【団地最前線7】サイクリングでまちの魅力を再発見 泉北桃山台一丁団地・泉北竹城台二丁団地(大阪府堺市)
サイクリングでまちの魅力を再発見
「サイクルシティ堺」を掲げ、自転車による都市の魅力向上に取り組んでいる堺市。今年5月1日から28日まで約1カ月にわたり、堺市とURの協働でサイクルイベントが開かれた。その最終日、フィナーレイベントで盛り上がる会場を訪ねた。
自転車で地域を巡るスタンプラリーイベント
風薫る5月、堺市の泉北地区で「堺・泉北GO!GO!サイクリング・スタンプラリーイベント(以下、サイクルイベント)」が開かれた。公園や、提携する飲食店、UR団地などを自転車に乗って巡り、デジタルスタンプを集める形式のイベントだ。デジタルスタンプラリーアプリ「Spot Tour」を活用し、ポイント地点を巡るとスタンプがたまる仕組みで実施された。
南北の2コースあり、ポイントは南コースで7カ所、北コースで8カ所。1時間半くらいでまわれる設定だ。参加者は好きなコースを選び、スタンプを集めると、提携飲食店やフィナーレイベント会場で利用できる500円分のクーポン券と、市内にある日本で唯一の自転車博物館であるシマノ自転車博物館の無料入場引換券がもらえる。
最終日である5月28日の日曜日には、4つの会場でフィナーレイベントが開かれた。そのひとつ、スタンプラリーの特典の交換会場である泉北桃山台一丁団地広場には10時前から人々が集まっていた。
スタンプラリーを達成した人たちに話を聞くと、日頃から休日にサイクリングを楽しんでいるという人もいれば、今回のイベントをきっかけに久しぶりにママチャリに乗ったという人も。「ふだん行かない場所に初めて行っておもしろかった」という感想が多かった。会場にはキッチンカーや野菜青空市も出店。コミュニティー拠点「ももポート」では、全国の人気店のパンが集結した「パン祭り」も開かれ、多くの人でにぎわっていた。
別会場の泉北竹城台二丁団地広場では、電動キックボード「SUMRiDE」の試乗体験や、竹馬・竹トンボ体験などができ、近隣の桃山学院教育大学の学生とUR職員によるサイクリングも行われた。
歴史や文化を引き継ぎ自転車でまちを活性化
そもそも堺市が「サイクルシティ堺」を掲げ、自転車に力を入れているのはなぜなのか?その背景を堺市サイクルシティ推進部自転車企画推進課の阪本真二郎さんに尋ねると、「堺市と自転車の関わりは深く、歴史は長いのです」と微笑んで、堺市と自転車の関係を説明してくれた。この地には、古墳時代から培ってきた製鉄の技術があり、その技術を生かした自転車産業、ものづくりのまちが発展してきたという。
「先人が培ってきた歴史や文化を引き継ぎながら、自転車で地域を活性化させたいという思いが堺市にはあります。自転車に乗れば有酸素運動になって健康につながりますし、自転車は幅広い世代が利用できる環境にやさしい乗り物です。何より自転車は気分転換になりますし、心地よい疲れが味わえます」と阪本さんは自転車の魅力をアピールする。
散歩するように楽しむ自転車の「散走(さんそう)」
泉北ニュータウンに団地を抱えるURは、以前からシェアサイクル事業などで堺市と関わりがあったが、今年1月に「活力あふれる都市・持続可能な脱炭素都市」の構築など、堺市とまちづくりに関する包括連携協定を締結。3月には、共同で「サイクルシティ堺」の都市の魅力を発信するための覚書を交わした。
それを受けて今回、堺市とURの協働開催による大規模なサイクルイベントが実現した。他にも南海電鉄や泉北高速鉄道、シマノ自転車博物館、長谷川工業など地元を中心に複数の企業の協力のもとでイベントは開催された。
堺市の担当者と共にイベント開催に尽力したURの渡邉彩子は、企画にあたって、近隣の方々にUR団地を含め広く泉北ニュータウン全体を巡ってほしいとの思いがあったと話す。そのためコースを設定する際には、日頃は自転車で行かないようなポイントも含めた。
「特典交換に来られたご夫婦が、今回のイベントをきっかけに、ふだん自転車に乗らない奥さんも一緒に2人でまちを走って、いろいろなところを知ることができてよかったとおっしゃってくださって、とてもうれしかったです」と渡邉は笑顔を見せた。
堺市では、移動手段としてだけでなく、散歩するように自転車を楽しむ「散走」を提案している。市内はシェアサイクルサービスも充実しているので、駅や団地間の散走も可能。散走で新たな扉が開かれ、楽しいサイクリングの輪が広がりつつある堺市泉北地区だ。
【妹尾和子=文、菅野健児=撮影】
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