【団地最前線 SPECIAL】「本」でつながるコミュニティー スペースに、多世代が集う シャレール東豊中 (大阪府豊中市)
「本」でつながるコミュニティースペースに、多世代が集う
昨年11月、団地集会所に誕生したステキなコミュニティースペース「ぼん・しゃれーる」。
本で人と地域をつなぎ、多世代の交流を促す
新しいコミュニティースペースに、人々が集まってくる。
集会所に新しいスペース誕生
カーブした道に沿って並ぶ木立の向こうに、ガラス張りの白い建物が見える。中をのぞくと廊下に置かれた木製の棚に、たくさんの本が並んでいる。晴れていれば、日差しがたっぷりと注がれる、気持ちのよい空間だ。
ここが昨年11月に、シャレール東豊中の集会所を改修して誕生したコミュニティースペース「ぼん・しゃれーる」。施設名は地域の皆さんからの公募で、「よい」×「本」×「ボンジュール」に団地名の「シャレール」を掛け合わせて名づけられた。
中に入ると、玄関には何人もが一度に座れる大きな木のベンチがある。ここから延びる廊下の壁沿いに、新着コーナー、大人の本の棚が並び、椅子のある学習スペースの先、廊下の一番奥には畳敷きのキッズスペース。外にはウッドデッキが敷かれ、木製のテーブルセットが置かれている。
ここは廊下スペースを活用したオシャレな団地のコミュニティースペースだ。コミュニティースペースの中心に「本」を据えたいきさつを、この事業を担当するURの川村大輔が説明する。
「この団地には、昔から読み聞かせなど、未就園児向けの本に関わる活動をしている『仲よし文庫』というボランティアグループがあり、今も集会所を使って週1回の活動が続いています。本はこの団地になじんでいますし、本なら子どもから高齢者まで、多世代とつながれるのではと考えました。ちょうど集会所の廊下に、使われていない本棚が置かれていたこともあり、そこからぼん・しゃれーるが生まれました」
ぼん・しゃれーるのある中央集会所は、2004(平成16)年に団地が建て替えられたときに誕生した。グラウンドに面した誰もが来やすい場所にあり、集会所の利用者は多い。特に木曜の午前中に行う「ぐんぐん元気塾」には60人近い参加者があり、月に一度開催する子育てサロンにも、小さな子どもと母親が集う。
「『ぼん・しゃれーる』はそれらの活動が行われる2つの集会室の、手前の廊下の部分を使ったコミュニティースペースです。体操に参加した人たちが帰りに立ち寄ったり、これまであまり集会所に来なかった小中学生たちが宿題をしに寄ったりと、集まる人が増え始めています」とURの杉田恵子は話す。
今も毎週木曜に第2集会室を利用して「仲よし文庫」の活動を行っている石本博子さんは、「いいものができました」と笑顔で話す。
「ここは水曜と日曜以外は開いているので、いつでも誰でも来られます。私も知り合いの美容室から譲ってもらった本をぼん・しゃれーるに持ってきたり、中学生たちに『ここで勉強していいのよ~』と声をかけて呼び込みをしたり(笑)、陰ながら応援しています」
一緒に活動する渡辺波留美さんも「高齢の方には、図書館は勉強する所だという意識があるんです。でも、ここなら自分で自由に本を選んで借りることができるので、喜んでいる人が多いですよ」と言い、仲間の高江洲佳子さんも、ぼん・しゃれーるをよく利用していると話してくれた。
多様な活動をつなぎ さらに交流を促す場へ
さらに、民間企業とコラボしながらさまざまな企画を行う「たのしみつなぐプロジェクト」の一環として、毎週金曜の午後、UR職員が第2集会室に常駐し、企業と提携してコーヒーを無料でふるまっている。こちらを担当するURの小泉海斗によると、「これまで集会所の催しにあまり参加しなかった中高年の男性が、ふらっとコーヒーを飲みに寄っておしゃべりしていくことも多く、その人たちもぼん・しゃれーるを利用しています」と言う。
いつもは管理サービス事務所に常駐している生活支援アドバイザーも、週2回、ぼん・しゃれーるに詰めて、高齢の方の相談にのっている。
「ここをつくる前には、集会所を利用する方々に意見をうかがい、けっしてURの独りよがりにならないように気をつけました。入り口に置かれた大きなベンチも、体操の後にみんなでおしゃべりする場所がほしい、というご意見から実現させたものです。これからも皆さんの活動に寄り添いながら、ぼん・しゃれーるを、多世代交流の拠点にしていきたい」とURの杉田。
春になるとグラウンドには桜が咲き、花に誘われて団地の人たちも集まってくる。その中心にぼん・しゃれーるがある。
【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
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