【団地最前線9】「DANCHIつながるーむ」で夏休みの子どもの居場所をつくる 南港ひかりの団地 (大阪府大阪市)
「DANCHIつながるーむ」で夏休みの子どもの居場所をつくる
今年の夏、関西の8つの団地で「DANCHIつながるーむ」が開かれた。これは団地の集会所を利用して、夏休み中の子どもたちのために自習室や講座、ワークショップを開く取り組み。大阪市の南港ひかりの団地を訪ねると、集会所は子どもたちの笑顔と熱気にあふれていた。
子どもたちは全員天才画家だ
南港ひかりの団地の集会所では、パパンダ先生による『絵具で「ツクル・ミラクル」』が始まっていた。参加するのは幼稚園児と小学生の16人。祖父母と一緒に参加している子どももいる。
子どもたちはパパンダ先生が持ってきたカードの中から好きな絵を選び、なぜこの絵が好きなのかを話したり、一部分が隠された絵を見て、隠されたところに何が描かれているかを想像したり。パパンダ先生は子どもたちの思いを引き出しながら、みんなをどんどんアートの世界に引き込んでいく。
そしていよいよメインイベント、絵具と割り箸を使って、色画用紙の上に自由に絵を描き始めた。絵筆は使わない。絵具を指や割り箸で延ばして、自由奔放に紙の上に色彩を広げていく。最後に一人ひとりが作品を手に、「自分の絵のどこが好きか」を発表。みんな笑顔で拍手を送っている。
小学生の子どもと参加した母親は、「家ではこんなふうに思い切り絵を描くなんてできないので、子どもも楽しそう」と喜び、この団地に転居して日が浅いという母親は、「こういうイベントがあると、子どもだけでなく、私もママたちと知り合えるのでうれしい」と話していた。
夏休みの子どもの居場所を提供
「DANCHIつながるーむ」を企画したURの川村大輔に、そのねらいを聞いた。「両親とも仕事を持っている家庭が増えるなか、夏休み中の子どもの居場所がないことが社会課題となっています。これを解決し居場所をつくることは、子どもだけでなく、親の支援にもつながります。そこでURでは夏休み期間中、団地の集会所を子どもたちの居場所にしようと、この企画を考えました」
時期をずらしながら関西の8団地で行ったワークショップは、「団地の材料を使った時計作り」「おもしろ紙芝居フェスティバル」など、どれも興味深いものばかり。各団地の特性を見ながら、講座の講師たちと一緒にコンテンツを練り上げた。内容によって1時間から2時間、ほとんどが参加無料だ。未就学児は保護者同伴だが、小学生は子どもだけで参加でき、企画によっては保護者も一緒に参加できる。「担当のUR職員が各団地に1週間、常駐したので、より詳細に団地を見ることができました。参加者と対話し、つながることができたことは、貴重な経験です」と川村。
DANCHIつながるーむ」は今年が初めての開催だ。団地内だけでなく、近隣にもチラシを配るなどして周知に努めたが、一番効果があったのは、参加した母親たちの口コミだったという。母親が、これ面白いよと友達に声をかけ、その輪が広がり、日を追うごとに参加者が増えていったそうだ。
集会所を核に多世代がつながる
南港ひかりの団地集会所では、午後から行われる「リアル樹木図鑑をつくろう」の準備が始まっていた。
これは団地に植えられている樹木から採集してきた本物の葉っぱを使った、自分だけの図鑑を作る企画。コーディネートするのは、URコミュニティ大阪住まいセンターでグリーンマネージャーを務める天野克信だ。
「子どもたちに、自分たちの住んでいる団地に植えられている多種多様な樹木に少しでも興味をもってもらい、季節ごとに変化する樹木を観察して、心豊かな気持ちを持ってもらえたらうれしいですね」と企画のねらいを教えてくれた。参加者たちが集まり始めた。隣の部屋では、近隣の大学生がボランティアで子どもたちの勉強を見る「自習室」も開かれている。
その様子を見ながら川村が言う。「団地に住んでいても集会所を利用したことがない人が多いので、その人たちに集会所を知ってもらうことも、この企画の目的の一つです。集会所にはキッチンもあり、子どもの誕生日会やママ会などもできます。ここを核にして団地内外の多世代の人々がつながることができるはず。今回の企画は、その試みの一つでもあるのです」
参加した方々のアンケートを分析して、今後もこの企画を展開していきたいと話す川村。親と子と祖父母たちが、団地集会所に集う夏休み。子どもたちには思い出深い一日になったはずだ。
【武田ちよこ=文、菅野健児=撮影】
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