街に、ルネッサンス UR都市機構

URまちとくらしのミュージアム

URPRESS 2023 vol.75 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]


9月15日、赤羽台(東京都北区)に「URまちとくらしのミュージアム」がオープンした。集合住宅の歴史と、まちづくりの変遷を紹介する情報発信施設だ。完成したばかりのミュージアム棟を、フリーアナウンサーの木佐彩子さんが訪ねた。

これまでにない情報発信施設が誕生 UR まちとくらしのミュージアム

JR赤羽駅から歩くこと8分。赤羽台団地の建て替えによって整備された「ヌーヴェル赤羽台」の一角に、「URまちとくらしのミュージアム」が誕生した。見学施設「ミュージアム棟」に入館し、最初に案内されたのは「URシアター」だ。

映像が流れ始めたとたん「わあ、すごい!」と木佐さんが声を上げた。床面も含めた4面の大迫力スクリーンを通して、長崎の軍艦島で日本初の鉄筋コンクリートの集合住宅が建設されてから、現在に至るまでの集合住宅の歴史、そしてURが取り組んできたまちづくりの変遷が紹介される。7分ほどの上映が終わると、木佐さんから拍手が……。

「臨場感があって、タイムマシーンに乗ったような感じでした。自分もこの歴史のなかにいるんだと実感しました」

こちらが「UR まちとくらしのミュージアム」のミュージアム棟です!と紹介するフリーアナウンサーの木佐彩子さんフリーアナウンサーとして幅広く活躍中の木佐彩子さん。
幼少期のアメリカでの生活を含め、引っ越しは15回を超え、住まいへの関心が高い。「URひと・まち・くらしシンポジウム」の司会進行も担当。

URシアター(1階)

日本の集合住宅のはじまりから、URが取り組んできたまちづくりを、4面のスクリーンでダイナミックに紹介する。

復元住戸「同潤会代官山アパートメント」に興奮

「ミュージアム棟」には、集合住宅を復元した住戸が4地区6戸ある。日本の住まいの歴史のなかでも非常に貴重な記録資料であるこれら復元住戸に実際に入って見学できるのが、この施設の醍醐味だ。

まずは4階の「同潤会代官山アパートメント」から見学。日本で最初の本格的な鉄筋コンクリートの集合住宅である同潤会アパートは、関東大震災を機に建設されたと、案内役であるURの増重雄治が説明する。

「関東大震災の発災は11時58分。ちょうど多くの家庭で昼食を準備していた時刻だったこともあって火災が広がり、10万5千もの人が亡くなりました。焼け野原となった東京で、国内外からの義援金をもとに住宅復興のために設立されたのが同潤会。1万2千戸の住宅が建設されました」

卓球台やビリヤード台、食堂などコミュニティー施設も充実していた同潤会アパート。意匠へのこだわりを感じさせる備品や資料展示を見て、「デザインがとっても魅力的ですね。古いものが新しいというか、今見ても新鮮」と木佐さん。そして「今、代官山アドレスがあるのは、かつて同潤会アパートがあった場所なんですね」と驚きながら復元住戸の「同潤会代官山アパートメント」へ。足を踏み入れたとたん、造り付けのベッドや収納を見て、「きゃー、素敵!」と。

「おばあちゃんの家を思い出すようなレトロな雰囲気もいいですし、ものの置き場、風の通り道など細かな配慮もあって。この部屋にこもってもの思いにふけりたいです」

同潤会代官山 アパートメント(4階)

1927(昭和2)年竣工、渋谷区 関東大震災後の住宅復興のために、(財)同潤会により建設された、日本初期の本格的な鉄筋コンクリート造の集合住宅。お風呂は共同。単身者用の住戸には備え付けのベッドも。

住んだ経験はないのになぜか懐かしい

続いて復元住戸の「蓮根団地」と「晴海高層アパート」へ。第二次世界大戦後、都市に人口が集中して420万戸の住宅が不足するなか、その問題解決のためにURの前身となる日本住宅公団が設立されたのが1955(昭和30)年。

「その2年後の1957年に蓮根団地が、翌58年には晴海高層アパートが完成しました。後者は当時を代表する建築家・前川國男の設計による日本住宅公団の住宅です」と増重が解説する。

蓮根団地では、寝る場所と食事する場所を別にする「寝食分離」を提案。当時画期的だったダイニングキッチンと2つの寝室をもつ「2DK」の間取りに。一方の晴海高層アパートは、公団初となる10階建ての高層集合住宅として注目を集めた。ガラス窓と障子の割付、ガラスの欄間など、狭い空間でも広がりを感じさせる工夫が随所に見られる。

「当時の家賃は蓮根団地が4500円、銀座にも近い晴海高層アパートは1万2500~1万3000円。晴海は銀行や商社の初任給と同額の超高級住宅でした」

そのような当時の様子や住宅変遷の背景にある話を聞くことができるのも、見学ツアーならでは。畳の部屋で寛ぎモードの木佐さんは、

「自分が住んでいたわけではないんですが、なんだか懐かしくて。日本人のDNAでしょうか。コンパクトな間取りも生活しやすそうですよね。最近は生活もサイズダウンしてきているので、将来、子どもが巣立ったら、こんな感じの家に住むのもいいなあと思いました」

晴海高層アパート(2、3、4階)

1958(昭和33)年竣工、中央区 10階建ての集合住宅。エレベーターはあるものの、止まるのは3階ごと。上下階の住戸へのアクセスは階段で。
廊下は子どもが遊ぶことができるほど広々としていた。模型を眺める2人。
晴海高層アパートの模型。当時、画期的だった構造がよくわかる。

蓮根団地(4階)

「畳って落ち着きますね」と紹介するフリーアナウンサーの木佐彩子さん1957(昭和32)年竣工、板橋区 2DK(ダイニングキッチンと2つの寝室を持つ間取り)が登場。これ以降、寝る場所と食事する場所を分けたDKスタイルが普及する。電球の笠もレトロでかわいい。

キッチンの移り変わり

同潤会代官山アパートメント

コンパクトながらも使いやすそうな独立型の台所。流し台、ガスコンロのほか、ごみを直接捨てられるダストシュートも設置されていた。

蓮根団地

「どのお台所も使いやすそう!」と紹介するフリーアナウンサーの木佐彩子さん欧米スタイルの「寝食分離」を普及させるため、ダイニングキッチンが設けられた。ダイニングテーブルを備え付けに。左がURの増重。

晴海高層アパート

台所はダイニングテーブルの奥に。住戸を大量供給するため、蓮根団地では「人研ぎ流し」を使っていたシンクが、ここからステンレスに。

家で心地よく過ごすその大切さを再認識

その後、黄色と緑という色使いがオシャレな2階建ての復元住宅「多摩平団地テラスハウス」を見学して、展示スペースへ。団地住棟の配置を紹介する「団地百科」コーナーで配置模型を見てうなったり、ドアノブや案内版など団地の建設・設計部品を壁一面に展示した「団地はじめてモノ語り」でいくつかの呼び鈴を鳴らして、「何これ~?」と音比べを楽しんだりした木佐さん。

最後に「UR都市機構のまちづくり」と「URアーカイブス」コーナーで、都市再生や震災復興、ニュータウン整備など、URが手がけてきたまちづくりについて確認。URがさいたま新都心や八重洲バスターミナルなどの整備にも携わっていたことは知らなかったとのことで……

「知らないうちにいろいろなところでお世話になっているんですね」とにっこり。

館内の見学を終えて、集合住宅には先人たちの知恵がつまっていることを知るとともに、100年の時代を経ても家に求められるものは変わらないことを再確認できた、と語る木佐さん。

「家族団らんの場所、ほっとできる場所が住まいには必要ですね。子どもも大人も毎日それなりに大変なことがある。それでも帰ればリセットできる、いやなものは落として充電できるのが家だと思っています。限られた尊い時間だからこそ、住まいが心地よい場となるようにこだわりたいと改めて思いました」

今回見学した「ミュージアム棟」の周囲には、かつて赤羽台団地にあった「板状住棟」や「ポイント型住棟(スターハウス)」が保存されている。登録有形文化財に登録されているこれら保存住棟と「ミュージアム棟」とで「URまちとくらしのミュージアム」は形成される。古いものと新しいものが同居するエリアで、集合住宅やまちづくりの過去・現在・未来を楽しく体験しながら一望できる「URまちとくらしのミュージアム」。訪れるたびに新たな発見があること間違いなしだ。

同潤会アパートや公団住宅で使われてきた部品を展示した「団地はじめてモノ語り」コーナー。

多摩平団地テラスハウス(2階)

1958(昭和33)年竣工、日野市
専用の庭のある長屋建ての低層集合住宅。昭和30年代に、主に郊外の団地で多く建設された。
インターフォンがなく、呼び鈴が鳴ると、玄関ドアののぞき窓で訪問者を確認していた。
多摩平団地テラスハウスのモダンな玄関。

UR都市機構のまちづくり(2階)

都市再生、ニュータウン、震災復興支援など、URが手がけてきたまちづくり事業を「メディアウォール」で一望できる。

URアーカイブス(1階)

タッチパネルで、URのこれまでの膨大なパンフレットや関連資料を自由に閲覧できる。さまざまな団地情報にもアクセスできる。今後、アップデートしていく予定。

URまちとくらしのミュージアム

9月15日、「URまちとくらしのミュージアム」のオープニング式典では、UR理事長の中島正弘があいさつ。URの新たな情報発信施設開設への思いを語った。
奥がミュージアム棟、手前は各階に3つの住戸が放射状に配置されているポイント型住棟(スターハウス)。

東京都北区赤羽台1-4-50
TEL:03-3905-7550
入場無料(事前予約制)
10時~、13時~、15時~のツアーで見学可能
(所要1時間30分ほど)
各回20名
定休日:水・日曜・祝日(年末年始・臨時休館あり)

【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】

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