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【URのまちづくり最前線 第26回】沖縄都市モノレール新駅周辺地区のまちづくり支援(沖縄県浦添市)

URPRESS 2023 vol.73 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]

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モノレール経塚駅前にヘルシーパークを計画・整備中

那覇空港駅から国際通りを抜けて北東へ向かう沖縄都市モノレールが、首里駅から先、浦添市のてだこ浦西駅まで4駅延伸したのは2019年。URは今、新たに誕生した浦添市の駅周辺地区の公園を核にしたまちづくりをサポートしている。

経塚公園でのヘルシーパークフェスタ

那覇市の北に位置する浦添市は人口約11万5千人。市内には浦添城跡などの歴史遺産や伝統芸能を鑑賞できる国立劇場おきなわがあり、東京ヤクルトスワローズの春季キャンプ地としても知られる。以前から那覇のベッドタウンとして人気の浦添市は、沖縄都市モノレール、通称「ゆいレール」が市内まで延伸したことで、さらに利便性が高まっている。

2月4日の土曜日、ゆいレールに乗って、首里駅から北へ2駅先の経塚(きょうづか)駅を目指した。目的は経塚公園で開かれる「経塚駅前ヘルシーパークフェスタ」。駅に近づくと、公園に多くの人が集まっている様子が車窓から見えてきた。

会場である経塚公園は経塚駅の目の前。入口にはキッチンカーが並び、奥に入ると中央の広々とした人工芝広場を囲むように出店ブースが並んでいる。子どもたちが大勢集まっているのは、ペットボトルでイルミネーションを作るブース。隣の苔玉教室では30~40代の男女が熱心に苔玉を作っていた。沖縄でおなじみの香辛料「ピィパーズ」や浦添市特産の「桑」の加工品を扱うショップもある。芝生広場では太極気功棒の演武や運動教室などが開かれていた。

出店者のひとりが、人工芝広場でくつろぐ家族の様子を眺めながら「子どもたちが広場で遊んで、それを見守りつつおばあちゃんやお母さんが食事やおしゃべりを楽しんで。公園の理想的な風景ですよね」と話していた。

2月4日と7日に開催された経塚駅前ヘルシーパークフェスタ。奥に見えるのが経塚駅とゆいレール。人工芝広場ではさまざまな運動体験が楽しめた。
URは会場運営や多世代が楽しめる体験プログラムなどで参加した。
公園入口ではキッチンカーがお出迎え。人気店には行列ができていた。
人工芝広場でくつろいでいたファミリー。浦添市在住の姉に誘われて、南部の南風原(はえばる)町在住の妹、那覇市在住の母、兄夫妻の子が集合。甥っ子は初めてのゆいレール乗車で、興奮しながらやって来たそうだ。
那覇空港駅-てだこ浦西駅の17kmを結ぶ沖縄都市モノレール「ゆいレール」。那覇空港駅から経塚駅まで約35分。

公園での過ごし方を考える社会実験

このフェスタは、じつは浦添市とUR、経塚駅前ヘルシーパークフェスタ実行委員会による公園の使い方の社会実験として行われたイベントだ。2012(平成24)年に浦添市と「沖縄都市モノレール沿線まちづくり推進に関する基本協定」を締結したURは、延伸されたモノレールの新駅周辺のまちづくりを支援している。浦添前田駅周辺では区画整理や観光交流拠点施設のコンセプトづくりをサポートし、現在は経塚公園整備の支援に注力している。整備を進めるにあたり、近隣の住民や事業者をはじめ、自治会、学校、JICA沖縄などの関係者も交えて、浦添市とともに19年から公園の使い方についての話し合いを重ねてきた。

浦添市都市建設部美(ちゅ)らまち推進課の親里直幸さんによれば、経塚公園の敷地は2ヘクタールあり、今回社会実験が行われたのは、その一角。

「もともとあった自然の丘陵を残す方針で整備を進めることになりました。“地域の健康づくりや市民の健康増進に資するヘルシーパーク”がテーマです」

3回目となる今回の社会実験は規模を拡大。運動や食などをテーマに、地域の方々の持ち寄り企画に加え、人工芝やアウトドア用品を揃え、多世代が楽しめるプログラムを多数企画。来場者とともに、「ここでどんな過ごし方をしてみたいか」「どうしたら居心地のよい空間になるか」を考え、今後の公園整備や利活用の参考にすることを目指した。予定していた3日のうち1日は残念ながら雨天中止となったが、結果として2日間トータルで、約30店舗(団体)の出店があり、約800名が来場した。経塚公園の存在を初めて知ったという人も少なくなかった。

「URさんからプレイスメイキング(居心地のよい公共空間づくり)を実験的に行うことを最初に提案されたときには驚きました。このような公園のつくり方もあるんだと。整備する前に実験をして効果検証を行うという非常に理にかなったつくり方だと思いました」

と話すのは、経塚駅前ヘルシーパークフェスタ実行委員会の伊佐亮(いさまこと)さん。お年寄りがのんびり過ごしたり、子どもたちが放課後に遊んだりできる、地域の人に愛される公園になることを望んでいる。

経塚公園では利便性向上のために民間事業者によるカフェなどの設置や管理ができる公募設置管理制度(Park-PFⅠ)を活用した整備も進めていて、URはその公募支援も行った。23年3月に事業予定者が選定され、現在、本整備に向けた協議を進めている。

「市民協働」「公民連携」の両輪で検討し、また誰でも参加できる「公園利活用連絡会」を立ち上げたのが、経塚公園を核としたまちづくりのポイントだと、URの新澤聡は話す。社会実験の検証結果も踏まえながら、今後は市と地域とPark-PFⅠの事業者が一体となって整備を進めていく。その際にはURが蓄積してきた都市公園整備のノウハウも役立てていく。今後、このエリアはさらに住宅が増加予定。交流や賑わいの核となる経塚公園へ寄せられる期待は大きい。

経塚駅の隣の浦添前田駅周辺。URは、駅周辺の区画整理や観光交流拠点施設のコンセプトづくりをサポートした。
2月7日は「浦添市地域包括支援センターさっとん」の企画のもと、健康相談や歌声喫茶、ピラティス、操体法などが行われた。
近隣の特別養護老人ホームの方々もフェスタの雰囲気を味わった。
URの新澤は、沖縄への赴任は2度目。浦添市には地域のまちづくりに関心の高い方が多い印象だという。
公園整備に尽力する2人。左から公園指定管理者でもある伊佐さんと、浦添市の親里さん。

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】

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