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【URのまちづくり最前線 第17回】新清州駅北土地区画整理事業(愛知県清須市)

URPRESS 2020 vol.62 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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観光地の玄関口にふさわしい
安全で暮らしやすいまちに

清須市で鉄道高架工事を含む大規模なまちづくり事業が進行している。
その一角、新清洲駅北側エリアの土地区画整理事業をURが担当。
「水と歴史に織りなされた 安心・快適で元気な都市」を目指し、今日も槌音が響く。

清須市を南北に走る名鉄名古屋本線、新清洲駅の北側に広がる土地区画整理事業地区の事業前の様子。農地や未使用地、低層住宅や作業所などが混在する。道路のほとんどが幅員4m以下で、行き止まりも多い(2012年4月撮影)。

道路や公園などを整備し安全・安心なまちに

名古屋市北西部に接する愛知県清須市。市のシンボルである清洲城は、織田信長が青年時代に居城とし、桶狭間の合戦の際にここから出陣した出世城として知られる。NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の舞台としても話題の城だ。その最寄り駅が、名鉄名古屋本線の新清洲駅。名鉄名古屋駅から急行で11分。清須市内で乗降客も多く、清洲城へのメイン玄関口にもなっているこの駅の北側で、現在、土地区画整理事業が進んでいる。

新清洲駅周辺では、既に線路の南側地区での土地区画整理事業が終わり、駅前広場なども整備されている。それに対し、北側地区は道路や公園なども未整備で、鉄道の北側と南側が一体となった土地利用や整備が長年の課題となっていた。また、踏切による渋滞や事故の発生に加え、近くを流れる一級河川の五条川と鉄道の交差部の川幅が狭いため、改修による治水安全も望まれていた。

事業地区に隣接する踏切は、朝夕に交通渋滞が発生。線路による市街地の分断も課題だ。
2022年の暫定開業に向けて工事が進む新清洲駅の北側エリア。

「清須市としては、地域の中心地にふさわしい市街地整備を図る土地区画整理事業を計画。名鉄名古屋本線新清洲駅付近鉄道高架事業と調整しつつ、新清洲駅北側エリアの整備も図ることになりました。しかし、清須市は区画整理施行者としての実績がなく、人材やノウハウもありません。そこで、鉄道駅周辺の市街地整備事業を数多く施行した実績があるURさんに、新清洲駅北側エリアの事業を委託することにしました」

と事業の施行者を務める清須市の建設部新清洲駅周辺まちづくり課、林 正樹係長が話す。2015(平成27)年に清須市とURは事業委託に関する基本協定を締結。鉄道高架工事を含む事業全体の完成は今から約20年後の予定。足かけ25年もの長期にわたるまちづくりが進んでいる。

整備中の複合エリア付近で。右から清須市の林係長、URの安藤、浅見。URメンバーは調査から設計、資料の作成、工事の段取りなど、全体的な調整を図りながら全力で事業をバックアップしている。

歴史と自然に恵まれたまちの動線を整備

URが支援する土地区画整理事業の施行面積は約5・2ヘクタール。低層住宅や家内工業規模の作業所や工場、そして農地や未使用地が混在。道路のほとんどは幅員4メートル以下で、駅から清洲城など観光地へのアクセスも悪く、市の拠点でありながら、手つかずの状態だった。そこでアクセスがよく、万一の際にも避難しやすい幅員の広い道路や、イベントなどもできる公園、まちの顔となる駅前広場などを整備。道路の下には下水管や雨水管なども通し、安心・安全に加え、住みやすさや観光拠点としての側面も大きく改善する予定だ。

事業の特徴の一つが、名鉄名古屋本線の高架化工事に必要な土地の確保である。鉄道高架事業区間は全体で約2・8キロメートル。今回のURの事業地区もその範囲に含まれる。鉄道高架化工事では、高架構造の本体部分を造る間、電車を止めないための仮線を造る必要がある。そのため、土地区画整理事業による移転や換地で仮線用の土地を確保することが、鉄道高架化工事を行うために必要不可欠なのだ。

「現在は、仮線工事開始に間に合うよう、お住まいの方や土地をお持ちの方お一人おひとりのご事情を細かくお聞きしながら、市さんと一緒になって交渉を進めています」と、UR新清洲都市再生事務所長の安藤寛。

鉄道高架化によって踏切での渋滞や事故が解消されるだけでなく、南北に分断されているまちが一体化。人のつながりや行き来が活発になり、より魅力的なまちへ生まれ変わる期待も寄せられている。

安藤とともに事業を担当する浅見貴信は、長年ニュータウン事業などの区画整理事業に携わってきたベテランだ。この事業について次のように話す。

「山などを切り開いて新しい宅地を整備するニュータウン事業と違い、こちらは従前からお住まいの方にいったん移転していただき、造成した土地に戻っていただく。高齢の方も多く、土地への思い入れなども考え、長い先を想像してお話をするなど、丁寧な対応を心がけています」

2018年9月に着手した工事は、少しずつ範囲を広げながら進行中。2022年には、駅前広場の一部開業を目指している。

「近くには清洲城や清洲公園のほか、周辺が桜の名所である五条川も流れています。駅からそうした観光名所へのアクセスを整備し、駅前広場にはわかりやすい案内板なども設ける予定です。名古屋駅からも近いので、ぜひ多くの方に訪れてほしいですね」と安藤。

観光地の玄関口にふさわしい、新たなまちへ。長い歩みは、少しずつ確実に前へと進んでいる。

北側から新清洲駅を望む完成イメージ。鉄道を高架にして踏切渋滞を解消し、交通の利便性を高める。

出典:「名鉄名古屋本線新清洲駅付近鉄道高架事業パンフレット」国土交通省中部地方整備局/愛知県

阿部民子=文

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