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【URのまちづくり最前線 第27回】大手通坂之上町地区第一種市街地再開発事業(新潟県長岡市)

URPRESS 2023 vol.75 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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人をつなぐ、未来への懸け橋「米百俵プレイス ミライエ長岡」オープン

この夏、長岡市の中心市街地に誕生したスポットが話題を集めている。図書館「互尊文庫」と産業振興拠点「NaDeC BASE(ナデックベース)」の複合施設「米百俵プレイス ミライエ長岡」だ。

おしゃべりOKのオシャレな図書館

長岡市の中心市街地、大手通坂之上町地区に「米百俵プレイス ミライエ長岡(以下、ミライエ長岡)」がオープンしたのは7月22日。オープニングイベントでは、選書を担当したブックディレクター・幅 允孝(はば よしたか)さんの図書館案内や、厚切りジェイソンさんのトークショーなど多彩なイベントが開催され、にぎわった。

明るくてオシャレな空間だというのが第一印象です。開放感があって、お互いの動きが見える、コンセプトどおりの居心地のよい空間になったと思います」

そう話すのは、長岡市ミライエ長岡担当部長の五十嵐正人さん。居心地のよさは、オープンから1カ月で5万人もの人が訪れたということからも明らかだ。

ガラス張りで吹き抜けのある図書館は、見通しがきく高さにおさえた書棚を迷路のように巡る配置。ソファーや椅子があちこちにあり、老若男女が本や雑誌を読んだり、勉強したり。書棚は「自分らしく働く」「長岡で生きる」などのテーマ別の構成で、「あれ、こんな本があるの?」と、あちこちで足が止まる。

平日の夕方からは中高生が大勢やって来て、閉館の21時まで過ごす人も多いという。造りだけでなく、飲み物や軽食の持ち込み、おしゃべりが自由なのもこの図書館の特徴と聞いて驚いていると、

「ミライエ長岡は、知識や情報、人と出会う場、イノベーション創出の場になることをコンセプトに掲げていますので」と五十嵐さん。「人づくり・学びの場」「産業づくり・交流の場」「にぎわい」の役割を担う拠点なのだと説明してくれた。

同じ建物の5階にある「NaDeC BASE」も同様で、こちらは産官学連携で産業振興を目指すイノベーションの拠点。長岡市にある企業と、4つの大学と1つの高専、行政が連携し、人材育成と産業づくりを進める実践の場になっている。ゆったりとした空間のコワーキングスペースもあり、連日利用者が絶えない。

「西館」の3〜5階に広がる、ガラス張りの開放感あふれる図書館「互尊文庫」。昼間は保育園の子が遠足に来ることもある。
イベントなどに使える仕切りのあるスペースもあり、中と外、互いに様子が感じられる造りだ。
本の貸し出しはタッチパネルでセルフで、気兼ねなく。
図書館内の100人ほどが入れるイベントスペース。ここでは講演会もやわらかな雰囲気で進むそうだ。
書棚は15のテーマにそって選書されている。
離れたところからもよく見える10階建てのビル(西館)の3~5階にミライエ長岡が入っている。その他のフロアは銀行。
ミライエ長岡の入り口の様子
3階のカウンター席は予約制。自習やワークスペースとして利用されている。
NaDeC BASEのおしゃれなコワーキングスペース。会員制だが、会員以外も2時間500円で利用できる。
NaDeC BASEには産官学連携の実際の取り組みがわかる展示スペースや、3Dプリンターなどを備え自由に作品が作れる「ものづくりラボ」もある。
今後は図書館とNaDeC BASE、また民間との連携企画にも力を入れていきたいと話す長岡市の五十嵐さん。

米百俵プレイス4棟のうち3棟が完成

長岡市では、分散していた公共機能を中心市街地に集め、にぎわいを創生する「まちなか型公共サービス」を軸としたまちづくりを進めている。URは2014(平成26)年から大手通坂之上町地区の市街地再開発事業にかかわり、18年に長岡都市再生事務所を開設。今もUR職員等8名がまちづくりをサポートしている。

「長岡では昭和50年代から地域の皆さんが再開発に動き始めています。現在進行中の大手通坂之上町地区は事業計画を立てるのが大変でしたが、URさんから撤退した百貨店の跡地を一時的に取得してもらうなどの協力を得ながら、事業計画の検討と権利者の合意形成を進めてきました。URさんに施行者としての協力をお願いすることが決まって事業に着手してからは速かったです」

と話すのは、長くまちづくりにかかわっている長岡市中心市街地整備室室長の高頭(たかとう)靖さんだ。

「米百俵プレイス」と名付けられた大手通坂之上町地区のまちづくりは、4街区(4棟)からなる事業。4棟のうち、7月にオープンしたミライエ長岡や銀行が入っているのが「西館」。クリニックと立体駐車場が入る「北館」は6月に、店舗や集合住宅が入る「プレミスト大手通」は7月に引き渡しを終えている。

「以前からいらっしゃる権利者さんはプレミスト大手通に入居し、この地に戻ってこられています。今後は長岡市さんや商工会議所さんが入る東館の整備を進めます。権利者さんが戻るための整備をして、お渡しするまでしっかり行いたいと思います」

そう言って、UR長岡都市再生事務所所長の早川秀樹は表情を引き締めた。東館の完成は2025年度の予定。長岡市商工部、商工会議所などが入る東館が完成し、上階で西館とつながれば、産業振興拠点としての威力は各段にアップするだろう。

「若者の市外への流出を止めるのは難しくても、長岡で育ったいい思い出、企業や人とのつながりがあれば、戻ってくるきっかけになるのではないかと思っています」と五十嵐さん。

ミライエ長岡は、すでに地元の人にとって自慢の人気スポットになっている。ここで過ごした時間は若い人たちの記憶に確実に刻まれていくはずだ。ミライエ長岡ができて、大手通りを歩く人が増えたという。早くもまちのにぎわい創出の拠点になっている。

「URさんと意見の相違で侃々諤々したことも。それができるのも信頼関係があってこそです」と長岡市の高頭さん。
4月の着任以来、慌ただしかったが、ミライエ長岡のオープン後は長岡の魅力が見えるようになってきたというURの早川。
300台を備える駐車場と、複数の診療科をもつクリニックが入る「北館」。東館とブリッジでつなげ、道を渡らずにアクセスできるようになる。
向かって右が「西館」、左がこれから「東館」を整備する地。真ん中の道路はイベントスペース「トオリニワ」となり、一体的に整備される予定。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】

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