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【URのまちづくり最前線 第22回】新虎通りエリアマネジメント(東京都港区)

URPRESS 2022 vol.68 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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新しい道路を軸に
魅力的で持続可能なまちをつくる

新ビル建設や新駅の開業など、華やかな話題が続く港区虎ノ門。
新旧の魅力が入り混じるまちで、未来を見据えたさまざまなムーブメントが始まっている。

サンゴを題材にした教育プログラムを実施

2014(平成26)年の虎ノ門ヒルズ開業を皮切りに、大きく変貌を続ける港区虎ノ門。20年には東京の新たな交通手段として期待されるBRT(バス高速輸送システム)も発着可能なバスターミナルや、日比谷線開業以来約56年ぶりの新駅となる虎ノ門ヒルズ駅が開業。新たなタワービルの建設も進行中で、利便性とまちの魅力の向上が加速している。

まちの新しい大動脈となっているのが、虎ノ門ヒルズから新橋へと伸びる新虎通りだ。昨年12月5日。その通りに面した「新虎小屋」で、港区芝地区総合支所と連携し、子どもたちを招いた環境教育プログラムが開かれた。

室内に入った子どもたちがまず夢中になったのが、ミニ水族館のような巨大水槽だ。美しいサンゴのまわりに色鮮やかな熱帯魚が回遊するこの水槽が、今回のプログラムの主役。サンゴを含めた生物の動きや生育環境を観察することで、海洋生物の多様性の大切さなどを五感で体感し、自らの探究心を育む内容になっている。

美しいサンゴや海の生き物に、子どもたちも興味津々。巨大水槽は常設展示されて誰でも自由に見られるほか、今後もワークショップなどが予定されている。

プログラムを主催するのは、サンゴ礁の生態系再現技術を持ち、ESD(持続可能な開発のための教育)プロジェクトなどを手掛けるベンチャー企業イノカだ。

代表の髙倉葉太さんは「サンゴは、海洋生物の25%にあたる約9万種のすみかであるにもかかわらず、20年後に70~90%の激減が予想されています。海の多様性を象徴する存在であるサンゴの観察を通して、子どもたちの多様で豊かな個性を伸ばすと同時に、海や地球を守る気持ちを育みたいと思っています」と、今回のプロジェクトの目的を語る。

本物のサンゴを題材に学習。触ってみたり、匂いをかいでみたり、五感でサンゴの不思議を体感する。
今回の参加者は小学生が中心。動画を見ながら、海洋生物の多様性や地球環境を学び、自ら考える。

まちのコトを考えるショーケースを新設

新たなまちづくりが進む虎ノ門で、URはハード面では市街地再開発事業の代表施行者や、新駅整備の事業主などの役割を、ソフト面では新虎通りエリアマネジメントの事務局や、行政の計画づくりの支援を担っている。今回のイベントが行われた「新虎小屋」もその一環だ。

「新虎小屋」の存在意義を、URの川田浩史は「この施設は、18年にオープンし、新虎通りのにぎわいづくりのために機能してきましたが、昨年10月に大幅リニューアル。次世代技術やSDGsの取り組みが体感できる『まちなかのショーケース』に生まれ変わりました。現在はフリースペースとして無料開放するほか、イノカさん協力のもとで水槽を常設展示。今回のように子どもたちを招くことで、今まで訪れることのなかった子どもたちが水槽を見に寄ってくれるなど、多様な方々が興味を示してくれる場所になりつつあります」と語る。

2014年開通の新虎通り。歩道は幅が約13mもあり、休日にはランニングを楽しむ人も多い。

社会実験を通してまちの未来を考える

「新虎小屋」の2、3階にあるのは、UR新虎通りまちづくり事務所だ。URは、ここを拠点とする一般社団法人新虎通りエリアマネジメントの事務局としても活動。地区のデベロッパーである森ビル、東京都の外郭団体である東京都道路整備保全公社とともに、広々とした歩道を利用したオープンカフェの設置やイベントの実施など、新虎通りの空間を活用してまちの価値を向上する活動の実行部隊を務めている。

さらに20年には、同組織と当地区を管轄する港区芝地区総合支所とで新虎通りエリアプラットフォーム協議会を設立。官民連携して、ニューノーマル時代に合わせ、居心地よく歩きたくなるまちづくりに向けた取り組みを進行中だ。

その第一弾として、昨年10月から取り組んでいるのが、新虎通り周辺エリアの未来を考える社会実験「トイ」だ。

新虎通りのオープンカフェに、人々が集う。
「官公庁にも近く、大企業も多い虎ノ門という地域コミュニティーに根づきたい」と、オフィスはもちろん、住まいも虎ノ門というイノカ代表の髙倉さん。
「虎ノ門にオフィスを構える大企業と、イノカさんのような地元のベンチャー企業をつなぐのもURの役割のひとつ」とURの川田。

URの羽島愛奈は「今回の新虎小屋での取り組みをはじめ、アートイベント開催やまちの魅力を探るまち歩きなど、このまちにこんなことがあったらいいのでは、という未来に向けたビジョンを探る7つの社会実験を行います。これらを通して、多くの方がまちに関心をもつきっかけになってもらえれば」と説明。

共に事業を進めるURの町井智彦も「エリアマネジメントでは、大きなイベントだけでなく、早朝清掃なども行っています。日々の地道な活動を通して地元の方にお声がけいただくなど、信頼が醸成されているのを感じています」と話す。

虎ノ門ヒルズをはじめとしたオフィス街と江戸時代から続く歴史ある商店など、新旧の文化が混在する虎ノ門。新たなムーブメントを経ての、さらなる進化が楽しみだ。

新虎通りエリアマネジメント事務局としても活動するURの羽島(左)と、町井。「近隣のビルオーナーのおばあちゃんが毎日新虎小屋に来て、まちの歴史を教えてくれるのが楽しみです」(羽島)。

【阿部民子=文、青木 登=撮影】

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