【団地最前線15】団地内幼稚園と連携 多世代をつなぐイベントで活性化(福岡県福岡市)

団地内幼稚園と連携 多世代をつなぐイベントで活性化
福岡市の中心部からほど近い早良(さわら)区にある原団地。ここでは多世代が交流し支え合う社会の実現に向け、幼稚園などと連携し、イベントを開催して活性化を模索している。
クリスマスイベントを幼稚園と共催
「メリークリスマス!」
団地集会所前の広場では、サンタクロースがサクソフォンでクリスマスソングを奏で、隣のサンタが作るシャボン玉に、子どもたちが歓声を上げている。昨年12月7日、福岡市の原団地で行われた「クリスマスラリー」は、午前10時から12時までの間に、300名を超える親子が集まり大盛況だった。
子どもたちは、団地の商店街や郵便局の前に用意されたスタンプを順番に押していく団地スタンプラリーに参加。ラリーのゴールは団地集会所の庭になっていて、ここで焚火を囲んでマシュマロを焼いて食べる楽しみも。集会所の中ではクリスマスカード作りのほか、松ぼっくりでツリーを作るワークショップや、絵本の読み聞かせ・交換会なども行われた。商店街にあるカフェ「はらの木」では、マルシェやプチケーキ作りのワークショップを開催。あちこちから子どもたちの楽しそうな笑い声が聞こえ、親御さんたちの笑顔も見える。
「予想以上にたくさんの親子が来場され、皆さんに喜んでもらえて、ほっとしています」
このイベントを担当したUR九州支社の五嶋薫子は、胸をなでおろしていた。
今回で2回目となるクリスマスラリーは、UR、原団地自治会、福岡原団地郵便局、原団地商店街とともに、同団地内にある大原幼稚園が共催者に名を連ねている。
大原幼稚園は1967(昭和42)年、原団地の誕生と同時に開園した。昨年6月には、地域貢献のひとつとして、団地商店街にカフェ「はらの木」もオープンさせている。高齢者や子育て世代など、多様な世代の人が生き生きと暮らせるミクストコミュニティを目指すURが、この大原幼稚園との連携を始めたのは2020年のことだ。
「私たちも地域密着の幼稚園でありたいと考えていたので、URさんからのお声掛けに、『ぜひ』とお答えして、まずは一緒にイベントをやりましょう、ということになったのです」。大原幼稚園教諭の尼ヶ崎眞弓美さんがこう説明する。
さっそくその年から、団地内の遊具などを見つけてビンゴ用紙にシールを貼る「おさんぽビンゴ」などのイベントを年2~3回開催。ほかにも、毎年大原校区社協が主催している、夏場の集会所開放「クールシェアカフェ」の一部として、今年はURとともにカフェ「はらの木」が協力。参加した小学生にかき氷をふるまい、高齢者だけでなく多世代の居場所となった。そしてこの日のクリスマスラリーにも保護者サークルのメンバーとともに積極的に参加、マルシェには幼稚園の保護者の関係者からの出店もあった。








団地での交流から地域へ広がるつながり
URの五嶋は、「今日のイベントは地域の皆さんに団地を知ってもらうことと、イベントを通して幼稚園をはじめ商店街や郵便局の方、自治会の皆さんなど、関係者同士が顔見知りになり、よりよい関係を築いていきたいというねらいがありました」とその目的を説明する。
団地自治会の会長である黒岩宣征さんは、このイベントのチラシを近隣の小学校でも配れるように手配した。それを見て来場した親子も多数いたので、URの五嶋も感謝しているという。
「URの五嶋さんからは、イベントの準備や進捗について、しょっちゅう電話をもらいましたよ(笑)。自治会は高齢化して活動がやや低迷していますが、幼稚園をはじめ商店街などの皆さんと一緒になって、楽しく団地を活性化していければいい」と黒岩会長。
イベント当日、サンタクロースに扮してサクソフォンを吹き、シャボン玉を飛ばしていたのは、自治会のメンバーだ。「できる人が、できる時間に協力してくれればいいんです」という黒岩会長の言葉通り、無理なく楽しみながら協力している様子だ。
カフェ「はらの木」の岡本彩花さんは、「ふだんから幼稚園に来られるママたちだけでなく、団地にお住まいの高齢の方々にも、よく利用していただいています。皆さん子どもたちに優しくて、幼稚園の子どもに鉛筆の持ち方を教えてあげたりしていますよ」と話してくれた。
URの五嶋は「団地での交流をきっかけにして、団地の中だけでなく、地域全体で多様な世代が交流し、支え合える関係をつくっていきたい」という。
そのために関係先との連携を深め、今後もさまざまなイベントを仕掛けながら、試行錯誤していくつもりだ。


【武田ちよこ=文、青木 登=撮影】
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