【URのまちづくり最前線 第18回】大堀川防災レクリエーション公園(篠籠田 しこだ)都市公園受託事業(千葉県柏市)
昭和の懐かしさと令和の新しさをあわせもつ、憩いの防災公園
千葉県の北西部に位置し、暮らしやすいまちとして人口増加が続く柏市。
コロナ禍で都市公園の利用者が増え、活用の広がりへの期待が高まるなか、市の中心部にオープンした公園に注目が集まっている。
安全・安心のための広域避難場所を
今年4月に開園した「大堀川防災レクリエーション公園(篠籠田)」は、桜並木の遊歩道が続く、緑豊かな大堀川のほとりにある。JR常磐線と東武野田線(東武アーバンパークライン)が乗り入れる柏駅から約1キロに位置し、国道6号と16号が交差する交通の要衝地付近だ。
広さは約2・8ヘクタール。幼児の遊び場や多目的広場が整備された、多世代が憩える気持ちのよい公園だ。災害時には広域避難場所(約1万人を収容)として利用できるように、非常用発電機や耐震性井戸付貯水槽なども完備。カマドになるベンチやマンホールトイレなどの防災機能も随所にさりげなく備えられている。
「柏駅周辺に大きな公園がなく、広域避難場所が不足していた柏市にとって、ふだんはレクリエーション公園として使え、災害時には広域避難場所となる公園が完成した意味は大きいです」
と語るのは、2009(平成21)年の構想段階から、この公園づくりに関わってきた柏市都市部の酒井勉理事だ。URは柏市と共に、市の「緑の基本計画」と「地域防災計画」に基づき計画を立案。検討会で決まった「明日の暮らしの安心」「多世代交流」「地域の魅力向上」という3つの基本方針にそって、さまざまな検討・調整を行い、公園の整備を進めてきた。
地域の資産を生かして利活用
この公園の特徴のひとつが、もともとあった幼稚園(旧柏市立かしわ幼稚園)の建物を生かし、防災備蓄倉庫の機能を有する管理事務所にリノベーションしたことだ。説明されなければ新築かと思うような瀟洒(しょうしゃ)な外観だが、内部は幼稚園当時の保育室やロッカー、扉などを利用して改築している。地元出身の酒井理事は、旧園舎が装いも新たに残ったことについて「うれしかったですね。自分の親世代も喜んでいます」と微笑む。
昭和の建物を生かしながら、令和の防災に役立つ施設として再利用するという、時代に即した先駆的な取り組みとなったことについて、公園の設計・整備を統括したURの担当部長折原夏志は説明する。
「幼稚園の掲示物が残る園舎や隣接する大堀川と一体となった素晴らしい景観など、地域の方が大切にしてきた資産を生かすことを心がけました」
必要な地盤改良や公園内の園路整備をしっかり行って防災機能を備えると共に、地域の方々から要望の多かった桜とカシワの木を残して移植。移植が難しい桜は、重機で根ごと移植するという木に負担が少ない方法を選ぶなど配慮した。
新たな生活様式での利用の仕方
「公園が完成してから、地域の方から活用や管理について多くの問合せをいただき、期待の大きさを感じています」と話すのは、柏市都市部公園緑政課の佐藤誉課長。少子高齢化や生活環境の変化などにより、最近は市民から“遊具よりも防災機能を”という声が寄せられることが多く、市内の公園の使われ方や管理の仕方の見直しを進めているという。
柏市は、これまでにも花や水をテーマにした公園をはじめ、民間事業者と連携してキャンプ場を備えたり、飲食店やWi-Fiを導入したり、数々の特色ある都市公園を展開してきた先駆的な存在。
現在、大堀川防災レクリエーション公園(篠籠田)の管理事務所は、市役所で新型コロナウイルスの感染者が出た場合の代替施設として備えながら、2階は備蓄倉庫として準備中。「公園が将来にわたって有効活用できるように、地域の人の声を聞きながら柔軟に対応し、完成させていきたいと思います」と佐藤課長。
大堀川の遊歩道は、多くの人が散歩やジョギングなどを楽しむ人気の場所だが、在宅やテレワークが広がるなか、以前は見かけなかった人たちの姿も公園で見られるようになったという。健康維持、そしてストレス解消など心理的な憩いの場としてもニーズが高まっているのだろう。
コロナ禍において、公園・広場の利活用が変化している状況を踏まえ、URでも新たな生活様式に向けた公園・広場の整備、活用について検討、調査を始めている。感染対策や災害時、ニューノーマルにおける活用方法、さまざまな近隣施設との連携……など。公園・広場が新たな地域の拠点、ハブとなる可能性もある。
市民活動が盛んな柏市。大堀川レクリエーション公園(篠籠田)を舞台にどんな活動が展開されるのか、期待が高まる。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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