアップしてこれを踏襲しました」と計画担当の山崎貴之。
寺澤も、「建て替え前の中廊下を、中庭をはさんだ二重廊下(ツインコリドー)型にすることで、太陽の光が上から降り注ぎ、建物全体が開放的になったと思います」と説明する。
建て替えに際しては、東町、竹見台とも風呂や洗面、キッチンなどの室内設備に真新しいものを導入するだけでなく、ベランダを広くとったのも特徴。建物全体の色彩やサインも一新し、千里グリーンヒルズのブランド力アップを目指している。
長く住む人々に愛され新たな住人も歓迎
大規模な団地の建て替えは、長い年月が必要な根気のいる事業。お住まいの皆さんにも不便をかけることになる。だが、新しくなった千里グリーンヒルズでの住み心地に満足してもらえれば、担当者の苦労も吹き飛ぶ。さっそく千里グリーンヒルズ東町に入居された団地自治会の皆さんに感想を聞いてみた。
「ベランダが広くて快適」
「風呂が入りやすくなって安心」
新しい集会所に集まっていただいた自治会の皆さんからは、住居に満足する声が次々に聞かれた。
皆さん、この団地に住んで40年以上。大阪の中心部や空港にも近い立地のよさ、周辺環境のよさが自慢のこのまちを、愛してやまない人々だ。
「ここならまだまだ長生きできるな」と笑い合う皆さん。
URの「千里グリーンヒルズ」が、これからの千里ニュータウンをますます魅力あるまちにしてくれそうだ。
【武田ちよこ=文、青木 登=撮影】
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