【URのまちづくり最前線 第24回】原池公園整備事業(大阪府堺市)
子どもたちの憧れと目標の場所になる市民待望の野球場のある公園が完成
堺市のほぼ中央に位置する「原池(ばらいけ)公園」は、3期にわたる事業を終えて、この春グランドオープン。
子どもたちに夢を与える待望の本格球場を備えた、市民のための運動公園が完成した。
公園の中につくる本格的な野球場
敷地面積17・3ヘクタールを誇る原池公園は、2007(平成19)年に第1期事業でトレーニング室や多目的室のある体育館と駐車場が、2011年に第2期事業としてスケートボードパーク、修景池が完成。そして第3期の事業で市民待望の野球場「堺市原池公園野球場」と大型複合遊具広場、バーベキュー施設が完成し、この春ついにグランドオープンとなった。
URは堺市からの要請で、1期と3期の事業として設計と工事を受託して協力。第3期事業では堺市の担当者とともに野球場のある公園づくりに汗を流した。
堺市文化観光局スポーツ部でこの野球場を担当した高瀬篤久さんが説明する。
「堺市は昔から野球がとても盛んで、少年野球から社会人野球までたくさんのチームがあります。高校野球の予選やプロ野球二軍の試合ができる、本格的な野球場を求める市民の声が非常に多く、それに応えて第3期エリアで野球場も整備することになりました」
だが、すでに開園している公園の中につくる野球場だ。
「あくまで公園施設として設置するので、観客席の高さをおさえるなどして圧迫感をなくし、避難地としての機能や、使う人に優しい施設として公園と一体になるよう配慮しつつ、ウォーキングやジョギングなどの健康運動や子どもの遊びなどが同時にできる公園として整備する必要がありました。そこでURさんの力をお借りしました」と堺市建設局公園緑地部の中嶌(なかじま)翔太さん。
URはこれまで全国で48の野球場を建設してきた実績がある。
「堺市からはURがもつ野球場の設計・施工のノウハウとともに、スピードをもって完成させることも期待されていました。すでに開園して公園の利用者がいる中での大規模な工事なので、事故防止を徹底して、利用者の安全を守ることを最優先に進めました。当初計画になかったバーベキューコーナーを同時につくることが決まり、基盤インフラをどこまでつくるかなど、新たな調整が必要になったことが、苦労したところでしょうか」
第3期事業のスタートから現在まで担当しているUR西日本支社の藤原陽一は、こう振り返る。
子どもたちの憧れや目標となる野球場にしたい、という堺市の思いを形にする仕事だ。甲子園と同様に内野は黒土、外野は天然芝だが、この天然芝の活着にUR独自のアイデアが生かされたと、UR西日本支社の園田 傑(すぐる)が教えてくれた。
「グラウンドに天然芝を根付かせるためには時間が必要ですが、球場本体の工事も同時に進んでいるので、車両などが出入りする部分には芝を張ることができません。そこで、球場の外に圃場(ほじょう)を作って芝を育てておいて、車両などの出入りがなくなった段階で、その部分に圃場の芝を移植して活着させました。こうすれば、先に活着させた芝との段差も生まれず、選手もスムーズにプレーできます」
トップ選手もプレーする球場にふさわしいこだわりが、ここにある。
スポーツの力で活力のあるまちに
原池公園には、堺市管理の公園で最大の、高さ12・5メートルの大型複合遊具も設置。幼児用と児童用の2つの遊具で、この選定も堺市とURがこの場所にふさわしいものを比較検討して決定した。
「近所の子どもだけでなく、遠方からも親子連れが訪れ、この遊具の周りでお弁当を広げている光景を見ると、作ってよかったなと思います」と堺市建設局公園緑地部の吉川典生さん。
体育館の南側にあるスケートボードパークでは、東京で金メダルを取った女子選手が練習していたそうで、「人気の高まりを受け、既設の中上級者コースに加え、初心者用コースも新たに設置しました。ここからパリでメダルを取る選手が出ることを期待しています」と堺市文化観光局スポーツ部の斎藤 修さん。
災害時には避難地としての利用を考慮し、芝生広場などの空間を大きく配置している。10月の祭りには、野球場前のエントランス広場に地元のだんじりが10台並び、それは盛り上がるそうだ。
藤原はこの野球場で行われたプロ野球二軍の試合を見に行き、「スタンドは満員で、皆さんが本当に喜んでいるのがわかりました」と感無量な面持ちだ。園田も「この野球場から羽ばたく選手が出るといいですね」と夢を語る。
地域に愛される野球場のある運動公園が、これから堺市をますます元気にすることだろう。
【武田ちよこ=文、青木 登=撮影】
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